無料で読める家庭の医学  病気・疾患の解説、英語名、原因、症状、診断方法、治療方法、処方例などをわかりやすく記載
家庭の医学 by igaku.bz



眩暈(めまい)・めまい感:前庭ニューロン炎・良性発作性頭位変換めまい症


■原因と症状:
めまいとは体の平衡感覚や平衡を司どる機能に異常をきたす事で生じる疾患です。 めまいの症状としては体が回っている様な感覚の回転性、また体が宙に浮いた様な感覚になる昇降性などが代表的なものです。

平衡感覚を維持するため体内には特に耳と脳にある様々な器官が働いていて、 半規管、耳石器、前庭神経、脳幹、視床、大脳皮質がその役割を担っています。 それらの部分が障害されることでめまいが生じます。

不整脈、起立性低血圧、血管迷走神経反射などが原因で、前失神や立ちくらみが生じますし、 不安や抑うつを伴う心因性や肩こりが要因となって昇降性の浮動感(めまい感)dizzinessを覚える場合もあります。
まためまいは吐き気、嘔吐、発汗、動悸、血圧変動などを伴う場合があります。

○半規管はんきかんsemicircular ducts(三半規管three semicurcular ducts):
内耳の中の骨迷路と呼ばれる器官には、互いに90度の向きを変えた三個の半円形の骨半規管があります。 その中に管状の膜迷路があり、それらは後骨半規管、外側骨半規管、前骨半規管と呼ばれていて その内部はリンパ液で満たされています。 体を動かすとリンパ液の流れも動くことで、全方向に対しての回転感覚を得ることが出来ます。 そしてこの部分が障害されると回転性の頭がぐるぐるしためまいを覚えます。

○耳石器じせききotolith organ:
内耳にある前庭vestibuleといわれる部分にあって、 炭酸カルシウムとリン酸カルシウムの小さい結晶(感覚砂・耳石statoconia)が感覚器に5,6層になって詰まっています。 体に重力や遠心力が加わり加速減速などが起こると、結晶が動いて傾斜や位置変化、加速減速などを感知します。 この部分が障害されると昇降性のめまいが生じ、ふわふわとした宙に浮いた感覚を覚えます。
上記の器官に感受したものは信号となって前庭神経-脳幹-視床-大脳皮質へと伝達されて行きます。

●前庭ニューロン炎vestibular neuronitis(前庭神経炎):
ウイルス性の感染症と考えられており、風邪を引いて少し経つと突発的に激しい回転性のめまいが生じます。
その他脳幹が障害されても主に回転性のめまいが生じます。 また視床や大脳皮質が障害させると多くはふわふわとした感覚の昇降性めまいが生じます。

●良性発作性頭位変換性めまい症benign paroxysmal positional vertigo ;BPPV:
ごく一般的にみられるタイプのひとつで次のような特徴的症状があります。
・頭をある特定の位置にすると回転性のめまいが起こる。(頭を軽くさっと傾けただけで起こりえます)
・めまいが生じるとそれが強くなり、後に弱まって消える。普通10~20秒内。
・頭をめまいを生じさせる特定の位置に繰り返しおくと、めまいは軽減したり起こらなくなる。
・難聴や耳鳴りなどの蝸牛症状は伴わない。(蝸牛かぎゅう:らせん状のカタツムリに似た形状の管を持つ骨迷路の聴覚の器官)
原因は様々ですが、日常の過労、睡眠不足、過度の飲酒などで起こす場合もあります。



■検査と診断:
・聴力検査:
オージオメーターaudiomater(聴力計)で左右の耳の聴力・聴覚を調べます。
・足踏み検査:
両腕を肩まで前方に突き出した状態で、目を閉じるかアイマスクを着用して 30秒間あるいは50歩ないし100歩足踏みさせて、その結果の体の位置や方向などで末梢性前庭系障害や小脳や脳幹障害の 有無などを調べます。しかし下半身の骨格のずれなどでも同様の結果も起こりえますので、この結果だけで異常部位の 判定は出来ません。
・ロンベルグ検査Romberg test:
被験者は直立して閉眼し起立した状態が保てるかを見ます。いわゆるロンベルグ兆候Romberg signのある人は閉眼すると直ぐに 方向不定の転倒を起こします。
・フレンツェル眼鏡Frenzel glass:
凸レンズを利用して眼振などの眼球運動の検査をします。
・視運動性眼振パターンテストoptpkinetic pattern test;OKPtest:
被験者は大きな円筒の中に座り、円筒の内側に線状が縦に引かれていて、それに加速しながら 回転させたりして眼振などの眼球運動の検査をします。 被験者に生じた眼振を電気信号化して、紙などに記録させてパターンとして評価します。
・温度刺激検査caloric test:
被験者は仰臥になり頭を30度もちあげた状態で30℃もしくは44℃の冷温水を交互に注水して眼振反応を調べます。 半規管は温度差が生じることで内リンパの流動を起こし眼振の出現を調べるものです。
・電気眼振計electrooculogragh;EOG:
眼球の静止電位を利用したもので、眼球の角膜側は正(+)帯電しているので眼球が動けば眼球の両側に電位差が生じます。 それを電極を置いて電位差を取り出し、水平・垂直方向の運動を電気的に信号にしたものを増幅して、 眼振図nystagmogramを作って検査します。
・ホルター心電図:
携帯型心電図システムで、被検者に24時間装着させてメモリーにより長時間記録を行う。
米国生物物理学のホルターNorman Jefferis Holter(1914-1983)が1961年に考案されたもの。

