アマ名人戦全国大会
【2012.9.8−10  五反田ゆうぽうと】


1 日 目
   今年のアマ名人戦全国大会は、9月8−10日に品川区西五反田のゆうぽうとで行われた。
  開会式で挨拶に立った田中寅彦常務理事が、遅刻した選手に苦言を呈する一幕があったが
  こういうのは珍しい。
  その場に選手がいないので後で注意すると言っていたが、どうなったんだろう。
  予選リーグは大きな波乱もなく、埼玉代表の清水上徹さんと遠藤正樹さんも無事に通過した。

      
2 日 目
   優勝候補の本命に挙げられていた清水上さんと今泉健司前名人が、決勝トーナメント1回戦
  で相次いで敗れ、レースが急に荒れ模様になった。
  遠藤さんも2回戦で高校竜王の高橋海渡君に敗れ、トーナメント表から県勢の名前が消えた。
  寂しいもんですな。

      

   3回戦の桐山隆−古作登戦がすごかった。
  1局目が118手で千日手になると、指し直し局が今度は持将棋模様。
  後手番で駒数有利の古作さんは、少し駒を取らせる間に入玉を急ぎ27点をがっちり確保する。
  審判が判定を下してもいい局面だったが、動きがないところを見ると宣言法で決着させるつもり
  のようだ。
  宣言法は失敗すると宣言した方が負けになる(これが怖い)ので、駒数の有利な方もできれば
  やりたくない。
  とりあえず駒損しないように指し続け、審判の判定もしくは相手の投了を待つのが常套手段
  だが、手数は延びれど一向にその気配はない。
  古作さんは敵陣にと金を量産してから小声で駒数を何度も確認し、自分の手番のときに意を
  決して宣言した。
  連盟の石橋さんが、大会パンフレットに記載されている宣言法の条件1〜5を全て満たしている
  ことを確認し、長い戦いがようやく終わった。
  手数273手。1局目と合わせると391手。お2人ともお疲れさまでした。
  この日の最終戦だったので、大会の進行にも影響はなかった。

                   

                       宣言法の条件を確認しているところ

  
試合後、記録係の少年が控室に来て、記録用紙の最後をどう書けばいいか質問している。
  プロの対局ではあり得ないので無理もない。
  「”宣言法により後手の勝ち”でいいよ」と石橋さん。

  記者は宣言法で勝負がついた場面を初めて見た。
  しかしこのルール、お世辞にもスマートとはいえない。
  当初導入の理由は「点数が足りない方が入玉せず、玉を中段でウロウロさせてなかなか投了
  しないようなケースを防ぐため」ということらしいが、ならばそういうレアケースにのみ適用し
  相入玉の場合は27点法で審判が判定すればいいのではなかろうか。
  点数が足りない方は相手の宣言ミスを期待してますます投了しなくなり、かえって試合時間が
  長くなっているように思える。
  ”さっさと宣言すればよい”というのは当事者には酷な話で、30秒将棋のさなか次の指し手を
  考えながら5つの条件を全て確認するのはかなりの難作業だ。
  「1つでも条件を満たしていなかった場合、宣言した方が負けとなる」の一文がなければ選手も
  やりやすくなるだろう。
  まあ記者の誤解もあるかもしれないので、あくまでも独り言である。
3 日 目
   月曜日は観戦者も少ない。
  昨日までここにいた選手たちは、祭りの余韻から覚めそれぞれの日常に戻っているのだろう。
  今年はNHKの収録がないので、機材や人の出入りもなくひっそりとしている。
  決勝戦が中盤に差し掛かる頃、観戦記担当の塚田泰明九段が控室に姿を見せた。
  先生のご高説を伺いたかったが、早々と形勢が傾いてしまい検討もいま一つ盛り上がらない。
  愚問を承知で形勢判断をお願いしたが、「どう見てもそっち(早咲さん)がいいですよね。
  どうしてこうなっちゃったんですか」でお終い。
  将棋もそのまま早咲さんが押し切り、10年ぶり4回目の優勝を飾っている。
  この日は早咲さん39歳の誕生日だった。
  今回はNHKの特番がない代わりに、10月21、28日の将棋フォーカスで特集「激闘!
  アマ名人戦〜前・後編〜」が放送される。
  なぜそういうことになったか詳細は知らぬが、ファンの1人として特番の復活を望みたい。