無料で読める家庭の医学  病気・疾患の解説、英語名、原因、症状、診断方法、治療方法、処方例などをわかりやすく記載
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バセドウ病(バセドー病)Basedow disease:甲状腺機能亢進症


■原因:
●甲状腺機能亢進症の代表的疾患:バセドウ病
バセドウ病とは、血中に存在する甲状腺刺激ホルモンthyroid-stimulating hormone(TH)の受容体抗体thyrotropin receptor antibody(TRAb) の甲状腺刺激作用のため、甲状腺thyroid glandがびまん性に腫大して甲状腺ホルモンthyroid hormoneの産生が高まりやがては甲状腺機能亢進症hyperthyroidismをも来たす疾患です。

病名の由来はドイツの医師であるバセドウKarl Adolf von Basedow(1799-1854)により発見されたため。 しかしそれ以前にパリーとグレーヴズがそれぞれ報告していて、パリー病Parry diseaseやグレーヴズ病Graves diseaseという病名もあります。
バセドウ病は15-50歳の女性に多くみられ、発生頻度は約0.2%で、甲状腺中毒症の約90%を占める疾患です。



■症状:
●甲状腺中毒症:以下の臨床症状を呈するとき。
バセドウ病にかかるとまず、甲状腺がびまん的に腫れを生じることが多く見られます。更に甲状腺の機能が亢進する、即ち甲状腺ホルモンが過剰になり代謝の刺激が過度になるために、静止している時でも運動している時のように体が熱くなったり汗が沢山出たり(発汗過多)し、また水を多く飲みたがります。

エネルギー消費が増大してきますので段々と体重が減少してきます。また頻脈(脈拍が速まること)を起こし動悸を感じたり、疲労感を安易に覚えます。 また手指に振戦を起こしたり軟便・下痢などの症状も現れます。
(振戦:不随意運動のひとつで、一秒間に数回から10回の速さで細かいリズミカルな振えを起こします。)

・バセドウ病眼症Basedow ophthalmopathy:
特徴的症状として眼球突出が見られることもあり、両眼球が前方に競り出るようになります。 原因は局所のリンパ球で産生された酸性ムコ多糖体が水分量を増大させて眼筋や眼窩脂肪組織(がんかしぼうそしき)の容積の増大を起こし、眼球は圧力を受けない顔の外側方向に押し出され突出します。

ダルリンプル徴候Dalrymple signとはそのなかでも顕著なもので、上眼瞼挙筋(ミュラー筋)が過度に緊張することにより眼瞼が釣りあがり、眼裂開大(ビックリ・驚いた目)を起こします。 更に眼瞼浮腫(上瞼の腫れ)、眼球運動障害では複視(物が二重に見える)などを起こす場合もあります。



■診断:
先ず体全体の筋肉の動き、動作から判断でき、眼の独得の症状からも診断できます。 また血液検査では甲状腺ホルモン産生が上がっていますからその数値が上がりますが、 一般的には甲状腺刺激ホルモン(TSH)のほうの数値を検査します。 甲状腺が亢進してホルモン産生が過剰であれば、産生のための刺激は抑えられますからTSH値は低くなります。 (反対に甲状腺機能低下の場合はTSH値は高めに出ます。)
更にTRAbが存在するのを確認します。 甲状腺の画像検査を行い、大きさと機能が正常な組織であるか判定します。



■治療:
・薬による治療:
甲状腺ホルモンの産生量を抑える働きとして チアマゾールthiamazole(メチマゾールmethimazole、メルカプトメチルイミダゾールmercaptomethylimidazole;MMI): 商品名メルカゾール錠(緊急には注射もあり)(中外)、若しくは プロピルチオウラシルpropylthiouracil(PTU)(商品名:プロパジール;中外、チウラジール;三菱ウェルファーマ) を用います。
またその薬とと組み合わせて β遮断薬の塩酸プロプラノロールpropranolol hydrochloride(商品名:インデラル;住友-アストラゼネガなど) を用いて心拍を遅くさせたり振戦を抑えたりすることも出来ます。
最初の1~2ヶ月で機能亢進症状がほぼ消失したら、薬量を少しずつ減らして行きますが、数年の服用は必要です。

・放射性ヨード療法radioiodine thrapy:
放射性ヨードを服用する方法で、これにより甲状腺組織は破壊され甲状腺ホルモンが低下します。 ヨードの量によって機能が残される場合もあれば完全に機能を停止させることも出来ます。 どちらにしてもこの治療を受けるとその後永続的にホルモン補充をしなければなりませんので、慎重に考慮すべきでしょう。

・手術による甲状腺切除術:
甲状腺腫の状態や薬にアレルギー症状を示したり薬に重篤な副作用を経験した患者には考慮する治療法です。 この場合も治療後のホルモン補充は一生続けなければなりません。




甲状腺機能低下症hypothyroidism
慢性甲状腺炎・chronic thyroiditis:橋本病Hashimoto disease



■原因:
甲状腺機能低下症とは甲状腺ホルモンの合成及び分泌が低下した病態のことを指していて、原因によって原発性(甲状腺性)、二次性、三次性(視床下部性・下垂体性)に分類されています。
中でも原発性が最も多く、血中の甲状腺刺激ホルモンthyroid-stimulating hormone(TSH)が高値を示すのが特徴で更にそのその中でも慢性甲状腺炎、若しくは殆どこれと同じ病気を意味する橋本病によるものが最も多く見られます。
(参考:これとは反対にバセドウ病など甲状腺機能亢進症に罹るとこのTSH値が低くなります)

