たまねぎ太郎>
あー、食った食った。
老人>
なかなかの食いっぷりじゃのう。
たまねぎ太郎>
まぁな。
今朝から何も食ってなかったからな。
じいさん、ありがとな!
じゃあ俺たちはこれで。
老人>
じゃあな!
ってこれこれ。
わしの頼みを聞いてくれる約束じゃろが。
たまねぎ太郎>
ちえっ!
覚えてたか。
すっかり忘れてるかと思ったのに。
カツラをつけるのは忘れてるくせによー。
老人>
これは別に忘れているわけではないわい!
もしカツラをつけていて、カツラをつけていることがばれると
そっちのほうがよっぽど恥ずかしい思いをするので
わしはあえてこのハゲ頭を丸出しで生活しておるのじゃ!
たまねぎ太郎>
わかった、わかったよ。
ハゲ頭のことはいいから早く頼みを言えよ!
まったく、うるさいなー。
老人>
お前がカツラを忘れているとかいうからじゃろ!!
このやろー!
メシを食ったと思ったら急に偉そうになりやがって。
たまねぎ太郎>
はいはい。
で、頼みは?
老人>
頼みか。
うむ。
その頼みなのじゃが、カツラを探してもらいたいのじゃ。
たまねぎ太郎>
つけてたんじゃん!!
なくしたんじゃん!!
老人>
ちっがーうよ!
たまねぎ太郎>
なんだ、その否定の仕方は!
ケント・デリカットかよ!
老人>
わしのじゃねーよ!
いや、わしのじゃけどわしのじゃねーよ!
たまねぎ太郎>
なに言ってんだよ、じーさん!
わけわかんねーよ!
落ち着いてしゃべれよ!
老人>
あーもう!
ちゃんと今から説明するから、黙って聞きなさい!
たまねぎ太郎>
わかったよ。
老人>
よし。
じゃあ説明するぞ。
鈴木>
おかわり。
女中>
はい。
かしこまりました。
老人>
ってー!!
こらー!!
そこはまだ食い終わってなかったのかよ!
鈴木>
へい。
すいやせん。
老人>
もー、しょうがないのう。
じゃあ食べてていいからちゃんと聞いてるんじゃぞ。
鈴木>
へい。
老人>
探して欲しいのは「一休さんのカツラ」じゃ。
たまねぎ太郎>
一休さんのカツラ?
老人>
そうじゃ。
一休さんのカツラじゃ。
たまねぎ太郎>
一休さんって、あのトンチでおなじみの一休さん?
老人>
そうじゃ。
トンチでおなじみの一休さんじゃ。
一休さんはトンチの天才じゃった。
そのトンチを生かし、民衆からかすめとった財宝は
現在の金額にしてなんと5千億!
たまねぎ太郎>
民衆からかすめとったって、そいつはトンチの天才というよりも
とんでもない天才詐欺師じゃん!
しかも5千億を民衆からて、
いったい何千万人の民衆からかすめとったんだよ!
老人>
で、そんなに財宝を持っていることが足利義満にばれると
全部とりあげられてしまう可能性があったので
一休さんはその財宝をとある場所に隠したのじゃ。
たまねぎ太郎>
なるほど。
老人>
そしてその隠し場所を書いた紙をカツラの裏側に貼り付けたのじゃ。
一休さんはそのカツラを死ぬまでつけて、絶対にはずさなかったので
誰にもその秘密がばれることはなかったのじゃ。
たまねぎ太郎>
えー?
一休さん、坊主のくせにカツラをつけてたの?
怪しさ満開じゃん!
周りの人間は馬鹿ばっかりかよ!
老人>
それが、カツラはカツラでもハゲヅラだったのじゃ。
なので周りの人間は誰一人として一休さんが
カツラをかぶっていることに気が付かなかったそうじゃ。
たまねぎ太郎>
なるほどねー。
元々ハゲの人間がわざわざハゲヅラをかぶるなんて
誰も思わないからねー。
老人>
そしてそのカツラは一休さんの子孫に、
代々受け継がれて今に至るのじゃ。
たまねぎ太郎>
ということはじいさんは一休さんの子孫なのか?
老人>
そうじゃ。
わしは一休さんの子孫の十六休じゃ。
たまねぎ太郎>
麦茶とか玄米茶とか、16種類のお茶が入ってるんだな。
老人>
それは十六茶じゃ!
わしは十六休じゃ!
鈴木>
あれ?
変でやんすね。
ここのご主人は「大金持三さん」って言ってたでやんすよ。
十六休じゃなかったでやんすよ。
老人>
本名は大金持三十六休というのじゃ。
たまねぎ太郎>
十六なのか三十六なのか、なんだかわかりづれー名前だなぁ、おい。
まぁ、名前のことはいいや。
じゃあ、そのカツラはどうやってなくなったのか話してきかせてよ。
老人>
うむ。
それは一週間前のことじゃった。
夜寝る前にはちゃんと枕もとの棚の上に飾ってあったのに
朝起きたらそれが消えていたのじゃ。
たまねぎ太郎>
ふむふむ。
するとじいさんが寝ている隙に
何者かが部屋に入ってきてカツラを盗んでいったんだな。
老人>
そうなのじゃ。
そうとしか思えないのじゃ。
しかしわしの家は警備がとても厳重で、誰にも見られないように
家に侵入するなんて全く考えられないし、
部屋には内側からしっかりと鍵がかかっておったのじゃ。
だからとても不思議なのじゃ。
たまねぎ太郎>
うーむ。
それは困ったねぇ。
鈴木>
あのー、その晩は何か変わったことはなかったでやんすか?
