【家庭の医学】総合目録
突発性内耳障害:突発性難聴・加齢性難聴・鼓膜炎
●「突発性難聴」と「突発難聴」との区別や分類が多少曖昧ですが、過去に区別されていた範囲で記述します。

■突発性難聴
慢性難聴とは異なり、突然数時間以内に進行する高度の感音難聴で、米国では毎年5000人に1人の割合で起こり、日本では毎年5,000人程度の発症があると推定されています。原因は、骨折など頭部外傷や内耳の蝸牛を侵す出血などや、極限の激しい筋肉運動などにより内耳と外耳との間に外リンパ瘻が起こる事があります。30-60歳に多いとされてきましたが、生活行動の変化の影響からか若年層にも増えつつあります。

感染性の原因としては麻疹や流行性耳下腺炎などがあり、インフルエンザ、咽喉を冒すアデノウイルスなどがあります。

■突発難聴
突発性難聴ほど進行の早くないものも含まれると考えてください。この病気の範囲を広げると、年間3万人を越える発症があると推測されています。原因として以下のものがあります
①ムンプスウイルスや帯状疱疹ウイルスなどによるウイルス感染、細菌感染
②強大音曝露による音響外傷(爆音やスピーカ、ヘッドセットの大音量での長時間の音楽鑑賞)
これは騒音難聴及び急性感音難聴の原因のひとつとされています。
③外リンパ廔(内耳に満たされている外リンパが中耳に漏れ出る疾患)
④外傷や薬による内耳血流障害     ⑤アレルギー
⑥ストレスの蓄積、不眠、睡眠不足などがあります。
  • ■症状:
     片方の耳に起こるいわゆる片側性の疾患で、24時間以内に急激に発症するため 患者本人が聞こえにくくなった時や状況、場所のことを鮮明に覚えている場合が多くあります。

    また耳鳴りや耳閉感や時に眩暈(めまい)も生じる場合がありますが、 メニエールのように眩暈や難聴発作が反復して起こることはないとされてはいますが症状には個人差があります。
■診断:
 基本的には病歴と純音聴力検査などをおこない、更に問診などで心因性難聴も考えられる場合、聴性脳幹反応検査*なども行います。 心因性のものは小児ばかりでなく、中間管理職など働き盛りの年齢の人にも増える傾向があります。 この疾患全体としても高齢者のものではなく、30代の女性にも多くみられます。
*聴性脳幹反応検査:頭皮上に電極を置いて音刺激を加えた時に示す、波形状にした脳幹聴性誘発電位変動を検査すること。

 原因が明らかでないか見落としていないかしっかり診断をうけなければなりません。 聴神経腫瘍があっても、同様の症状を示しますのでその時は画像診断なども行って鑑別をすることが必要です。またヒトの可聴音域は20Hz(ヘルツ)から20kHz(キロヘルツ)ですが、2kHz(キロヘルツ)以上の高音域では聴力が正常な低音障害型感音性難聴もありますが、治癒後の再発率が高くメニエール病に移行する場合も多く報告されています。

 片側性の疾患で片耳は正常であることから、一人暮らしの人や主婦などが家で一人で居る時間が多い場合に気づくのが遅れる場合もあり、また気づいてもそのまま様子を見ている内に症状が悪化する場合も多くありますので、片方の耳が聞こえづらくなったと感じたら、先ず耳鼻科に行って聴力検査をすることが大切です。
■治療:
 治療は発症してから2週間以内(できるだけ早く)に 治療(特に薬による)を始める事が大切です。 原因が不明であっても、症状の緩和や障害の進行を抑制する効果があります。 また、最近の傾向ではストレスや睡眠不足が関係している場合が多く ありますので、発症したら直ぐ安静にし、ストレスの原因となるものから離れている事も重要です。

 治療の効果に関しては完治する場合とある程度回復する場合と全く治らない場合の三通りがあり、その三者が概ね同じ割合で生じています。
【突発性難聴の処方例】:
■内服療法(下記を併用します)
プレドニゾロン(プレドニン錠5mg) 6錠 分3 一週間後漸減する。
アデノシン三リン酸二ナトリウム(アデホスコーワ顆粒10%) 300mg 分3
メコバラミン(メチコバール錠500μg) 3錠 分3
テプレノンカプセル50mg「トーワ」・セルベックスカプセル50mg 3カプセル 分3

■点滴療法(下記を併用します)
ヒドロコルチゾンコハク酸ナトリウム(ソル・コーテフ静注用500mg) 1回500mg
アルプロスタジル(注射用プロスタンディン500 500μg) 1回60μg

【急性低音障害型感音難聴の処方例】:
内リンパ水腫の軽快を目的として、イソソルビド浸透圧利尿剤が適応されます。
イソバイドシロップ700mg/mL 90mL 分3

■加齢性難聴:有毛細胞の劣化による
加齢による老化現象で、特に内耳の機能低下が原因となります。内耳には蝸牛(管)という組織があり、(蝸牛そのものはカタツムリの意で形状が似ていることからそう呼ばれる)その内部の有毛細胞が、あぶみ骨から届いた音の振動を受信して脳に伝達させます。

