無料で読める家庭の医学  病気・疾患の解説、英語名、原因、症状、診断方法、治療方法、処方例などをわかりやすく記載
家庭の医学


月経前症候群:premenstrual syndrome(PMS)


■原因:
月経前症候群(げっけいまえしょうこうぐん)とは以前に月経前緊張症と言われていましたが、緊張以外の症状も多く見られますから前者の表現の方が適切と言えるでしょう。日本産科婦人科学会による定義では、
「月経前、3-10日の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経発来とともに減退ないし消失するもの」 とされています。

月経のある女性の過半数は、なんらかの症状があらわれたのを経験しています。 原因は不明ですが、黄体期のエストロゲン(卵黄ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)のバランスが崩れてしまうためと一般的に考えられています。特にプロゲステロンの分解過程で、不安を増強させる成分が多く生じてしまう傾向のある人に罹りやすいとも考えられています。



■症状:
【身体面】
動悸   腰痛   腹部の張り   乳房の張りや痛み   食欲の偏り   便秘   体重増加
下腹部のけいれん痛、圧迫感、鈍痛など不快感   めまい   あざ   失神   疲労感   頭痛 
ほてり、のぼせ   不眠   関節痛、筋肉痛   無気力感   吐き気、嘔吐   
手足のしびれ、ピリピリする痛み   にきび、じんましん   手足のむくみ

【精神面】
興奮   錯乱   うつ   引きこもり   集中力低下   短気   
神経質   過敏   感情的 いらいら   憂鬱



■診断・治療:
大抵は問診によって生活の改善方法や処方を行います。
●生活習慣を見直すことから・・
・規則的な睡眠、食事を励行する。(しかし時間を極端にきにしないように)
・小魚などまたは、サプリメントとしてカルシウム剤を1日1000mg程度摂る。(精神安定効果)
・食生活の改善として、アルコール、カフェインの多い嗜好品などの摂取量を抑える。(興奮抑制効果)
・塩分を控える。(むくみの軽減効果)
・無理なダイエットを行なわず、炭水化物をこまめに摂る。(燃焼効果)
・有酸素運動その他適度な軽い運動や深呼吸を行う。(有酸素運動にこだわる必要はありません)
・自宅で籠らないように、家事その他軽作業レベルのものを適度に行う。
・姿勢を屈ませてしまって心臓や胸部を圧迫させないようにする。
・育児、介護、仕事などによるストレスがあればリラクゼーションの時間も設ける。
・カウンセリングを受けたり、相談や話し合いが出来るところを設けておく。

●薬を使った対処療法(処方例)
むくみ(K保持性利尿薬)
スピロノラクトン(アルダクトンA錠 25mg) 2-4錠 分2 月経前の7日間
頭痛、腹痛 ①か②のどちらかを選択。(非ステロイド抗炎症薬)
①アントラニル酸系:メフェナム酸(ポンタールカプセル250mg) 3錠 分3
②プロピオン酸系:イブプロフェン(ブルフェン錠100mg) 3-6錠 分3

いらいらなど ①か②あるいは両方
①塩酸ピリドキシン(強力アデロキシン末 10%) 1包 分1
②乳酸カルシウム(エビス) 2包 分2

向精神薬①か②を黄体期に服用する(選択的セロトニン再取り込み阻害薬:SSRI)
①塩酸パロキセチン水和物(パキシル錠10mg) 1-4錠 分1 夕食後
②マレイン酸フルボキサミン(デプロメール錠25mg) 1-2錠 分1-2 

抗不安剤 ①か②を選択
①アルプラゾラム(ソラナックス0.4mg錠) 2-3錠 分2-3
②エチゾラム(デパス錠0.5mg) 3-6錠 分3

ホルモン療法①から③のいずれか
①エチニルエストラジオール配合経口避妊薬(トリキュラー28錠)
②エチニルエストラジオール配合経口避妊薬(オーソM-21錠)
③エチニルエストラジオール配合経口避妊薬(マーベロン21錠)
1錠 分1 21錠型は終了後7日間の休薬期間を設ける


月経前症候群:premenstrual syndrome(PMS)   月経前緊張症:premenstrual tention
エストロゲン:estrogen   プロゲステロン:progesterone



