無料で読める家庭の医学  病気・疾患の解説、原因、症状、診断方法、治療方法、処方例などをわかりやすく記載
家庭の医学


機能性不正出血(きのうせいふせいしゅっけつ)
不正性器出血(ふせいせいきしゅっけつ)
機能性子宮出血(きのうせいしきゅうしゅっけつ)


■原因:
●子宮内膜の働きに必要なエストロゲン・プロゲステロンの濃度の異常が引き起こす病気

不正性器出血とは通常の月経や分娩また産褥(さんじょく)の際にみられる生理的出血以外の病的な出血の総称として用いられている病名です。
そのうち機能性不正出血とは、月経をつかさどるホルモン濃度が変化する事により引き起こされるものですが、他に臓器そのものに異常がある器質性疾患(きしつせいしっかん)が原因の出血もありますので、内診所見とともに画像診断、血液検査、病理学的検査などを十分に行って原因を見極める必要があります。

この機能性不正出血の大半は45歳以上の女性にみられますが、概ね20%は不安定な思春期の女児にもみられます。また家庭の医学レベルでは機能性不正出血と機能性子宮出血を同じと考えて差し支えありません。

器質性疾患の中には子宮の炎症(子宮内膜炎)をはじめ、子宮筋腫、子宮内膜増殖症、子宮内膜症、子宮内膜ポリープ、子宮体癌、子宮頚癌、子宮肉腫など比較的病態の軽いものから重篤(じゅうとく)なものまであります。



●機能性不正出血は破綻出血(はたんしゅっけつ)と消退出血(しょうたいしゅっけつ)、排卵性と無排卵性に分類される。

・破綻出血:エストロゲン(卵胞ホルモン:女性ホルモン)もしくはプロゲステロン(黄体ホルモン)の服用を続ける時に起こす子宮出血のことで、子宮内膜が血行障害により壊死するために起こる出血です。

・消退出血:エストロゲンやプロゲステロンの濃度が減少した際に生じる不正出血のことで、エストロゲンが十分に曝露(ばくろ)された子宮内膜ではプロゲステロン製剤を一定期間投与後、中止した時に消退出血を来します。



■症状:
●内膜剥脱の不完全と内膜増殖により不規則的な出血が生じる。

卵胞期に出血をみるものでは、月経時の内膜剥脱が不完全で部分的に分泌期内膜が残存して分泌期像と増殖期像が混在し、その状態で剥脱を繰り返すためです。
また、エストロゲン濃度の高い状態が続くとホルモン濃度のバランスがくずれて排卵がおこらないまま子宮内膜が異常に厚くなり(子宮内膜増殖症)、その結果不規則的にかつ不完全な状態で内膜が剥脱(はくだつ)して出血を起こします。



■診断・治療:
原因の欄で言及しましたように、問診、膣鏡診、内診など様々な方法で検査をおこない、器質性のものでないことが明らかとした上で、膣からの出血であると認めた場合に機能性子宮出血と診断されます。 また、臨床症状、基礎体温、ホルモン測定、子宮内膜組織を調べて無排卵性か排卵性かを診断した上で処方されます。

・無排卵性機能性出血の、薬による治療(処方例)
ノルゲストレル・エチニルエストラジオール(ドオルトン錠) 1-2錠 分1-2 10-14日間
①結合型エストロゲン(プレマリン錠0.625mg) 1錠 分1 10日間 消退出血後5日目より開始
②ノルゲストレル・エチニルエストラジオール(ドオルトン錠) 1錠 分1 11日間
①が終了したら②に連続的に服用する
クエン酸クロミフェン(クロミッド錠 50mg) 1-2錠 分1-2 5日間 消退出血後5日目より開始

・排卵性機能性出血の、止血剤などによる治療(処方例)
①カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム(アドナ錠30mg) 3錠 分3 5-7日間
②トラネキサム酸(トランサミン錠250mg) 3錠 分3 5-7日間
①か②を選択もしくは併用

・止血しないホルモン療法:(処方例)
卵胞期の出血に:結合型エストロゲン(プレマリン錠0.625mg) 1-2錠 分1-2 7-10日間
①か②を選択
①酢酸メドロキシプロゲステロン(ヒスロン錠5mg) 1-2錠 分1-2 10-12日間
②ノルゲストレル・エチニルエストラジオール(ドオルトン錠) 1錠 分1 10-12日間

