【家庭の医学】総合目録
脳卒中:脳梗塞・脳血栓・脳塞栓
●脳卒中cerebral apoplexy:
 脳血管に関して突然生じる重大な病気の総称

脳卒中とは漢字で読む限り意味が分かりにくい病気かも知れませんが、漢語(中国語)由来ですので元の意味を調べると若干理解し易くなります。 「卒」は「突然、唐突」の意味で、「卒倒」と書けば突然倒れることを意味します。「中」は真ん中や内部の意味の他に「当り、受ける、罹る」の意味があります。現在の漢語で「卒中」は軽い風邪にかかる事を意味していますが、「突然病気に罹る」という意味もあります。

これが英語のcerebral apoplexyではapoplexyが卒中にあたり、文字通りには討たれた状態で、脳cerebralに関する場合では脳塞栓、脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血、など突然病魔に襲われる疾患や病態を意味しています。
  • ●脳血栓症 cerebral thrombosis:
     脳の動脈硬化などで脳血管が詰まる

    「血栓」とは血管内の血流を止めさせる(栓)塊を意味したり、血管の詰まりそのものを意味する場合があります。 原因の代表的なものとしてアテローム動脈硬化があります。 脳血栓では脳血管・脳動脈の閉塞によって脳梗塞を生じさせ得る場合のことを言います。
●脳塞栓症(のうそくせんしょう)cerebral emvolism:
 脳以外の場所で出来た血栓が脳内血管に流れて来て詰まらせるもの

「塞栓」とは「(流れなどを)ふさいで詰まらせる」という意味です。 それで脳血栓とは心臓頸部などの場所で生じた血栓(血の塊)の一部が剥がれ落ちて血流に流されて脳の動脈を詰まらせる病態です。 詰まっていた血栓は2~3日のうちに溶けて流れます。 脳血栓が脳の動脈硬化が原因であるのに対して、脳塞栓は他の場所が初因となりえます。
●脳梗塞(のうこうそく)cerabral infarction,brain infarction:
 脳の血管が詰まった結果、脳に虚血が生じ脳細胞が壊死するもの

梗塞で思い浮かべる病気で心筋梗塞があります。これは心臓を取り囲む筋肉に血流からの酸素供給が滞った結果、心筋が壊死してしまう病気です。同様に脳梗塞は脳が動脈からの血流が閉塞などで途絶えると酸素供給不足となり、5分程で脳の神経細胞が壊死してしまいます。 それが脳梗塞です。即ち「梗塞」は分かりにくい言葉ですが、組織の壊死であるということです。
原因としてアテローム血栓性脳梗塞、心臓の疾患が原因の心原性脳梗塞、 大脳深部や小脳、脳幹などに生じる径1.5cm以下の小梗塞を起こすラクナ梗塞などがあります。
■症状:
一般的に突然の半身の運動マヒ、感覚障害、失語症、半盲などがあります。 また血管が脳のどこに詰まるかによって麻痺する箇所が違ってきます。

脳出血の場合の症状は頭痛が激しく吐き気、嘔吐、意識の消失、高血圧などがみられます。脳内にヘルニアがみられると、呼吸が不規則で遅くなります。

脳梗塞の大抵は発症直後が一番機能面で問題になりますが、約20%は24~48時間後に機能損失が最大になります。 それでも元気な脳細胞が機能を回復するために代行してくれる働きがありますので一部の機能は回復します。 それでも麻痺や痙攣が残るために歩行や発言などの面で不都合を感じます。 また記憶や思考能力、学習能力などの面でも衰えが出てきたり、精神状態も不安定になりがちです。ほかに感覚器や臓器に影響を及ぼすこともあります。
  • ■診断・治療・予防:
    X線CT検査で黒い影を確認すると、そこは脳血栓もしくは脳梗塞であると診断されます。 更に心電図、MRI、MRA、SPECT(スペクト)などで検査します。

