埼玉棋界昔話(トラブル)

 たしか昭和55年頃だったと思う、熊谷の「エンゼル」で県大会をやっていたとき
ちょっとしたトラブルがあった。
どうも対局者が待ったをしたらしいのだ。
 元奨励会 「指が離れましたよ」
 強豪氏 「離れてないよ!」
 元奨励会 「離れてなければ僕がこんなにクレームつけるはずないでしょ」
 強豪氏 「いや俺はこうやって・・・・・」
 元奨励会 「違いますよ!」
その後、延々と同じやりとりが続いたが、誰も現場を見ていないので口が出せない。
とうとう強豪氏が音を上げた。
 強豪氏 「ああ、わかったよ!もういいよ」
結局その勝負は強豪氏の反則負けとなった。
嫌な沈黙が流れた。しばらくして元奨励会氏が言った。
 「今度こういうことがあったら振り駒で決めましょうよ」
これがまた強豪氏の怒りに火をつけた。
 強豪氏 「もういいって言ってるだろ!」
 強豪B氏 「いずれにしろ将棋は楽しく指したいものですな」
 観戦記者 「彼も奨励会にいたからそういうことには厳しいんじゃないの」
 強豪B氏 「奨励会って言ったって2、3級でしょう」
実際、強豪氏の指は駒から離れていたのだと思う。
もしそうなら元奨励会氏のとった態度は決して間違っていないし、強豪氏の
マナーもほめられたものではない。
しかしこの元奨励会氏、普段から生意気な言動が多かったらしく、誰も肩を持つ
人はいなかった。
 私はまだ高校生だったが、実に後味の悪い争いだった。
その後この両者が大会に参加することはなかった。
皆さんも大会で「待った」やそれに類する行為だけはしないようにして下さい。