老人>
変わったこと?
そうじゃのー。
特に何もなかったがのう。
鈴木>
地震がなかったでやんすか?
老人>
おお!
そういえば軽い地震があったようじゃの。
わしは気付かないで寝ていたのじゃが。
朝起きたときに、お手伝いさんから地震があったことを聞いたわい。
鈴木>
やっぱりでやんすかー。
老人>
ん?
やっぱりとはどういうことじゃ?
鈴木>
大金持三さん、
頭の上を触ってみるでやんすよ。
老人>
ん?
頭の上を?
こういう風にか?
鈴木>
そうでやんす。
何か違和感を感じないでやんすか?
老人>
違和感、か?
うーむ。
そう言われてみればいつもより余計にツルツルしている気がするのう。
鈴木>
それ、ハゲヅラでやんすよ。
老人>
えっ?!
まーさかー。
そんなわけないじゃ・・・
あ!
ほんとじゃ!
こ、これじゃ!
これはハゲヅラじゃ!
い、いったいいつの間に!
鈴木>
地震でやんすよ。
地震で棚の上から落ちたハゲヅラが
頭にすっぽりとはまったんでやんすよ。
老人>
なるほどー。
そういうことじゃったのか。
しかしなぜそんなことがお主にわかったのじゃ。
鈴木>
あごひもでやんすよ。
老人>
あごひも?
鈴木>
ハゲヅラを固定するためのあごひもが大金持三さんのアゴにかかっているのが
見えてたでやんすよ。
老人>
おお!
なるほど!
しかし棚から落ちたハゲヅラが頭にはまるだけでも奇跡なのに、
あごひもまでかかるとは凄い奇跡じゃのう!
鈴木>
あっしに言わせれば、それに気付かない大金持三さんの存在のほうが
よっぽど奇跡でやんすけどね。
たまねぎ太郎>
じゃあさ、ハゲヅラが見つかったということで
せっかくだから宝を探しに行こうぜ!
老人>
それが探しに行きたいのはやまやまなんじゃがのう、
隠し場所は暗号で記されていて
どこに探しに行けばよいのかわからないのじゃ。
たまねぎ太郎>
暗号?
老人>
そうじゃ。
暗号なのじゃ。
トンチの天才の一休さんが考えた暗号なのじゃ。
とても難しくて、今までにその暗号を解いた先祖は
まだ一人もいないのじゃ。
たまねぎ太郎>
そうなんだ。
じゃあちょっと見せてくれよ。
この俺様が解いてやっからよ。
老人>
本当は誰にも見せたくないんじゃがのう。
でもまぁ、絶対に解けないだろうからいいか。
よし、見せてやろう。
たまねぎ太郎>
そうこなくちゃ。
老人>
ほれ、これじゃ。
たまねぎ太郎>
どれどれ。
------------------------------------------------
たきたんかたくじのてたんじょうたうらたにあるたよ
たぬき
------------------------------------------------
たまねぎ太郎>
うーん、なるほど。
確かに難しいなぁ。
老人>
じゃろ?
鈴木>
お前らバカだろ。
たまねぎ太郎>
だ、だ、だ、誰がバカだよ!
しかもなんだよその偉そうな言い方は!
鈴木>
こんなの簡単でやんすよ。
「たぬき」なんで「た」を抜いて読めばいいでやんすよ。
老人>
「た」を抜いて読む?
「た」を読まないようにすればよいのじゃな。
どれどれ。
き、ん、か、くじのて、んじょう、うら、にある、よ
金閣寺の天井裏にあるよ・・・
おお!
金閣寺の天井裏に隠してあるってことか!
たまねぎ太郎>
そうか!
一休さんは財宝を金閣寺の天井裏に隠したんだ!
なるほど!
金閣寺とは、いいところに隠したな。
足利義満も、まさか自分が建てさせた寺に隠してあるとは
思わなかっただろう。
よし!
じゃあさっそく取りに行こうぜ!
老人>
そうじゃの。
よし!
ではすぐにでも出発じゃ!
たまねぎ太郎>
おー!
鈴木>
ないでやんすよ。
たまねぎ太郎>
ん?
鈴木>
ないでやんすよ。
たまねぎ太郎>
ない、って、何が?
鈴木>
財宝でやんすよ。
たまねぎ太郎>
財宝がない?
いやいや、
金閣寺の天井裏にあるって。
鈴木>
知らないでやんすか?
金閣寺って火事で一回焼けちゃってるんでやんすよ。
たまねぎ太郎>
え?
まじで?
老人>
ああ、そうじゃの。
そう言われてみればそうじゃ。
たまねぎ太郎>
ということは、財宝も一緒に焼けちゃった、と。
鈴木>
そうでやんすね。
老人>
そういうことかのぉ。
鈴木>
・・・
たまねぎ太郎>
・・・
老人>
・・・
たまねぎ太郎>
じゃ、どうもごちそうさまでした。
またどこかでお会いしましょう。
老人>
さようなら。
鈴木>
さようならでやんす。
ということで旅館を後にする二人であった。
第3話に続く。