ベジタブルな放浪者第3話

たまねぎ太郎>
よし!腹もいっぱいになったし、ヒッチハイクで大阪を目指すとするか!

鈴木>
眠いでやんす。

たまねぎ太郎>
何?眠い?
ヒッチハイクできるまで我慢しろよ。
車に乗ったらいくらでも寝れるからさ。

鈴木>
そんなこと言っても、車、全く通らないでやんすよ。

たまねぎ太郎>
そうだよなぁ。
車、全く通らないよなぁ。
じゃあ今夜はヒッチハイクはあきらめて野宿でもして
明日に備えることにするか。

鈴木>
そうしやしょう。

たまねぎ太郎>
そうと決まれば寝床探しだな。
ちょっと歩いてみるか。

鈴木>
へい。


橋にさしかかる二人。
川岸を見ると、小屋らしきものが見える。


たまねぎ太郎>
おい。鈴木。見てみろよ。
そこの川岸にプレハブ小屋らしきものがあるぞ。
ちょっと行ってみようか。

鈴木>
へい。


プレハブ小屋に到着する二人。
扉を開けてみる。開く。


たまねぎ太郎>
お!扉が開くぞ。
しかも誰もいないようだな。


小屋の中を見回す二人。
小屋の中には漁の道具が散乱している。


たまねぎ太郎>
よし。ここで寝ることにしようか。

鈴木>
へい。そうしやしょう。


その辺に雑魚寝する二人。
いつの間にか二人は眠りにつく。
ふと、たまねぎ太郎が目を覚ます。


たまねぎ太郎>
おい!鈴木!
起きろ!

鈴木>
ん?何でやんすか?

たまねぎ太郎>
何かうるさくないか?

鈴木>
そういえばザーザーと凄い水音がしやすね。
雨でも降ってるんじゃないないでやんすか?

たまねぎ太郎>
それにしては水音が大きすぎないか?
ちょっとそこの窓から外を見てみてよ。

鈴木>
へい。


窓を開けて外を見る鈴木


鈴木>
あれ?
なんだか外の景色が動いているようでやんすよ。
おやおやー。
景色が動いているというよりも
自分たちが動いているみたいでやんすよー。

たまねぎ太郎>
な、なんやと!


窓の外を見るたまねぎ太郎


たまねぎ太郎>
うわっ!
ほんまや!
うちら、流されとるがな!
いつの間にやら雨が降ってきて川の水が増水して、小屋ごと流されとるがな!
どないしょ!

鈴木>
なんで関西弁なんでやんすか?

たまねぎ太郎>
おい!
鈴木!
大声を出せ!
窓から顔を出して助けを呼ぶんだ!
おーい!誰かー!

鈴木>
おーい!助けてくれでやんすよー!

たまねぎ太郎>
だめだな。
道らしきものが全くないから大声を出しても無駄だな。

鈴木>
橋にさしかかるときがチャンスでやんすよ。

たまねぎ太郎>
そうだな。
と言っていると橋が見えてきたぞ。

鈴木>
そうでやんすね。

たまねぎ太郎>
おい!鈴木みろよ!ラッキーなことに橋の上に人がいるぞ!
よし!
一緒に大声で助けを呼ぶぞ!
いいか!
せーの!
おーい!助けてくれー!

鈴木>
うるさいでやんすよ。
そんなに大声を出さなくても聞こえているでやんすよ。
そして残念ながらあっしはたまねぎ太郎さんを助けてあげることは
できないでやんすよ。

たまねぎ太郎>
ばかやろー!
お前に言ってるんじゃねーよ!
橋の上の人に言ってるんだよ!

鈴木>
あ、そうでやんすか。
すいやせん。

たまねぎ太郎>
まったく、さっきはそんな間違いせずに一緒に叫んでただろ!
なんで急にそんな間違いをするんだよ!


とかやっている間に、橋の下をくぐって流れていく小屋


鈴木>
あのー、橋の上の人がどんどん遠くなっているでやんすよ。

たまねぎ太郎>
あー、もう!
くだらないこと話している間にだいぶ流されちゃったじゃん!
いったいどうするんだよ!

鈴木>
あ!
また橋でやんすよ!

たまねぎ太郎>
何?ほんとか?
で、人は?
お!
いるじゃねーか!
よし!
今度はちゃんと助けを呼ぶからな!

鈴木>
へい。わかりやした。

たまねぎ太郎>
せーの!
おーい!
助けてくれー!

鈴木>
助けてくれでやんすよー!


橋の上の人影が橋から川に飛び込む様子が見える


たまねぎ太郎>
お?
何だ何だ?
橋の上から川に飛び込んだぞ。
しかも腰のところにロープを結んでいるようだぞ。
そのロープを利用して俺たちを助けてくれるんだな。

鈴木>
やけに手際がいいでやんすね。

たまねぎ太郎>
そうだな。


川面寸前で止まり、今度は橋のほうに上昇する人影。


たまねぎ太郎>
なんだ?
なんで川面寸前で今度は上昇するんだ?

鈴木>
なんだかバンジージャンプをしているようでやんすね。
ロープもよく見たら腰ではなく、足首に巻きつけてあるようでやんすね。

たまねぎ太郎>
なんでこんな大雨の夜にバンジージャンプなんかやってんだよ!
あほかー!!!

