埼玉棋界昔話(クレーム)

 昭和53年頃、私の地元の上福岡で県大会が行われたことがある。
何の大会だったか忘れたが、確か準決勝だった。
対局者はAさんとBさん。
局面はAさんが優勢だった。
ところがこのAさん、やけに駒離れが悪いのだ。
指した後でしつこいくらい駒をチョンチョン触る。
見ている私もイライラしたが、Bさんにしてみればはなおさらだろう。
Bさんついにたまりかねて
「恐れ入りますが、これ(駒のチョンチョン)は止めて下さいね」
Aさん恐縮した様子で「あっ、失礼しました」
ところが次の手を指すとまたチョンチョン。
「うわっ、いけない。どうも癖になってるね」
 さすがにその後チョンチョンはなくなったが、見るからに指しづらそうだ。
すっかりペースを乱したAさんは悪手を続け、Bさんの大逆転勝ちとなった。
敗れたAさんは「うーん、どこで(勝ちを)逃したかなー」と言いながらも、
さして悔しそうではなかった。
準決勝で苦しんだBさんだったが、次の決勝は完勝。
あのとき思い切ってクレームつけたのが勝因かもしれない。


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