まさかの大逆転

 2006年は全部で119局記録を取ったが、好局・珍局が非常に少なかった。
近年にない不作で、これじゃあ「好プレー・珍プレー」のネタがない。
仕方がないので自分の将棋を引っ張り出すことにした。
 紹介するのは7月22、23日に箱根で行われた第2回東日本都市対抗戦の将棋。
わが「さいたま市」チームはガチガチにマークされていたはず。
なんたってディフェンディングチャンピオンですもんね。
でも前年とメンバーが6人も変わってるんだよなあ。
んー、ひょっとしたらノーマークだったかも。
 決勝トーナメント1回戦で当たったのは優勝候補の仙台市。
正真正銘の優勝候補vsノーマークのディフェンディングチャンピオン。
なかなかの好取組だ。
私の相手のOさんは宮城県代表に何度もなっている強豪。
慣れない角換わり棒銀なんかやったもんだから、早々に形勢を損ねた。
第1図は私が▲7五歩と突いたところ。
                   
ご覧のように形勢はボロボロで、ここでは「もうどうにでもしてくれ」の心境だった。
後でこの将棋を見た同室の浅井君(彼はこの大会5戦全勝で川口市の準優勝に貢献した)は
「銀成って、歩叩いて」と言う。
図から△5七銀成▲7四歩△7六歩(変化1図)だ。
さすがによく手が見えてますな。
                   
 Oさんは第1図で△7二香と打ったが、これが死に体の私を助け起こした。
 あまりの優勢につい手堅くという意識が働いたのかもしれない。
 すかさず▲4三金(第2図)とへばりついて形勢は急接近。
 後手陣は相当味の悪い格好をしている。
 まあ調べればまだ負けだろうが、それまでが悪すぎたので俄然やる気がでてきた。
                 
 だいぶ進んで第3図。
 いま▲7九香と打って△7六桂を防いだところ。
                 
 ここで△7八歩▲同香△7七歩▲同香△7八歩(変化2図)なら、詰めろが振りほどけそうにない。
最初の△7八歩が詰めろかどうか怪しいが、実戦なら多分▲同香と取っただろう。
「せっかくここまで挽回したのに」と内心ションボリしていた。
                 
 実戦は第3図で△3三歩だったため▲4五桂と打って逆転の手ごたえを感じた。
投了図が最後の局面。
以下△3四玉と逃げても▲3八飛で駒をボロボロ取れる。
あんなソッポにいた成香が詰みに一役買うとは、まさに勝ち将棋鬼の如し。
                 
 個人戦ならとっくに投げている将棋を、普段はやらないク〇粘りで逆転勝ち。
きっとチームも4−3で勝ち、私は一躍さいたま市のヒーローに・・・・・
で、隣の松本誠君に聞いてみた。
「どうなった?」
「2−5です」
やっぱりね。