とか言ってる間に橋を通り過ぎる小屋


鈴木>
とか言ってる間にまた橋が遠のいてしまったでやんすね。

たまねぎ太郎>
そうだな・・・

鈴木>
なんか疲れたでやんすね。
休憩しないでやんすか?

たまねぎ太郎>
疲れるの、早いよ!
まだ何度か大声だしただけだろ!

鈴木>
へい。
でもお腹もへってきやしたし。。。

たまねぎ太郎>
早すぎるよ!
さっき食ったばかりだろ!
まぁ、でもそうだな。
ちょっと休憩するか。
このまま流れに乗って町まで出るのを待つとするか。
そのほうが助かる確率は高そうだな。

鈴木>
へい。そうしやしょう。

たまねぎ太郎>
じゃあ、しばらく休憩な。


で、休憩してるといつの間にか寝ちゃう二人


たまねぎ太郎>
・・・

鈴木>
・・・

たまねぎ太郎>
はっ!
寝ちゃったよ!
おい!
鈴木!
起きろ!
なんか周りが静かだぞ!

鈴木>
あれれれ。
確かに静かでやんすね。

たまねぎ太郎>
ちょっと外を見てみろよ。

鈴木>
へい。わかりやした。


窓をあけて外を見る鈴木。
外は一面の水。


鈴木>
水以外何も見えないでやんす。

たまねぎ太郎>
何?
水以外何も見えない?


あわててたまねぎ太郎も外を覗く


たまねぎ太郎>
ほんまや!
周り、全部水やん!
ちゅうことはここは海上やん!
俺たち、海まで流されてるやん!
まさにプレハブ小屋の流しそうめんやん!

鈴木>
なんで彦麻呂なんでやんすか!

たまねぎ太郎>
鈴木、まずいぞ!
このままでは本当に死んじゃうかもしれないぞ!

鈴木>
そうでやんすね。

たまねぎ太郎>
早くなんとかしないと。

鈴木>
あ!
あそこに何か明かりが見えるでやんすよ!

たまねぎ太郎>
何?
ほんとだ!
あれはもしかしたら船の明かりかもしれないな。
よし!
こちらからも明かりで合図をするんだ!

鈴木>
へい。
わかりやした。
で、明かりはどこにあるんでやんすか?

たまねぎ太郎>
それは自分で考えろよ!

鈴木>
わかりやした。
ではこの懐中電灯を使いやす。

たまねぎ太郎>
いいもの持ってんじゃん!
どうしたんだよ、それ。

鈴木>
ここに落ちてやした。

たまねぎ太郎>
なるほど。
ここに落ちてたのか。
じゃあ、明かりはどこにあるのかとか聞くんじゃねーよ!

鈴木>
おーい!
助けてくれでやんすよー!


と言いながら懐中電灯を振る鈴木


たまねぎ太郎>
無視かよ!
まぁ、いいよ。

鈴木>
おーい!
おーい!
ん?
なんだか徐々に明かりが大きくなってきたようでやんすよ。

たまねぎ太郎>
ほんとだな。
どうやらこっちに気付いたようだな。
これでひとまず安心だな。

鈴木>
へい。
そうでやんすね。


すぐそばまで近づく大型船


大型船の船員>
おーい!
誰かいるのかー?

鈴木>
いるでやんすよー!

たまねぎ太郎>
いるよー!助けてくれー!

大型船の船員>
おお!
やっぱり人がいるのか!
ダメだよ。
そんなわけのわかんない小屋なんかで航海しちゃ。

たまねぎ太郎>
いや、航海したくてしたわけじゃないんですよ。
大雨で流されちゃったんですよ。
助けてくださーい!

大型船の船員>
わかったわかった。
今助けてやるからな。
待ってなさい。
ほら、このロープに捕まって。

鈴木>
じゃあ、まずあっしから。

たまねぎ太郎>
こらこら。
まずは俺からだよ。
お前はちょっと待ってろよ。

鈴木>
嫌でやんすよ。
あっしからのぼるでやんすよ。

たまねぎ太郎>
お?
なんだと?鈴木。
反抗するのか?


と言っているすきに登る鈴木


たまねぎ太郎>
って、おい!
何先に登ってるんだよ!
こら!
おい、待てよ!

鈴木>
待たないでやんすよー!
早く登らないとお釈迦様がロープを切るかもしれないでやんすからねー!

たまねぎ太郎>
あほか!
お釈迦様って何だよ!
クモの糸かっつーの!


とか言ってる間に登りきる鈴木
それに続いて登りきるたまねぎ太郎

たまねぎ太郎>
ふー。
やっと登ったよ。
どうもありがとうございます。
助かりました。

大型船の船員>
いえいえ。
困っているときはお互い様ですよ。

鈴木>
太郎さん、太郎さん。

たまねぎ太郎>
ん?
どうした、小声で。

鈴木>
この人達、足がないでやんすよ。

たまねぎ太郎>
え?
まじで?


見ると船員達に足がない


たまねぎ太郎>
ほ、ほんとだ。
あわわわわ。
どうしよう。

鈴木>
どうしやしょう。



一難去って、また一難。
二人はこの危機をどう乗り越えるのでありましょうか。

第4話に続く