月経困難症dysmenorrhea 【機能性月経困難症・器質性月経困難症】


■原因:
月経困難症とは月経期間中に月経に伴って骨盤部の痛みなどを起こす病的症状のことを言います。 この病気は器質性(続発性:原因が臓器の異常など)と機能性(原発性:続発性に該当しない、機能上に問題があるもの)とに分類されていて、後者の機能性(原発性)月経困難症が全体の約75%を占めていて、女性の過半数が経験しています。

●器質性(続発性)月経困難症
原因としては骨盤内に器質性病変が認められ、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープ、骨盤内炎症などがあります。また子宮内避妊具の挿入が原因となる場合もあります。また一般に35歳くらいから始まり、月経前4~5日から月経後まで持続的な鈍痛などを経験します。

●機能性(原発性)月経困難症
では初経後2~3年から始まり、月経の1~2日の出血が多いときに、周期的に痙攣性の痛みが起こります。この原因は頸管狭小や過剰の*プロスタグランジンなどの化学物質が子宮筋を過度に収縮させてしまい、さらに子宮内が痛みに対して過敏になってしまうからです。

*プロスタグラジンPG:オータコイドの一種で、ある限られた細胞から別の細胞に局所的生理作用を発揮する物質で、局所ホルモンとも呼ばれています。オータコイドは他にアンギオテンシンやヒスタミンなどがあります。このプロスタグラジンは少量でも生理作用は高く様々な合成酵素が用いられています。



■症状:
下腹痛、腰痛、腹部膨満感(ふくぶぼうまんかん)、嘔気(おうけ)、頭痛、疲労、脱力感、食欲不振、いらいら、下痢、憂鬱(ゆううつ)などであり、腰周辺の痛みだけでなく、様々な症状をしめします。



■診断・治療:
器質性(続発性)月経困難症ではそれぞれの原因となる部位の治療が必要です。
以下に処方例を取り上げます。

機能性(原発性)月経困難症の処方例:
鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬):①、②のいずれかを用いる
①プロピオン酸:ロキソプロフェンナトリウム(ロキソニン錠 60mg) 3錠 分3
②アリール酢酸:ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン坐薬 25.50mg) 1回1個 頓用

鎮痙薬(4級アンモニウム塩合成抗コリン薬):
臭化ブチルスコポラミン(ブスコパン錠 10mg) 3錠 分3
精神安定薬(ベンゾジアゼピン系抗不安薬):
エチゾラム(デパス錠0.5mg) 3錠 分3
経口避妊薬(卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合剤):
ノルゲストレル・エチニルエストラジオール(ドオルトン錠) 1錠 分1
月経周期第5日目より3週間連続投与


月経困難症:dysmenorrhea  器質性:organic  続発性:consecutive  機能性:functional  原発性:primary
プロスタグランジン:prostaglandin(PG)  子宮:uterus  子宮内膜症:endometriosis  子宮筋腫:myoma of uterus
子宮腺筋症:adenomyosis uteri  子宮内膜ポリープ:endometrial polyp  下腹痛:hypogastralgia  腰痛:lumbago 
腹部膨満感:abdominal distention・abdominal fullness  頭痛:headache  疲労:lassitude  脱力感:weakness
食欲不振:loss of appetite   下痢:diarrhea   憂鬱:dreariness オータコイド:autacoid,autacoids



無月経(むげっけい):amenorrhea(Am)


■原因・症状:
排卵に重要かつ必要な組織である視床下部、下垂体、卵巣、更に子宮などに障害や不全が見られたり処女膜や膣の閉鎖などによって無月経になります。それで排卵障害は障害部位に応じて視床下部性、下垂体性、卵巣性というふうに分類されます。

また無月経に関しては次のように分類されます。
・原発性無月経:染色体異常(ターナー症候群:X染色体が1本欠損)、子宮や卵管などの発達などに問題がある先天異常、その他(上記)が原因で18歳までに生理(月経)が始まらない(初潮を迎えない)。
・続発性無月経:初潮以後3ヶ月以上生理が停止している。(妊娠中、授乳期、閉経後を除く) これは排卵機能が障害されてしまうと起こりますが、それは腫瘍や自己免疫疾患、一部の薬の使用、極端な自己流ダイエット、ボディビルダーのための過度な筋力トレーニングに起因している場合もあります。

