【家庭の医学】総合目録
パーキンソン病Parkinson disease
■原因:
パーキンソン病の名前の由来となったジェームズ・パーキンソンJames Parkinson(1755-1824)は英国の内科医その他方面の学者、及び活動家で、彼が1817年に発表した論文の中で初めて記載された疾患がこのパーキンソン病です。この病気は振戦麻痺(しんせんまひ:片側の手や足に生じる振るえや指などに見られる麻痺)が主症状のひとつとして見られますが、パーキンソンがより具体的に論文で取り上げました。

●黒質から作られるドパミン(ドーパミン)の不足により振戦麻痺などをきたす。
大脳の中には脊髄と大脳を結ぶ中脳があってその左右に黒質と呼ばれている組織があります。名前の由来は解剖学見地から実際に黒く見え、それは緻密部と呼ばれる組織にメラニン色素が含まれているためです。更に別に細胞の少ない網様部の二つから成り立っています。
  • その黒質から神経伝達物質であるドパミンが作られます。 ドパミンは大脳の線条体に運ばれてそれに刺激を与える事で体の運動を円滑に行うことが出来ます。 しかし、黒質がなんらかの影響を受けて働きが鈍るとドパミン生産量が不足して線条体にうまく作用されないために、体の動きが鈍ったり振るえを起こしたりぎくしゃくしたりします。これが即ちパーキンソン病です。
■症状:
無動、固縮、振戦、姿勢反射障害の4つがパーキンソン病の主たる症候で、加えて自律神経障害として便秘、膏顔(あぶら顔)など、精神障害としてうつ状態、思考緩徐なども見られます。

・無動症:立ったり座ったりしている場合、ひとつの姿勢がいつまでもそのまま動かないでいる状態が見られます。 また何かの動作を始めると(随意運動)非常に緩慢な動きになり、途中でやめてしまったりします。 しかしそれは筋力の衰えではなく、神経伝達の疾患です。 睡眠時の寝返りもしないために一晩で床ずれを起こしてしまいます。

・固縮:体の力を抜いて別の人が手や足を曲げたり伸ばしたりするときに硬さを感じますが、本人の自覚はありません。 他の症状と合わせて手先の作業がとても困難になり、日常の動作や家事をこなし難くなります。

・振戦:左右どちらかの手足に起こる振えで、更に舌、額(ひたい)瞼(まぶた)などにも起こります。 手足の振えは運動時や睡眠時には起こらず何もしないでいる時に起こります。

・姿勢反射障害:立ったり歩いたりしてバランスを失うと反射的に手を前にだしたり体勢を整えようとしますが、 パーキンソン病患者では一旦バランスを失うとそのままの姿勢で倒れてしまいます。

・自律神経障害:便秘が一般的にみられます。その場合、便秘薬で調整します。また汗が出難くなり下半身からおこりますので顔だけに発汗が集中するために膏顔(脂顔)になります。
■診断:
主な診断方法は症状の細かな観察に基づいて判断されます。高齢者になるほどパーキンソン病とほぼ同じ症状が現れるために診断は慎重を要します。X線CT画像検査やMRI検査で直接的診断は出来ませんが原因を間接的につかむ上でこれも役立ちます。
■治療:
理学療法的に運動機能維持を目的としたプログラムを組んでリハビリを行います。 また便秘を習慣づけないようにするために食事を改善をしたり薬を使用します。 その他日常生活で動作をしやすいように周囲が援助をして、屋内であれば転倒防止のために 手すりなどを取り付けるようにします。 衣服やカバンなどの持ち物であればボタン以外のファスナー(ジッパー)のような使いやすい物を選んだり出来ます。
【処方例】以下は処方の際によく用いられる製剤で適宜処方します
ビ・シフロール錠0.25mg、ミラペックスLA錠1.5mg、レキップ錠0.25mg
レキップCR錠2mg、ニュープロパッチ4.5mg、
パーロデル錠2.5mg、ペルマックス錠50μg、カバサール錠0.25mg
L-dopa製剤:メネシット配合錠100、イーシー・ドパール配合錠
消化器症状対策:ナウゼリン錠10 10mg、ガスモチン錠5mg
  • 治療開始後、5-6年を経ると以下の現象が見られやすくなります。
    wearing off擦り減り現象:薬剤の効果持続時間の短縮
    delayed on遅延効果:効果が現れるまで通常より遅くなる
    no-on:効果が消失する
    on-off:症状悪化の後、急激に改善がみられる
wearing offなどが見られたら以下で処方します
コムタン錠100mg、エフピーOD錠、トレリーフ錠25mg
ノウリアスト錠20mg、アポカイン皮下注30mg

幻覚・妄想など非運動症状に
アリセプトD錠3mg、レミニール錠8mg、イクセロンパッチ4.5mg
セロクエル25mg錠、ツムラ抑肝散エキス顆粒(医療用)

認知症に
メマリー錠5mg
■手術:
*淡蒼球(たんそうきゅう)破壊術(:切断術)があり、不随意運動や運動開始が円滑に行えるような状態にすることが出来ます。レクセル(Leksell L)が開発した後腹側淡蒼球手術が広く用いられています。なお前部淡蒼球手術は固縮にのみ有効で、振戦に対する効果は一過性のものです。

*淡蒼球とは、大脳の深部にある神経核で、体性運動の調節に関与しています。 内髄板によって内節と外節とに分けられていて、線条体のGABA(γアミノ酪酸:がんまーあみのらくさん)作動性で抑制性の入力を得たり視床下核に抑制性の出力を送ったり、視床下核から興奮性の入力を受けたりする働きがあり、抑制が解除された時に興奮性が上昇することで種々の運動を起こすと考えられています。

治療にはかなりの限界があるためにパーキンソン病患者はやがて重度の身体障害になってしまう可能性が高いうえ認知症状も重なってきますし、急性の肺炎による死亡なども起こりやすくなります。 それで前もって終末の医療に関しての考えやあり方を早いうちに十分にまとめておくことも大切です。
【和英医学用語】:
パーキンソン病:Parkinson disease 振戦麻痺:parkinsonism shaking palsy
黒質:substantia nigra 固縮:rigidity ドパミン:dopamine(DA)
線条体:corpus striatum メラニン色素:melanotic pigment

自律神経障害:autonomic neuropathy 姿勢反射障害:postural reflex disturbance 
無動症:akinesia,akinesis 淡蒼球:pallidum,globus pallidus 淡蒼球破壊術:pallidotomy
後腹側淡蒼球手術:posteroventral pallidotomy(PVP)  γアミノ酪酸:γ-aminobutyric acid



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