その他脳波を調べたり、X線を照射させずに検査が出来るMRI(磁気共鳴撮像)や 血管造影剤を注入して画像を得るMRA(MR血管造影)で血管の状態の異常が原因であるか調べることが出来ます。



■治療:
めまいの原因は様々ですから、それに応じた治療が必要となってきます。
ここでは代表的な治療薬をとりあげます。
●抗ヒスタミン薬
ジメンヒドリナートdimenhydrinate:商品名ドラマミン;(ファイザー)、トラベルミン(サンノーバ-エーザイ) メニエールからくるめまいに適応。
●脳血管拡張薬
塩酸イソプレナリン(塩酸イソプロテレノール)isoprenaline hydrochloride:商品名イソメニール(科研)
塩酸ジフェニドールdifenidol hydrochloride:商品名セファドール(日本新薬)他にイソダトール、ケイドール、 サタノロン、ジェフロン、ジフェニドリン、シュランダー、ソブラリン、ソルノミン、デアノサール、トスペラール、 ピネロロ、メカルミン、ヨウファドール、レメアン、ワンサー。内耳障害に基づくめまいに適応。
メシル酸ベタヒスチンbetahistine mesilate:商品名メリスロン(エーザイ)他にコンベルミンM、スズトロン、デアノサート、 バイメニエル、パパベリアン、ミタポップ、メタヒスロン、メトロニーナ、メニエース、メニエトール、メニタジン、リマーク。 メニエールに基づくめまいに適応。

対症療法として鎮静薬、精神安定薬、制吐薬、重曹水も用いられます。

・前失神・起立性低血圧の治療薬(下記から選択)
塩酸エチレフリン(エホチール錠 5mg) 3-6錠 分3
塩酸ミドドリン(メトリジン錠2mg) 1-2錠 分1-2 朝・昼
メチル硫酸アメジニウム(リズミック錠10mg) 1-2錠 分1-2 朝・昼

・不安・抑うつに(下記から選択)
ジアゼパム(セルシン錠〔2mg〕) 3-6錠 分3
塩酸アミトリプチリン(トリプタノール錠10mg) 1-3錠 分1-3 

・肩こりが酷い時に(適宜組み合わせて)
塩酸エペリゾン(ミオナール錠50mg) 3錠 分3
メダゼパム(レスミット錠5mg) 3錠 分3

・回転性まめい:前庭系抑制薬(下記から選択)
ジフェンヒドラミン・ジプロフィリン(トラベルミン錠) 1回 1錠 適宜
ジフェンヒドラミン・ジプロフィリン(トラベルミン注 1mL) 1回 1mL 皮下注 適宜
塩酸ジフェニドール(セファドール錠 25mg) 3-6錠 分3
塩酸プロメタジン(ピレチア錠(5mg)) 1回 1錠 適宜
塩酸プロメタジン(ヒベルナ注 2.5%1mL) 1回 0.2mL 皮下注 適宜

・制吐薬(下記から選択)
ドンペリドン(ナウゼリン錠10) 2錠 分2
ドンペリドン(ナウゼリン坐剤30mg) 1回1個 1日2回
メトクロプラミド(プリンペラン錠5mg) 2錠 分2
メトクロプラミド(プリンペラン注射液10mg 0.5%2mL) 1回2mL 1日2回 筋・静注


めまい:vertigo   めまい感dizziness   平衡感覚:static sensation    半規管:semicircular canals    耳石器:otolith organ
前庭ニューロン炎:vestibular neuronitis    良性発作性頭位変換性めまい症:benign paroxysmal positional vertigo ;BPPV




低髄液圧症候群 low intracranial pressure syndrome G971

■原因:
脳脊髄液が減少する病気で低脳脊髄圧とも呼ばれます。 腰椎穿刺後の穿刺部から脳脊髄液が漏出したり脳室ドレナージ・脳室短絡術後、頭蓋損傷部位からの髄液漏出時などに見られます。また軽微な外傷後でも髄液が神経根部から漏出する場合もあります。またむちうち後遺症の原因のひとつともなっています。急性期には髄圧減少が見られても慢性期に移ると静脈拡張による代償が行われ髄液圧が正常に戻ることもあります。



■症状:
脳・脊髄・脳神経・脊髄神経が機能障害を起こし、頭痛・嘔吐・悪心・頚部痛・記憶力低下・倦怠・外転神経麻痺・意識障害などが見られます。
特に急性期には起立性頭痛が多く見られ臥位で改善します。

■診断:
臨床症状が多彩となり造影脳MRIで硬膜下腔拡大、静脈拡張、小脳扁桃下垂、硬膜肥厚など、RI脳層シンチグラフィーで早期膀胱内集積、脳脊髄液漏出像の出現により診断出来ます。

