--------------------------
前回までのあらすじ
たまねぎの入れてある箱から生まれたたまねぎ太郎と
コック見習として働いている鈴木が
銀行強盗に人質として車でさらわれた。
--------------------------
強盗>
よーし!
ここまで来たらもう大丈夫だろう。
警察も追ってきていないようだしな。
お前ら!
ここで降りろ!
たまねぎ太郎>
え?
降りていいんですか?
強盗>
ああ、降りていいよ。
それから俺たちのことを警察にしゃべったりするなよ。
鈴木>
そんなこと言われても、覆面してて顔なんか
さっぱりわかんないのに
警察にいったい何を言うっていうんでやんすか。
たまねぎ太郎>
ばか!
鈴木!
変なこというな!
強盗>
はっはっは!
そうだな。
覆面しているから何を言われても大丈夫だよな。
さぁ、早く降りろ。
たまねぎ太郎>
はい。
鈴木>
へい。
強盗>
じゃーな。
(遠ざかっていく車)
たまねぎ太郎>
・・・
鈴木>
・・・
たまねぎ太郎>
なんか助かったみたいだな。
鈴木>
へい。
そうでやんすね。
しかしここはどこなんでやんしょうね。
真っ暗で何もわからないでやんすよ。
たまねぎ太郎>
そうだな。
山の中にある道路であることは間違いなさそうだけどな。
鈴木>
そうでやんすね。
たまねぎ太郎>
とりあえずはこの道をくだっていってみるしかないか。
そしてもし車が走ってきたら事情を説明して
乗せていってもらうことにしようか。
鈴木>
へい。
そうでやんすね。
そうしやしょう。
たまねぎ太郎>
じゃあ、行こうか。
鈴木>
へい。
たまねぎ太郎>
・・・
鈴木>
・・・
(10分経過)
たまねぎ太郎>
なぁ、鈴木。
鈴木>
へい。
たまねぎ太郎>
車、全然通らないな。
鈴木>
へい。
そうでやんすね。
たまねぎ太郎>
・・・
鈴木>
・・・
(10分経過)
たまねぎ太郎>
なぁ、鈴木。
鈴木>
へい。
たまねぎ太郎>
なんか二人で黙って歩いているのはちょっと寂しいな。
何かやりながら歩かないか。
鈴木>
それはグッドアイデアでやんすね。
で、何をやるでやんす?
たまねぎ太郎>
うーん。
じゃあしりとりなんかどうかな。
鈴木>
いいでやんすね。
やりやしょう。
たまねぎ太郎>
じゃあ、俺からな。
しりとりのり。
鈴木>
しりとりのり?
何でやんすか?
しりとりのりって。
味付けのりみたいなもんでやんすか?
たまねぎ太郎>
違うよ!
しりとりのり!
りから始まるものを言えっていうのを強調してるんだよ!
鈴木>
別に強調はいらないでやんすよ。
しりとりって言ってくれればわかるでやんすよ。
たまねぎ太郎>
しりとりのりとしりとりのりは
イントネーションが違うから、わかるだろ!
鈴木>
わかりづらいでやんす。
たまねぎ太郎>
ああ、はいはい。
わかったよ。
じゃあしりとり、な。
鈴木>
しりとりな?
それは野沢菜みたいな
たまねぎ太郎>
しりとり!
しりとり!
りー!
鈴木>
ん?
盗塁中でやんすか?
たまねぎ太郎>
それは「リーリー」だろ!
もういいよ!
しりとりはやめだ!
鈴木>
あれ?
やめちゃうでやんすか?
じゃあ次は何をやるでやんすか?
たまねぎ太郎>
もういいよ!
何もやんねーよ!
黙って歩け!
鈴木>
へい。
わかりやした。
たまねぎ太郎>
・・・
鈴木>
・・・
(10分経過)
たまねぎ太郎>
おや。
何か家の明かりっぽいのが見えてきたぞ。
鈴木>
そうでやんすね。
たまねぎ太郎>
よし!
行ってみよう!
・・・
たまねぎ太郎>
おい!
山中旅館って書いてあるぞ!
鈴木>
そうでやんすね。
たまねぎ太郎>
よし!
行ってみよう!
鈴木>
へい。
・・・
たまねぎ太郎>
すいませーん。
・・・
聞こえないのかな。
すいませーん。
旅館の主人>
はい。
いらっしゃいませ。
たまねぎ太郎>
あのー、ここに泊めてもらえませんか?
旅館の主人>
はい。
ご予約のほうは?
たまねぎ太郎>
予約はしてないんですよ。
旅館の主人>
さようですか。
では二名様のご宿泊ということでよろしいでしょうか?
鈴木>
タロさん、タロさん。
たまねぎ太郎>
なんだよ。
人をタモさんみたいに呼ぶなよ。
鈴木>
何で普通に泊まる交渉とかしてるんでやんすか。
あっしたちは、お金は1円も持ってないから泊まれないでやんすよ。
まずはあっしたちの困ってる事情を説明するでやんすよ。
たまねぎ太郎>
そうだな。
よし。
まずは事情を説明するか。
鈴木>
へい。
たまねぎ太郎>
あのー、
旅館の主人>
はい。
たまねぎ太郎>
実はですね、私たちは今日、銀行強盗にあったんですよ。
旅館の主人>
銀行強盗・・・ですか?
ああ。
もしかしたらテレビでやってた大阪での事件のことですか?