二次性では下垂体TSH分泌の低下によるもので、三次性は視床下部甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンthyrotropin-releasing hormone(TRH)分泌の低下によるもので、血中TSHは低値か正常値を示します。(三次性と二次性を同分類する場合もあります)

更に別の原因としては、バセドウ病などで甲状腺の摘出や放射線ヨード治療、また甲状腺ホルモン合成を抑制する薬剤を服用した場合にも機能が低下します。また先天異常で甲状腺が欠損していたり機能不全の場合もあります。



●橋本病Hashimoto disease:
(別名)橋本病甲状腺炎Hashimoto thyroiditis・慢性甲状腺炎chronic thyroiditis

橋本病とは、橋本策(はしもとはかる・1881-1934九州大学医学部卒)が同大学で研究し、その後1912年に論文発表を行ったためこの病名がつきました。 成人女性の約5%以上がこの病気に罹っている疑いがあり、また女性は男性の10倍から20倍多いとされており、加齢に伴って増加します。

■原因:
●代表的な臓器特異的自己免疫性甲状腺疾患でびまん性甲状腺腫を呈すが殆どの場合機能は正常。
リンパ球が甲状腺に浸潤し(内部に入り込む)自己免疫性の炎症を起こして甲状腺組織を障害することによります。この甲状腺組織のダメージ度が大きくなると甲状腺ホルモン合成が出来なくなってしまい、病気が進行して甲状腺が繊維化すると触診によって甲状腺の硬化が認められます。
成人女性の約5%がこの疾患に罹っていると考えられています。しかしその殆どは甲上腺機能は正常ですが、患者のうち約10%に満たない割合で機能低下症となり、以下の症状が現れます。



■症状:
●甲状腺機能低下症になった場合
機能低下(甲状腺ホルモン欠乏)による症状として、甲状腺にびまん性の硬い腫れを生じますが萎縮もあります。代謝が低下するために体重は増加傾向(主に脂肪)を示し、徐脈(脈拍数が通常より少ないこと)、皮膚乾燥、体温低下と寒気、脱力感、倦怠感、眠気に常に襲われてぼんやりしていたり、便秘症などにもなります。

難聴傾向も示しまた声の調子が下がって言葉がもたついたりします。またムコ多糖類沈着が起こることで粘液水腫をみます。浮腫には圧痕を残しません。 更に甲状腺機能低下症が悪化すると粘液水腫性昏睡をおこし命にかかわる状態となります。その症状として全身の粘液水腫、意識障害、低体温、徐脈、呼吸不全、心不全などをみます。  



■診断:
上記の顔貌・声・話し方などから診断する他、以下があります。
血液検査で、血中の甲状腺ホルモン濃度数値低下とTSHの増加で診断できます。 橋本病の場合、血中に甲状腺ホルモンの合成基質となる糖蛋白質の サイログロブリンthyrogloblin(TG)、または甲状腺の膜酵素蛋白質の甲状腺ペルオキシダーゼ thyroid peroxidase(TPO)に対する自己抗体が検出されます。 また機能低下のあおりを受けると中性脂肪が容易に増加しますし、また肝機能障害もきたす場合もあります。 小児の場合は身体及び精神の発達にも影響を及ぼします。



■治療:
橋本病の患者の殆どは機能が正常ですので、その場合は年に数回の甲状腺機能検査を行えば問題ありません。機能低下が現れていれば甲状腺ホルモン製剤:レポチロキシン(T4製品名チラージンSなど)を内服します。
橋本病は慢性疾患ですので治癒は望めませんが一生即ち長期に渡って薬を服用しても副作用を心配する事はありません。普通に妊娠、出産、授乳が出来ますし、胎児に影響することもありません。 しかし昆布などの海藻やその食品からのヨードの摂取は、甲状腺機能に影響を及ぼさない程度に抑えなければなりません。

薬による処方例
・甲状腺機能低下症である場合
レボチロキシンナトリウム(チラーヂンS錠25μg:帝国臓器) 0.5-1錠 分1 朝食後 以後2週間ごとに 0.5-1錠増量する。(効果が直ぐに現われない場合でも増量は慎重にします)
*レボチロキシンナトリウム(チラーヂンS錠25など)は安全性の高い薬品ですが、長期服用が必要であり効果が現われるまで時間を要します。増量の際、過度投与になると発熱、だるさ、動悸、ふるえ、発汗、食欲低下、心悸亢進、狭心症、不整脈など甲状腺機能亢進に似た症状が現われることがあります。

・無痛性甲状腺炎に対して中毒症状が強い場合
β遮断薬・酒石酸メトプロロール(ロプレソール錠20mg:チバガイギーノバルティス) 3錠 分3 食後(保険適用外)



甲状腺機能低下症:hypothyroidism   橋本病:Hashimoto disease   橋本甲状腺炎:Hashimoto's thyroiditis
慢性甲状腺炎:chronic thyroiditis   原発性:primary   自己免疫疾患:autoimmune disease
粘液水腫:myxedema   昏睡:coma   


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