■治療・例:
【急性期の治療】
2-3週間の臥床安静と一日2L程度の水分補給(経口か点滴)を保ちながら以下を組み合わせます。
エチゾラム(デパス錠0.5mg) 安息香酸ナトリウムカフェイン末0.5mg 
ジクロフェナクナトリウムボルタレンSRカプセル37.5mg
【慢性期の治療】
ブラッドパッチ治療
硬膜外針で硬膜外穿刺を行い腰椎部で30mL、頸椎・胸椎部で10mLの自家血を注入し、下記を併用します。
ブドウ糖注5% 500mL ブドウ糖加酢酸リンゲル液(ヴィーンF注 500mL)
エチゾラム(デパス錠0.5mg・1mg) アセトアミノフェン[内](カロナール錠200 200mg)

低髄液圧症候群:low intracranial pressure syndrome  低脳脊髄圧:low cerebrospinal fluid pressure



メニエール病(メニエル病)Meniere disease 【突発性内リンパ水腫】


●メニエール病は内耳(半規管)にある内リンパ液が異常に溜まることで障害をきたす
■概要と原因:
メニエール病は、回転性の眩暈(めまい)や吐き気、嘔吐(おうと)また耳鳴りや難聴などを起こす病気で、 病名の由来はフランスの耳科学者メニエールMeniere(1799-1862)がこの病気の原因を報告したことによります。

●突発性内リンパ水腫(とっぱつせい・ないりんぱすいしゅ)
それまでメニエール病は脳溢血(のういっけつ)などの中枢神経の病気のみと考えられていましたが、メニエールは1861年にこの病気の原因は内耳(半規管)にあるリンパ液の産生量が吸収量を上回り、この両者の均衡が保てなくなることにより起こる疾患(内リンパ水腫)があることを報告しました。

■内リンパ水腫の原因
内リンパ嚢(のう)の血管及び周囲の繊維化。内リンパ液上皮の扁平化。内リンパ嚢や内リンパ管の発育不良。内リンパ周囲の含気化。内リンパ嚢に関する免疫の異常。水代謝に関連するホルモンやレセプターの異常など。



■症状:
回転性めまいによる吐き気や嘔吐
前述の通り、ぐるぐると頭の中で渦が巻いているような、いわゆる回転性の激しいめまいが突発的に生じ、また吐き気や嘔吐も伴います。 この症状は短くても30分、また通常でも2、3時間続きますが一昼夜続くこともまれにあります。
一度この症状が出始めると、その後周期的に症状が現れます。 その際発症した側の耳に閉塞感や圧迫感も覚え、また耳鳴りや難聴も同時に起きたり断続的に生じたりします。 この病態が何年も続くと聴力が徐々に衰えてきます。

■診断:
上記の症状が現れればメニエール病と診断されます。 しかし原因を明確にするために聴力検査だけでなく、MRI検査も行うことがあります。
更にグリセロール検査、フロセミド検査(ループ利尿薬であるフロセミドを用いる聴力検査)などがあります。

■治療:
発作には ロラゼパムlorazepam[ベンゾジアゼピン系薬](商品名:ワイパックス・ワイスレダリー-武田)
スコポラミンscopolamine(商品名:オピスコ・三共、田、パンスコ・武田)

吐き気嘔吐に プロクロルペラジンprochlorperazine(商品名:ノバミン・塩野義[内服薬及び筋肉注射])
嘔吐がある場合、筋注をします。若しくは坐薬にして使用します。

その他 メシル酸ベータヒスチンbetahistine mesilate[脳血管拡張薬](商品名:メリスロン・エーザイ)、
ジメンヒドリナートdimenhydrinate[抗ヒスタミン薬](商品名;ドラマミン・ファイザー、トラベルミン・ サンノーバ-エーザイ)
を用います。

■薬がうまく作用しない場合、手術療法も視野に入れます。
●内リンパ嚢開放術【内リンパ嚢減荷術:ボルトマン手術】
内耳の過剰にあるリンパ液圧を低下させる処置によって内耳の水腫(むくみ)をとることが出来ます。 内リンパ液圧が高い状態が続くと難聴が進行してゆきます。 またボルトマン術原法の外膜切開法から手術に改善がなされ、切開部の再閉鎖防止の措置として 内リンパを髄腔に解放するくも膜下シャント術などがあります。

●前庭神経切断術
半規管の平衡機能を低下若しくは破壊をさせる処置もとられます。 これは内耳前庭神経を切断させる方法で、めまいはほぼ治まり、聴力も保つことが出来ます。しかし平衡感覚が失われますので激しいスポーツや特別の技能職務などは困難になります。 しかしこの病気の殆どは30~40歳代の成人におこりますから、平衡機能は視覚による経験的 補償を行いますので日常生活には殆ど影響しません。



日英対語:
メニエール病:Meniere  内リンパ:endolymph  水腫:edema  めまい:vertigo   吐き気:gagging
内リンパ水腫:endolymphatic hydrops   嘔吐:vomiting  耳鳴り:tinnitus  難聴:hypacusia   
フロセミド:furosemide   グリセロール:glycerol


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