手 術 悲 話

昨年、生まれて初めて骨折した。
といっても、左足親指の第一関節が少し割れた程度なので大したことはない。
「ギプスで固定して自然治癒を待つか、手術する方法もあります。どうしますか?」と医者。
医学の素人に判断を迫られても困るよなあ。元に戻ればどっちだっていい。
「先生ならどうしますか?」
「うーん、私なら(手術)しないかな」
「じゃあしません」
ギプスをしてその日は帰った。
翌週再び患部のレントゲン写真を撮ると、くっつくどころか逆に骨が離れてるじゃないか。
医者もバツが悪そうだ。
すぐに知り合いの医者に電話し、紹介状も書いてくれた。
「明後日♥♥病院に行ってください」
あそこの整形外科は待ち時間が長いから行きたくないんだよなあ。
でも行きましたよ、朝8時にね。
それから待合室、診察室、放射線室・・・を往復するうち午後も遅い時間になっていた。
「今日手術します。執刀するのは他の先生ですけどね」と若い医者。
「えっ、今日やるんですか。いくらかかるんですか?ひょっとして10万とか」
「いや、そんなには」
「2万円で足りますよ」とベテラン看護婦。
安くて良かった。
その後、血液検査や何やかやで、手術室に入ったときは19時を過ぎていた。
しかし今度は執刀医が来ない。手術台の上で待たされるのも変な気分だ。
術中に患部が見えないよう、2人のアシスタントが私の腰の辺りに幕を下ろしている。
「手術は初めてですか?緊張されてると思いますけど・・・」
「大丈夫です、全然してません」
20分くらい経って、「ごめん、ごめん」とか言いながら先生登場。
「じゃ、麻酔しますよ」
今回は局所麻酔だ。注射器のお化けみたいなやつが親指にブスリと刺さる。
「ウウウ」
「もう1本打ちますよ」
「グググ」
歯医者の麻酔と同じって聞いてたから、完全に油断してた。成分の話だったのね。
徐々に左足の感覚がなくなっていく。医者もそれを確かめている。
「もういいかな」
いよいよ始まるのか。どれくらいかかるんだろう。早く終わらないかな。
今回は親指にピン(鋼線)を入れて骨を固定する定番の石黒法だ。
ウィーン ガリガリガリ 
ドライバーの嫌な音がする。何だか歯医者に似てるな
振動は伝わるが、麻酔のおかげで痛くも痒くも・・・・・イ、イタイ!
何だよこれ、麻酔したんじゃないのか。ダメだ、とても我慢できない。
「先生、痛いです」
「えっ、これ痛い?」
1回ドライバーを止めて、再びトライする。
ガリガリガリ
「ウアーッ」
「これじゃオペできないよ」
ここまでやってそりゃないぜ。
「おーい、麻酔もう1本追加だ」
ブスッ  痛くない
ガリガリガリ  痛くない
30分くらいでオペは終了。ピンが3本入った。
親指からそれが突き出てていて何だか気味悪い。
手術台を降りる前からもう患部が疼いてる。私は麻酔の効きが悪いのかな。
「佐藤さん、今日付き添いの方は」
「いません」
「どうやって帰りますか」
「バイクで」
「エーッ」