禁 煙 談 義

 私が学生だった昭和50年代は、将棋大会の会場には白い煙がもうもうと立ち込めていた。
当時は選手にも運営サイドにも「禁煙」という意識はほとんどなかった。
子供の頃からそういう環境にすっかり慣れてはいたが、家に帰るとタバコを吸わない両親から
「うわっ臭い」と言われるのがちょっと嫌だった。
 さすがに今はほとんどの大会で「場内禁煙」になっているが、県北の地区予選などでは未だに
喫煙OKのままだ。
しかし小中学生の前で大人が有害なタバコを吸いながら対局しているのは、見ていてあまり気分
の良いものではない。
県北の担当者には是非再考をお願いしたい。
 日本と違い欧米ではタバコに関する規制は厳しく、喫煙どころかCMもままならない状況だ。
私が参加したアメリカのチェス大会でも当然ながら場内は禁煙。
大会を運営するディレクターに「すいません、喫煙エリアどこですか」と聞くと、「知らないよ!
外で吸ってこい」と怒られてしまった。
 またカーレースの最高峰F1にもその余波は広がっており、名コースとして名高いスパ・フラン
コルシャン(ベルギーグランプリ)の開催が今年は中止された。
ベルギー政府のタバコ広告規制強化法でスポンサーが下りてしまったためらしい。
まあ、来年はまた復活するようだが。
 さて、気になるプロの将棋界では一体どうなのか。
青野八段がNHK将棋講座のテキストに連載している「将棋よもやま話」によれば、今年になって
「対局室は禁煙、喫煙は対局室の入り口で」ということが決まりかけていたらしい。
ところが棋士全員に諮るとそうはいかなかった。
4月の棋士会で鈴木大介八段から「タバコを吸う人がいるのに、無理に禁煙にするのは勝負
としてフェアではない」という意見があり、これに納得してしまうのが勝負師の性とのこと。
うーん、非喫煙者の迷惑を全く考えない一方的な意見のようにも聞こえるが、まあいかにも千駄
ヶ谷らしい話ではある。
 私も今日で禁煙2日目。
たいして苦痛でもないのでこのまま止められそうな気がする。