ジュニアの終盤2

 今年の支部対抗戦東地区大会から。
埼玉代表のさいたまドラの穴支部(川上岳男、渡部壮大、原司)は予選を2連勝で通過し
決勝トーナメント1回戦で岡谷将棋道場支部(長野)と当たった。
ぼんやり観戦していると、原君(早稲田中2年)のところだけやけに進行が早い。
局面は第1図になっていた。
              
 いま▲7一銀の王手に△9三玉と逃げたところだが、これは原君苦しい。
先手玉には△9七銀以下の詰めろが掛かかっていて後手玉は詰まない。
▲6八飛と質駒の金を入手しても駄目。
見れば見るほど、読めば読むほど絶望的に思えてくるし、実際そうだった。
原君の手もピタリと止まりここで大長考に入る。
河合さんはもう余裕しゃくしゃく。
相手の考慮中に席を外して軽く一服している
しかし「勝ったと思った瞬間が一番危ない」と誰かが言ってた
【第1図からの指し手】 ▲4三飛△8三桂(第2図)
              
▲4三飛の王手に△7三桂と懐広く合い駒すれば何でもなかった。
本譜△8三桂でも問題なさそうだが、原君はこの手を見て勝ったと思ったという。
この後の見事な詰め手順をしっかり読みきっていた。
【第2図からの指し手】 ▲6八飛△8九銀▲8七玉△7三銀打▲同飛成△同銀▲8二銀打
               △同銀▲同銀不成△同玉▲7二金△同玉▲6一銀(投了図)
              
 ▲8七玉に△6八成桂と飛車を取るのは、▲8二銀不成△同玉▲7三金(変化1図)
と詰め将棋のような順でぴったり詰んでいる。
河合さんもそれに気づいて△7三銀打としたが、▲同飛成以下原君は鮮やかに寄せた。
「この将棋負けるとは思わなかった」という河合さんの感想もごもっとも。
              
 やはり第2図の△8三桂が良くなかったということで感想戦はお開きになったが、後で
調べるとそれでもまだ後手が勝っていたようだ。
何気ない△8九銀の王手が実は敗着で、ここは△9七銀▲8七玉△8六銀成▲7八玉
△5六角▲8八玉△8七銀▲7九玉△6八成桂▲同玉△7七成銀▲5九玉△5七飛(変化
2図)以下これまた作ったような詰みがあった。
              
しかしこれを読みきるのはちょっと大変。
偉そうに書いている私だって将棋ソフトに調べさせたのだ。
後からなら何とでも言える。
この将棋をひっくり返した原君の終盤力に感心した次第。