    脳卒中全体としての危険因子はアテローム動脈硬化、高血圧、糖尿病、アルコール、喫煙、抗凝固薬、コカイン、高コレステロール、運動不足などがあげられていて、その殆どは生活習慣を改善することによってこの病気に罹るリスクを下げることが出来ます。
【急性期の脳梗塞:ブレインアタックbrain attackの処方例】:
状態に応じて適宜処方します(代表的例)
●rt-PA(アルテプラーゼ)投与:グルトパ注60mg以内を急速静注で開始→
シリンジポンプによる点滴静注(超急性期再開通療法)
但し、最終未発症確認から4.5時間以内に限定適用。
●降圧療法:塩酸ジルチアゼム注射用orニカルピン注射液を点滴静注
●体液管理:ヴィーンF輸液を点滴静注(for4-8Hs)
●脳保護療法:エダラボン点滴静注30mgを点滴静注

【血栓回収療法】
血栓の出来ている位置まで足の付け根から入れた特殊な管を通し、血栓のある位置で 管の中から金属メッシュを患部に張り巡らし、血栓をメッシュに絡みつかせます。 続いてその手前の血管をバルーンを膨らまして留めた状態で、メッシュを管と共に引き戻すことで血栓を外部に取り出すことが出来ます。

これは薬品を使わない機械的治療法で、安全性の高さも実証されつつあります。しかし この療法はまだ新しく、今後専門医を増やすことと緊急搬送システムの構築をすることの急を要されています。
●脳梗塞にはラクナ梗塞・アテローム血栓性脳梗塞・心原性脳梗塞などがある
脳梗塞の発症機序(はっしょうきじょ・病気の成り立ち)
①脳血管そのものの詰まり
②心臓や大血管で出来た血栓、脂肪、腫瘍などが脳血管にたどり着いてそこで閉塞を起こすもの
③血行力学的なものとしては、主幹動脈に閉塞や狭窄(きょうさく:せばまること)を起きてしまうと
著しい血圧低下となり脳に虚血症状をもたらすもの
●ラクナ梗塞lacunar infarction〔小窩性梗塞しょうかせいこうそく〕:
ラクナとはラテン語由来の言葉で本来の意味は「小窩(しょうか)すなわち小さい空洞」のことで、この病名の場合大脳深部や小脳や脳幹の細小血管に生じた径1.5cm以下の小梗塞を意味しています。

梗塞の発症部位が小さいために患者は無症状でいることも多く、その場合無症候性脳梗塞(むしょうこうせいのうこうそく)としても診断されます。これは脳ドッグやMRIなどで始めて発見される機会が増えたためです。ラクナ梗塞は脳梗塞全体の半数近くを占めており、日常の高血圧管理が重要となってきています。

また脳深部にある穿通枝の末梢領域に起こる病気であることから穿通枝梗塞(せんつうしこうそく)I635の類に入れられています。また比較的径の大きなものを穿底枝梗塞branch atheromatous diseaseと呼びます。
■治療:処方例
バイアスピリン錠100mg、オザグレルNa注射液
●アテローム血栓性脳梗塞:
動脈中にアテロームが出来ている部位で動脈閉塞を起こしたり、体内の血管中に出来たアテロームの一部が剥がれて動脈内に流れだし、その末端部分で閉塞を起こすのが原因で脳が虚血状態となるもの。  
■治療:処方例はラクナ梗塞に準じますが、以下の処方も追加出来ます。
スロンノンHI注10mg/2mL、ヘパリンNa注低分子デキストランL注 点滴静注
  • ●心原性脳梗塞:
    心臓の疾患により出来た血栓が、動脈を流れ脳動脈で閉塞を起こすもの。
    ■治療:
    【処方例】:
    抗血小板療法は無効で、抗凝固療法を用います。
    ヘパリンNa注10万単位/100mL
    ワーファリン錠1mg
    プラザキサカプセル75mg・110mg
    抗浮腫療法を選択する場合:
    グリセオール注 200mL
【和英医学用語】:
脳梗塞:brain infarction;cerebral infarction 脳血管:cerebral blood vessel
閉塞:obliteration 壊死:necrosis ラクナ梗塞:lacunar infarction
アテローム:atheroma;sebaceous cysts
穿底枝梗塞:branch atheromatous disease 

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