たまねぎ太郎>
そうそう!
たぶん、それ!
でね、私たち二人はね、その銀行強盗に人質として
連れていかれちゃってね、ここからちょっと山に登った
ところで解放されたんですよ。
旅館の主人>
あ、そうなんですか。
うーん。
でも変ですねー。
たまねぎ太郎>
え?
何が?
旅館の主人>
テレビのニュースでは人質がいたとは言ってなかったですよ。
たまねぎ太郎>
ま、まじで?
旅館の主人>
はぁ。
たまねぎ太郎>
さては船長たちめ、
俺たちを見捨てていきやがったな。
鈴木>
タロ、タロ。
たまねぎ太郎>
なんだよ。
人を飼い犬みたいに呼ぶなよ。
鈴木>
もしかしたら人質の安否を気づかって
テレビでは人質のことについて
触れていないのかもしれませんよ。
たまねぎ太郎>
あ、なるほど。
そうかそうか。
あのー、ご主人。
旅館の主人>
はい?
たまねぎ太郎>
ちょっと警察に電話して
人質について確認してもらえます?
旅館の主人>
はぁ。
ではしばらくお待ちくださいね。
・・・はい・・・はい・・・あ、そうですか・・・
はい・・・はい、わかりました。
失礼します。
たまねぎ太郎>
なんだって?
旅館の主人>
やっぱり人質はいないって言ってます。
たまねぎ太郎>
ね、人質はいるって言ってる、
人質はいないってー?
鈴木>
やっぱり船長たちに見捨てられたんでやんすね・・・。
たまねぎ太郎>
そうだな。
ちっくしょう!
船長のやつめ!
よーし!
こうなったら船長に文句言いに行くぞ!
鈴木>
へい。
それはいいでやんすけど、船長たちは大阪にいるでやんすよ。
たまねぎ太郎>
そんなことはわかってるよ。
鈴木>
ここは大阪じゃないでやんすよ。
たまねぎ太郎>
だからそんなことはわかって・・・え?
ここは大阪じゃないの?
鈴木>
銀行強盗にあったのが午前中で
今は夜で、その間ずーっと車で移動してたんで
いくらなんでも大阪ってことはないと思うでやんすよ。
たまねぎ太郎>
なるほど。
そうだな。
じゃあここはどこなんだろう。
ねー、ご主人。
ここはどこですか?
旅館の主人>
ここですか?
ここは箱根ですよ。
たまねぎ太郎>
箱根?
うわー、遠いじゃん。
歩いていくわけにはいかないじゃん。
鈴木>
そうでやんすねー。
となるとあっし達は一文無しなんで、
ヒッチハイクでいくしかないでやんすねー。
たまねぎ太郎>
そうだな。
よし!
ヒッチハイクで大阪を目指すぞ!
そうと決まれば出発だ!
鈴木>
ロさん、ロさん。
たまねぎ太郎>
なんだよ!
名前を省略しすぎだよ!
人を呂明賜みたいに呼ぶなよ!
って、呂明賜なんて今時だれもしらねーよ!
鈴木>
お腹が空いたからなんか食べたいでやんす。
たまねぎ太郎>
そうだなー。
朝から何も食べてないからな。
あのー、ご主人。
旅館の主人>
はい。
なんでしょうか。
たまねぎ太郎>
ということなんで、ご飯を食べさせてもらえませんか?
旅館の主人>
いやいやいやいや、
「ということなんで」
と言われましてもねー、
うちも商売ですからねー、
タダで食べさせてあげるわけにもいかないですねー。
たまねぎ太郎>
えー?
なんだよー。
冷たいなー。
こちとら困ってるじゃん。
ちょっとぐらい何か食わせてくれたっていいだろー?
旅館の主人>
いやー、そう言われましてもですねー。
老人>
待ちなー。
旅館の主人>
あ!
これはこれは昨日からうちにお泊りいただいている
日本で10本の指に入る大金持ちの大金持三さん!
老人>
話は途中から全部きかせてもらったよ。
たまねぎ太郎>
なんだよ、「途中から」て。
「最初から」じゃねーのかよ!
老人>
主人、
私がお金を出すからこの頭の可愛そうな人達に
食事をさせてやってくれないか。
たまねぎ太郎>
「頭の」は余計だよ!
旅館の主人>
はい。
大金さんがそうおっしゃられるのでしたら。
たまねぎ太郎>
え?
メシくわしてくれんの?
じいさん、ありがとう!
老人>
ただし、タダではないぞ。
たまねぎ太郎>
いやいや。
タダじゃないって言われても
俺たち1円も持ってないぜ?!
老人>
いや、お金をもらおうとは思っておらん。
お金のかわりに、ひとつわしの頼みを
聞いて欲しいんじゃがのう。
どうかのう。
たまねぎ太郎>
ああ、いいよ。
メシが食えるんだったら頼みの一つや二つくらい
聞いてあげるよ。
で、その頼みって何?
老人>
それはメシを食ってから言うことにするかの。
それでいいかの?
たまねぎ太郎>
ああ。
別にいいよ。
老人>
よし!
では交渉成立じゃ。
主人、ではこの二人に食事の準備をしてやってくれ。
旅館の主人>
はい。
わかりました。
では、こちらへどうぞ。
ということでメシを食えることになった二人であったが、
謎の大富豪の大金持三翁の頼みとは
いったい何なのでしょうか。
第2話に続く。