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貨物船が航海している。
日本を出発して六日目の昼。
食堂に船長と密航者達が集まっている。
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船長>
ということで、今日から新しく仲間になる桃太郎さんです。
皆さんも仲良くしてあげてください。
たまねぎ太郎>
あのさー、
船長さー、
船長>
はい。
何でしょうか。
たまねぎ太郎>
なんで桃太郎は桃太郎っていう名前なの?
流れからいくと砂糖太郎ってなるべきなんじゃないの?
船長>
それは本人が桃太郎という名前を覚えていたからです。
それをわざわざ砂糖太郎だなんていう、
桃太郎とは全然関係ないような名前にする必要はないでしょう。
牛太郎>
そんなこと言ったら、俺なんか犬なのに牛太郎だぜ。
こっちのほうがよっぽど関係ないっちゅう話だよ。
桃太郎>
うるせーな。
それは名前を覚えておかなかったお前が悪いんだろ。
牛太郎>
なんだと、この野郎!
鬼を退治できたのはいったい誰のおかげだと思ってるんだ!
俺の助けがあったからこそだろうが!
桃太郎>
あははははは!
お前はつくづく幸せな野郎だなぁ。
いいか。
本当はなぁ、お前の助けなんて全然いらなかったんだよ。
お前が鬼にやられてボロボロになるところを
見て笑おうと思ってただけなんだよ。
それがなんだよ。
勝手に鬼退治なんかしやがって。
ちょっとは空気を読めよ。
牛太郎>
へん。
何言ってやがんだい。
お前の都合通りに進んでたまるかってんだ。
じゃがいも太郎>
おいおい、二人ともやめろよ。
仲良くしろよ。
同じ釜の飯を食った仲だろ。
たまねぎ太郎>
お前、そこの二人にやられた鬼のくせに、
よくそうやって二人のことを仲裁できるな。
じゃがいも太郎>
うるせーな。
横からちゃちゃを入れんじゃねーよ。
船長>
あー、はいはいはい。
わかりましたわかりました。
じゃあ皆さんの名前を付け直しましょう。
ね。
牛太郎さんは犬太郎さんという名前でいいですね?!
犬太郎>
犬太郎ねぇ。
犬太郎もちょっと変だけど、牛太郎よりはましか。
うん。
いいよ、犬太郎で。
船長>
じゃあ犬太郎さんはこれで決まり、と。
では次に、じゃがいも太郎さんは、鬼太郎さんということにしましょうか。
鬼太郎>
鬼太郎って、ゲゲゲみたいじゃん。
でもまぁ、かっちょいいからそれでいいよ。
船長>
じゃあ鬼太郎さんはOKということで。
では最後はたまねぎ太郎さんね。
うーん、たまねぎ太郎さんは
何も特徴がないなぁ。
普通の人間だしなぁ。
じゃあ、たまねぎ太郎さんは普通太郎さんということにしましょうか。
たまねぎ太郎>
普通太郎はなんか嫌だなぁ。
いいよ。
俺はたまねぎ太郎のままで。
船長>
あ、そうですか。
わかりました。
ではそのようにしましょう。
副船長>
船長!
船長>
お!
副船長か。
どうした?
副船長>
人手を欲しがっているところを調べてきました。
船長>
おう、そうか。
ご苦労さん。
で、どこが欲しいって?
副船長>
はい。
えーっとですね、
まずは医務室で一人欲しいそうです。
船長>
医務室で?
おいおい、みんな医療の知識なんかないのに
大丈夫なのか?
副船長>
はい。
医療の知識は必要ないので大丈夫です。
その仕事の内容なんですが、実は医務室の壁に穴が空いていまして、
そこの穴を手で塞いでおかないと海水がどんどん入ってきてしまうようです。
なので、そこの穴を手で塞ぐ人が一人欲しいということです。
船長>
・・・
副船長。
副船長>
はい。
なんでしょうか。
船長>
その穴は、今現在は誰が塞いでいるんだ?
副船長>
はい。
それはもちろん船医が塞いでいます。
船長>
だめじゃん!
