ベジタブルな密航者第4話

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貨物船が航海している。
日本を出発して五日目の夜。
キッチンにて。
船長と副船長とコック長が
話をしている。
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船長>
で、コック長。
つまりその犬太郎なんだけどさ、

副船長>
船長!
犬太郎ではなく、牛太郎であります!

船長>
あ、牛太郎ね、牛太郎。
紛らわしいなぁ・・・。
その牛太郎なんだけどさ、
コック見習として働いてもらうってことね。

コック長>
はい。
そうです。

船長>
うーん、そうするとさぁ、
コック見習が4人になっちゃうじゃない?
ちょっと多すぎないかな。

副船長>
船長!
4人ではありません!
2人と2匹であります!

船長>
副船長は細かいなぁ。
いいじゃん、4人で。

副船長>
はっ。
わかりました。
以後気をつけます。

コック長>
うーん。
そうですねー。
確かに4人はちょっと多いかもしれませんねー。
見習は鈴木だけにして、残りの3人には違う仕事を
してもらいましょうか。

船長>
そうだね。
そうしたほうがいいだろうね。
別の3人には違う仕事をしてもらうことにしよう。

副船長>
船長!
3人ではありません!
1人と2匹であります!

船長>
あのね、副船長。
3人でも1人と2匹でもどっちでもいいじゃん。
しかもなんで俺の時ばっかりそういうこというの?
コック長が3人って言った時は何も言わなかったくせに。

副船長>
はっ。
わかりました。
以後気をつけます。

船長>
以後気をつけますって、全然気をつけてないじゃん。
次は本当に気をつけてよ。

副船長>
はっ。
わかりました。

船長>
でさ、副船長。
3人には別の仕事を与えることにするから
船内で人手が足りなくて困っているところがないか、
調べておいてよ、ね。

副船長>
はっ。
わかりました。

船長>
うん。
頼んだよ。
それはそれとしてさ、コック長。
何か気付かないか?

コック長>
はて、何でしょうか。

船長>
わからないかなぁ。
よーく考えてみてくれよ。
いいか。
たまねぎ太郎とじゃがいも太郎と犬太郎、
何か共通点があるだろ?

副船長>
船長!
犬太郎ではなく、牛太郎であります!

船長>
あ、そうね。
牛太郎ね。
はいはい。

コック長>
共通点ですか?
うーん。
全員名前に「太郎」が付いていることですか?

船長>
それは確かにそうだけれども。
そういうことじゃないんだよ。

コック長>
うーん。
全員名前に食べ物の名前が付いていることですか?

船長>
いや、そういうことでもないよ。
名前は俺たちが勝手につけたことだからさ。
名前は関係ないよ。
名前から離れて考えてみてよ。

コック長>
名前は関係ないんですね。
うーん。
そうですねー。
・・・
あっ!
みんなツノが生えてるってことですか?
ほら、じゃがいも太郎は鬼だからツノが生えるし、
牛太郎は牛だからツノがあるし、
たまねぎ太郎は、芽のところがツノみたいに尖っているし。

船長>
・・・

コック長>
ね!

船長>
「ね」じゃねーよ。
たまねぎ太郎は名前がたまねぎなだけで、
頭がたまねぎそのものってわけじゃないから。
牛太郎は犬だから。
牛じゃないから。
ツノがあるのはじゃがいも太郎だけだから。

コック長>
そっかぁ。
うーん。
じゃあわからないです。

船長>
そうか。
・・・
お前、桃太郎っていう話、知ってるか?

コック長>
はい。
もちろん知ってますよ。

船長>
その桃太郎には誰が出てくる?

コック長>
おじいさんとおばあさんと桃太郎と犬と猿とキジと鬼が出てきますね。

船長>
うん。
そうだな。
で、
何か気付かないか?

コック長>
うーん。
・・・

船長>
・・・

コック長>
あっ!

船長>
ようやく気付いたようだな。

コック長>
たまねぎ太郎とじゃがいも太郎と牛太郎と桃太郎は太郎つながりですね。

船長>
だから名前は関係ないっちゅーとるだろが!

コック長>
そうでしたね。
失礼しました。
じゃあわかんないです。

船長>
なんだ。
ここまで言ってもわかんないのか。
しょうがないやつだなぁ。
いいか。
じゃがいも太郎は鬼だろ?
鬼は桃太郎に出てくるよな?!

コック長>
はい。
そうですね。

船長>
そして牛太郎は

副船長>
船長!
犬太郎ではなく、牛太郎であります!

船長>
なんだよお前はーーーー!!
牛太郎って言ってるじゃねーか!!
お前、また俺が間違えると思って決め内でしゃべってるだろ。
ちゃんと聞いたことを脳みそで咀嚼しろよ!

副船長>
はっ!
申し訳ありません!
牛だけに、
モーしわけありません!

船長>
・・・
えーっとね、話を元に戻すけどさ、
牛太郎は犬だろ?
犬も桃太郎に出てくるよな?!

コック長>
はい。
そうですね。

船長>
で、桃太郎は人間で、たまねぎ太郎も人間だよな?!

コック長>
はい。
そうですね。

船長>
・・・
な?!

コック長>
へ?

船長>
わかるだろ?

コック長>
いいえ、まったく。

船長>
まじで?
まじでわかんないの?
じゃあ俺の推理を全部言っちゃうけどさ、
たまねぎ太郎とじゃがいも太郎と牛太郎

副船長>
船長!
犬太郎じゃなくて

船長>
なんだよ!!
犬太郎って言ってないじゃん!!
牛太郎って言ってるじゃん!!

副船長>
そ、そうですね。
牛だけにもー

船長>
で、その3人はさ、
桃太郎の登場人物なんだよ。
その登場人物が何かの理由でこの船に
現れたんじゃないかと思うんだよ。

コック長>
船長、頭大丈夫ですか?
桃太郎はおとぎ話なんですよ?!
実際には桃太郎も鬼も犬もいないんですよ?!

船長>
いや、犬はいるだろ。
そんなことはわかってるんだよ。
だから言ってるじゃん。
「なんらかの理由で」って。

コック長>
「なんらかの理由で」ですか。

船長>
そうだよ。
「なんらかの理由で」だよ。
その「なんらかの理由」は何なのかはわからないけども、
そう考えると結構すっきりするんだよ。

コック長>
なるほど。
確かにそうですね。
だとするとですよ、これからも猿やキジやおじいさんやおばあさんも
いきなり現れたりするんでしょうかね。

船長>
そうなんだよ。
俺はそう思うんだよ。
今後も思わぬところから急に猿やキジや
おじいさんやおばあさんが出てくる可能性があるから
気をつけとかなきゃなって話なんだよ。

コック長>
そうですね。
今後現れる者たちのことも考えて仕事の分担を決めたほうが
いいってことですね。

船長>
いやいや、仕事の分配はどうでもいいんだよ。
今後、急にどこから現れても、冷静に対処しなければなって話なんだよ。

コック長>
つまり、先に名前を決めておいたほうがいいってことですね。

船長>
違うよ!
どこをどう聞けばそういうことになるんだよ!
名前なんか後でいいだろ!

コック長>
そうですね。
失礼しました。

船長>
副船長、話は聞いてたな。

副船長>
はい。船長。

船長>
ということだからさ、全船員に注意するよう
明日の朝にでも館内放送で伝達しておいてくれないか。

副船長>
はい。
わかりました。

船長>
じゃ、頼んだよ。
今夜はこれで解散。
おやすみ。

コック長、副船長>
おやすみなさい。



・・・ということで、ちょっとづつ謎が解けてきたような
気がするが、本当に解けてきたのかな?

第5話に続く。