■症状:
そのシステムが弱まり、外耳に一番近い高音を聴き取る有毛細胞から老化が始まるために 高い音から聞こえにくくなり始めるという特徴があります。またこの現象は左右両耳同時に 起きるのが普通で、非可逆的で再生不可能ですから予防が重要で、悪化させる原因を掴んでおく事も大切です。

■治療と予防:
現在のところ、効果的な治療は期待出来ません。わかることは病気の要因として糖尿病、動脈硬化、高血圧、脂質異常症があり、血流障害の影響が大きいことがわかります。また喫煙により酸化ストレスを起こし正常な組織を壊していきます。更に飲酒、騒音などがあります。

それで生活習慣病に罹らないよう、有酸素運動を取り入れた食生活の維持や改善が望まれています。 また、難聴になり、必要な音声が聞こえにくくなった場合補聴器が有効で、補聴器を使わずに人の声が聞こえにくい状態で日々を過ごすと認知症に罹るリスクが高まります。

また、40歳前後の加齢前に発症しその後難聴を自覚する場合は遺伝性難聴 の可能性がありますので、難聴の遺伝子検査(保険適用)を受診することが望まれます。

●人工内耳埋め込み(装着)術:
その後、健康を維持するためにも補聴器もしくはそれに加えて一部埋め込み型の人工内耳の手術があります。人工内耳の場合、一般的なイヤホンと基本的に同じシステムの補聴器と異なり、聞こえにくい高音を蝸牛の有毛細胞に代わって電気信号を脳に伝達する働きをしますので、聞こえ具合はかなり改善されます。この人工内耳は低い音を拡大させる補聴器とセットで使用するシステムです。

  • 【和英医学用語】:
    めまい:vertigo
    聴力:hearing 聴力検査:hearing tests
    突発性難聴:sudden deafness
    片側性:unilateral メニエール:Meniere

    内耳障害:labyrinthine disorder 
    急性感音難聴:
    acute sensorineural hearing loss 
    聴性脳幹反応検査:
    auditory brain-stem response:ABR


鼓膜炎・外傷性鼓膜穿孔がいしょうせいこまくせんこう
耳の構造:耳介から半規管
鼓膜は外耳道と鼓室の間にあり、横径10mm縦径9mm程でほぼ円形の厚さ約0.1mm程度の薄い膜から出来ており、皮膚層、結合組織部分の固有層、粘膜層で構成されています。
●水疱性鼓膜炎:
■原因・症状:
急性鼓膜炎とも呼ばれていて、鼓膜表面に1個から数個の水疱が形成されるもので、内容液は血性や漿液性からなるものでウイルスや細菌による感染が原因とされています。 強い耳痛を訴える場合が多く、他にも耳閉塞感、耳鳴り、発熱、があり、感音難聴を伴う場合もあります。
■診断・治療:
耳鏡などで鼓膜表面を観察して容易に病態をつかめます。急性中耳炎と同様、抗生物質を投与します。水疱は切開して排液を行い鎮痛剤を投与します。
【処方例】以下を併用
アモキシシリン(サワシリン細粒 250mg) 3錠 分3
またはワイドシリン細粒40mg/kg 分3
リンデロン点眼・点耳・点鼻液0.1% 1回数滴 1日 2回
  • ●肉芽性鼓膜炎:
    ■原因・症状:
    鼓膜表面に肉芽やびらんが生じ、慢性化した病態で原因ははっきりしない場合が多いです。 慢性の耳漏が一般に見られます。また肉芽などの影響で鼓膜の肥厚が見られる場合は耳閉塞感、難聴をきたすこともあります。
    ■診断・治療:
    耳鏡等で観察し鼓膜表面のびらんや肉芽が確認できます。
    【処方例】
    びらんのみの場合、10%硝酸銀液や20%三塩化酢酸液でびらん病変部位を腐食させステロイド軟膏を塗布します。
●外傷性鼓膜穿孔:
■原因・症状:
直達性鼓膜穿孔では耳かき、綿棒その他での耳掃除、顔面部頭部に強い衝撃や打撃を被った時などで穿孔を生じたもの。介達性鼓膜穿孔では外耳道圧の急激な変化により生じたものとして区別されており、これは外耳道を含む頭部側面に手のひらやボクシンググローブで殴打された時など起こり得ます。
耳痛、耳出血、難聴、耳閉感などを起します。
■診断・治療:
耳鏡や聴力検査のほか、必要であればCT検査、MRI検査などを行います。 治療では自然閉塞を期待しつつ経過を見ながら感染予防的措置を行いますが1ヶ月から2ヶ月の間に自然閉塞の見込みがたたない場合やなんらかの合併症を起こす危険性が高ければ手術的治療に移ります。普通は鼓膜穿孔閉鎖術を行いますがそれでもうまく行かない場合は鼓室形成術を行います。
処方薬としてはセフェム系抗生物質のフロモックス錠100mgがあります。
【和英医学用語】:
鼓膜炎:myringitis 耳鏡:otoscope 難聴:hypacusia  耳閉感:stuffy ear
外傷性鼓膜穿孔:traumatic perforation of tympanic membrance
耳鳴:tinnitus  耳痛:otodynia  

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