いったい、急病人が出たらどうするんだよ!
副船長>
それは、急病人が塞ぐのではないんでしょうか。
船長>
そっか。
そうすると船医が治療に専念できるな、って、
あほか!
お前も船医もあほか!
手で塞がないで溶接すればいいだろ!
副船長>
はっ!
そう言えばそうですね。
船長>
わかったら修理班に連絡してすぐ修理させろよ!
ボケー!
副船長>
はい。
わかりました。
では早速連絡してきます。
船長>
あー、ちょっとちょっと。
連絡は後でいいよ。
そんなあほな船医はもうちょっと手で塞がせとけ。
その前に、他に人手を欲しがっているところを教えてくれ。
副船長>
はい。
えーっと、その他にはですねー、
美容室で人手を欲しがっています。
船長>
そうか。
美容室か。
この船には美容室まであったのか。
貨物船じゃなくて豪華客船みたいだな。
それで仕事の内容は何なんだ?
副船長>
はい。
なんでも、壁に空いている穴を
船長>
手で塞ぐな!
修理班に連絡しろ!
副船長>
はい。
わかりました。
では早速連絡してきます。
船長>
あー、もう!
まだ行かなくていいって!
他に欲しがってるところは?
副船長>
以上です。
船長>
なんだ。
それで終わりなのか。
じゃあどこも人手は足りてるってことだな。
副船長>
はい。
そのようですね。
船長>
そっかー。
じゃあ彼らには何をさせようかね。
うーむ。
副船長>
船長!
彼らに決めてもらうっていうのはどうでしょうか。
船長>
うーん。
そうだな。
そうしようか。
自分のやりたい仕事をやったほうが勤労意欲も湧くだろう。
副船長>
そうですね。
船長>
ということで、
みなさんは何の仕事がしたいですか?
たまねぎ太郎>
俺は壁に空いている穴を手で塞ぐ仕事がしたいな。
船長>
まじで?
まじで?
たまねぎ太郎>
はっはっは!
冗談だよ、冗談。
そんなわけないだろ。
えーっとねー、
じゃあ警察官をやらせてくれない?
船長>
警察官ですか?
うーん。
船内で警察官なんているかなぁ。
桃太郎>
はいはいはい!
じゃあ俺は刑事やる!
犬太郎>
じゃあ俺は名探偵。
鬼太郎>
じゃあ俺は泥棒やる。
今から逃げるから俺を捕まえてね。
よーい、スタート!
船長>
あのー、仕事じゃなくて、
いつの間にか遊びになっちゃってるんですけど・・・。
鬼太郎>
にげろー!
たまねぎ太郎>
まてー!
桃太郎>
まてー!
犬太郎>
まてー!
鬼太郎>
うわー!
船長>
あーもう!
うるさい!
ドタバタすなっ!
もう、まじめに考えてくださいよ。
たまねぎ太郎>
ごめんごめん。
まじめに考えるよ。
じゃあねぇ、うん、
俺は絵描きになるよ。
桃太郎>
じゃあ俺は絵画のモデルね。
犬太郎>
じゃあ俺はモデルのマネージャーね。
鬼太郎>
じゃあ俺は泥棒ね。
うわー!
にげろー!
たまねぎ太郎>
まてー!
桃太郎>
まてー!
犬太郎>
まてー!
鬼太郎>
うわー!
船長>
やめろー!
何してんだよ!
泥棒、関係ないじゃん!
っつーか、絵描きも関係ないよ!
そんな仕事、船にはいらないから!
たまねぎ太郎>
なんだよー。
冗談じゃん。
そんなに頭ごなしに怒られたら真剣に考える気なくすよなー。
しかも今考えろって言われてそんなにすぐに
答えを出せるわけないじゃん。
船長>
なるほど。
そうですね。
では、わかりました。
皆さんで一晩考えてみてください。
その結果を明日のお昼に教えてください。
いいですね。
全員>
おっけー。
船長>
では、解散!
ということで彼らが何の仕事をするのかは
彼らに託されました。
果たして彼らは何の仕事をすることに決めるのでしょうか。
第7話に続く。