・機能性出血が多量の場合の緊急止血:(処方例)
カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム(アドナ注(静脈用)25mg) 1日 25-100mg
トラネキサム酸(トランサミン注10%  2.5mL) 1日 25-500mg 点滴静注

注意:ホルモン剤を服用すると消退出血が起きます。またホルモン剤の服用は毎日忘れずに続けること。


月経:menstrual discharge 不正性器出血:abnormal genital bleeding ;atypical genital bleeding
機能性子宮出血:functional uterine bleeding
機能性不正出血:functional uterus bleeding;dysfunctional uterine bleeding
ホルモン:hormone   器質性:organic   破綻出血:breakthrough bleeding
消退出血:withdrawal bleeding  排卵:ovulation   エストロゲン:estrogen
プロゲステロン:progesterone  子宮内膜:endometrium   剥脱:exfoliation




月経異常(げっけいいじょう):menstruation disorders 【初潮・周期・排卵】


■原因・症状:
月経異常とは、月経周期や月経期間、また出血量に異常があるなどの病的症状を示し、以下にその代表的病状を分類します。
・無月経(むげっけい):18歳までに初潮がこない原発性無月経・3ヶ月以上月経がとまる続発性無月経
・稀発月経(きはつげっけい):月経周期が長い(39日以上3ヶ月以下)
・頻発月経(ひんぱつげっけい):月経周期が短い(24日以内)
・過多月経(かたげっけい):出血が7日以上続いたり月経1回の出血量250mLを越え多量になる
・過少月経(かしょうげっけい):月経が3日以内で終了する
・無排卵性月経(むはいらんせいげっけい:排卵のない月経
・月経困難症(げっけいこんなんしょう):月経中に生じる病的症状で下腹部痛、腰痛、腹部膨満感、 悪心、頭痛、疲労、脱力感、食欲不振、イライラなどを引き起こす

なお、頻発月経は卵胞期の短縮、黄体期の短縮、若しくは無排卵周期で月経周期が短縮したために起こす場合などがあります。このような頻度が高くなる月経は、出血も増えるために貧血になることがよくみられます。

特に思春期の月経異常は、無排卵性のエストロゲンの分泌が継続的に行われる結果、子宮内膜の増殖と剥奪が不自然に起こるために、出血が不安定で多量にみられることがあり、思春期のこのような不正出血のうち4人中3人は機能性出血(無排卵性出血)と考えられています。



■診断・治療:
超音波検査、婦人科診察などで子宮・卵巣の形態的異常などの器質的原因疾患か機能性疾患であるかを判断し、器質的疾患が見つかればそちらを優先的に治療をすすめます
更にホルモン検査をし、エストロゲン基礎値も治療の考慮に入れるようにします。 また血液検査、止血検査、甲状腺や副腎などの内分泌疾患の有無も調べます。

●無排卵性出血(機能性出血)の場合の治療方法例:
・出血が軽度の場合:
貧血に至らない場合は経過観察を先ずおこない、一過性でも出血が続くようであれば 中用量ピルを短期で用いながら経過観察をします。
・処方例:①から④のいずれかを用いる。
①ノルエチステロン・メストラノール(ノアルテン-D錠) 1-2錠 分2 7-10日
②ノルゲストレル・エチニルエストラジオール(ドオルトン錠) 1錠 分1 7-10日
③低用量ピル:エチニルエストラジオール配合経口避妊薬(トリキュラー錠またはアンジュ錠) 1-3周期分
④酢酸メドロキシプロゲステロン(プロベラ 2.5mg)または酢酸クロルマジノン(ルトラール錠 2mg)
2錠 分2 10-14日(1-2ヶ月に1回)

・急性または中度以上の出血の場合:
・処方例:①か②を用いる
ノルエチステロン・メストラノール(ノアルテン-D錠) 1-2錠 分2 7日
ノルゲストレル・エチニルエストラジオール(ドオルトン錠) 1錠 分1 7日

その後以下を服用
エチニルエストラジオール配合経口避妊薬(アンジュ錠) 3-6周期分


思春期:early adolescence   月経異常:menstruation disorders   無排卵性:anovulatory   エストロゲン:estrogen
子宮内膜:endometrium   増殖:growth   剥奪:exfoliation   機能性:functional   月経周期:menstrual cycle
希発月経:oligomenorrhea   頻発月経:polymenorrhea   過多月経:hypermenorrhea  過少月経:hypomenorrhea 


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