・第1度無月経:卵胞よりエストロゲン(卵胞ホルモン:女性ホルモン)の分泌がある程度認め られ、ゲスターゲン(黄体ホルモン)投与によって消退出血がある。
・第二度無月経:ゲスターゲン投与によっても消退出血がなく、エストロゲン-ゲスターゲン投与によって消退出血が認められた場合。
・子宮性無月経:上記の方法によっても消退出血が認められない場合。
【消退出血】血中のエストロゲンとプロゲステロンの両者か片方の濃度が減少した際に生じる子宮からの出血のことで、子宮内膜が剥脱して血液と共に体外に排出される。



■診断:
基礎体温、超音波、黄体ホルモン測定で、排卵の有無の診断をします。

LH:luteinizing hormone(黄体化ホルモン)
FSH:Follicle-stimulating Hormone(卵胞刺激ホルモン)
PRLprolactin(プロラクチン:乳腺刺激ホルモンの一種) の各測定。
LH-RH(LH-releasing hormone:LH放出ホルモン)負荷試験
(視床下部から分泌されるLH放出ホルモンを静脈注射してから、 15分と30分後、若しくは30分と60分後の2度採血して 基礎値と反応値から診断。これにより排卵に関係している組織の 障害部位を確定出来ます。)



■治療:
ターナー症候群など染色体に異常がある場合には治療の方法はありません。
●原発性無月経
・性腺の形成異常:処方例
結合型エストロゲン(プレマリン錠0.625mg) 1錠 分1 20日間   消退出血開始5日目より投与
酢酸クロルマジノン(ルトラール錠 2mg) 2錠 分2 10日間 プレマリン投与開始後11日目より投与

・子宮、膣の発生異常:
膣欠損では造腟術、処女膜閉鎖、膣中隔では外科的解放術。

●続発性無月経
【挙児希望がない場合】
・第1度無月経:処方例 ①か②のいずれかを用いる
ジドロゲステロン(デュファストン 5mg) 2錠 分2 7日間
酢酸クロルマジノン(ルトラール錠 2mg) 2錠 分2 7日間  消退出血20日目より7日間投与(3周期)

・第2度無月経:処方例
結合型エストロゲン(プレマリン錠0.625mg) 1錠 分1 20日間 消退出血開始5日目より投与
酢酸クロルマジノン(ルトラール錠 2mg) 2錠 分2 10日間 プレマリン投与開始後11日目より投与

【挙児希望がある場合】
・第1度無月経:処方例
クエン酸クロミフェン(クロミッド錠 50mg) 1-3錠 分1-3 5日間
消退出血開始3-5日より5日間投与。無効時に最大150mg/日まで増量

●高プロラクチン血症:処方例(①か②を選択投与)
①テルグリド(テルロン錠0.5mg) 1-2錠 分1-2 
②カベルゴリン(カバサール錠0.25mg) 1-3錠 分1-3 0.25mgから開始し、血中プロラクチンを 正常に維持する量を1週に1回投与

●黄体機能不全:処方例(①-④のひとつを選択)
①酢酸クロルマジノン(ルトラール錠 2mg) 4錠 分2 排卵後2-3日より10日間投与
②ジドロゲステロン(デュファストン 5mg) 3錠 分3 排卵後2-3日より10日間投与
③HCG注(3,000単位) 1回 3,000単位 排卵後2-3日おきに2回筋注
④プロゲステロン(プロゲストン注50mg) 1回50mg 排卵後2-3日より10日間 連日


無月経:amenorrhea(Am)   排卵:ovulation   視床下部:hypothalamus   下垂体:hypophysis cerebri
原発性:primary    続発性:consecutive   染色体異常:chromosomal abnormality   卵巣:ovary   子宮:uterus
処女膜:hymen   膣:vagina   エストロゲン:estrogen    プロゲステロン:progesterone   消退出血:withdrawal bleeding
子宮内膜:endometrium   黄体ホルモン:corpus luteum hormone


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