客>
こんにちはー。
主人(以下、主)>
いらっしゃいませー。
客>
あのー、部屋を探しているんですが。
主>
かしこまりました。初めてですか?
客>
はい。
今までは家から通える学校に通っていたので、
一人暮らしはしたことなかったんですが、
今年の春から東京で社会人として働くことになったので、
必然的に一人暮らしをしなければならないことになっちゃいまして。
主>
なるほどー。
いわば「初めてのおつかい」みたいなもんですね。
客>
え?
そうですかねぇ。
それはちょっと違うような気がするんですが・・・。
まぁ、いいです。
はい。
そのようなものです。
主>
そのようなものなんですね。
かしこまりました。
じゃあ僕は初めてのおつかいということで、
今日はお母さんにいくらもらってきたのかな?
客>
ちょっとちょっと。
そういう聞き方をされるんだったら、「初めてのおつかい」ではないです。
「初めての一人暮らし」です。
主>
あ、失礼しました。
ついうっかり間違えてしまいました。
では改めて質問させていただきます。
予算のほうはどれくらいでお考えですか?
客>
そうですね。
とりあえず6万円くらいで考えているんですけど。
主>
6万円ですかぁ。
6万円ですと都内での新築一戸建てはほとんど無理ですが。
客>
いやいや。
わかってますから。
そんな6万円ぽっちで家が買えるなんて思ってないですから。
っていうか、常識で考えればわかるでしょ?!
社会人になっていきなり家買う人なんてほとんどいないでしょ?!
で、なんですか、
「無理」じゃなくて「ほとんど無理」て。
まるで少しは可能性があるような言い方ですよね。
主>
いやぁ、どうもすみません。
「ほとんど」って私の口癖なんですよね。
客>
そうなんですか?
でも口癖って言うほどは言ってないじゃないですか。
主>
ほとんどそんなことはないですよ。
ほとんどよく言ってるじゃないですか。
ほらほとんど。
今すでに3回ほど「ほとんど」って言いましたよほとんど。
ほってんとっと。
客>
いやいや。
無理矢理じゃないですか。
しかも最後ドサクサに紛れて変なこと言いませんでしたか?
もういいですよ。
わかりましたよ。
わかったから話を続けてください。
主>
そうですね。
では、賃貸物件をお探しということでよろしいですね?!
客>
はい。
そうです。
主>
お部屋の広さの希望はありますか?
客>
そうですね。
広いにこしたことはないんですが、
まぁ、6万くらいという条件もあるので
とりあえず30平米くらいあればいいです。
主>
ふむふむ。
30平米くらいと・・・。
ではお部屋の高さの希望はありますか?
客>
え?
「高さ」て、値段ですか?
さっき6万円くらいで、って言いましたよね?!
主>
いえいえ。
値段ではありません。
部屋の物理的な高さ、つまり床から天井までの長さの事です。
客>
え?
そんなところまで気にしないといけないんですか?
主>
そうなんですよ。
それが、気にしないとだめなんですよ。
部屋の広さは十分なのに、天井までの高さが1メートルしかない物件があって、
おかしいなと思ってよくよく調べてみると、
ちょっと立派な犬小屋だったって事がありましたから。
客>
冗談でしょ?!
そんなことが実際にあるんですか?
でも普通の部屋だったら広さがそんなに広ければ、高さもちゃんとした高さで
作ると思うので、別に気にする必要はないですよね!?
私もそんな犬小屋とか借りるわけではないんですし。
いいですよ。
そんなに気にしないで。
高さは普通で。
主>
わかりました。
部屋の高さは普通ですね。
じゃあ、とりあえず2m20cmくらいにしておきますね。
では、お部屋の体積は?
客>
たいせき?
たいせきってあの「底面積かける高さ」の体積ですか?
主>
いいえ。
「高さかける底面積」の体積です。
客>
いやいや。
順番を入れ替えてるだけで、どっちも同じですよ。
で、自分で言ってておかしいことに気付きませんか?
底面積、つまり部屋の広さですが、さっき言いましたよね?!
30平米ぐらいて。
高さもさっき言いましたよね?!
2m20cmくらいて。
ね!?
わかるでしょ?!
掛け算したら出ますよね?!
で、もっと根本的なことを言わせてもらいますね。
なんで体積なんか聞くんですか。
だいたい、いきなり「体積の希望は?」とか聞かれて、
「はい。私は120立方メートル以上が希望です。」
とか即答できる人はいるんですか?
主>
120立方メートル以上、と。
客>
いやいや。
書かないでくださいよ。
例えなんですから。
しかも120立方メートルがどのくらいなのか見当もつかないし。
主>
では、直径の希望は?
客>
部屋、円かよ!
なんだよ、直径て。
普通の四角い部屋が希望なの!
主>
わかりました。
結構注文が多い人ですね。
客>
いやいや。
普通ですよ。
そんなわけわかんないことばっかり言われたら
普通はこういう受け答えをしますよ。
主>
わかりました。わかりました。
では、条件は以上ですか?
客>
いやいや。
まだありますよ。
結構条件言ったみたいな感じですけどね、
実際にはまだ予算と部屋の広さのことしか言ってないですからね。
主>
わかりました。
では漏れがあるといけませんので、
私から質問して、それに答えていただくという方式で進めさせていただきますね。
客>
今までもそういう方式で進んでましたよね?!
まったく。
はいはい。
質問どうぞ。
主>
お風呂は水はけがいいほうがいいですか、それとも悪いほうがいいですか?
客>
え?
それは、いい方がいいに決まってません?
悪いほうを選ぶ人なんかいるんですか?
主>
洗面台は水はけがいいほうがいいですか、それとも悪いほうがいいですか?
客>
え?
ですから、いい方がいいに決まってますよね?!
主>
お庭は水はけが
客>
(かぶせ気味に)
うらー!!
だから水はけはいいほうがいいって言ってるだろ!
しかもなんで水はけの質問ばっかなんだよ!
違うことも聞けよ!
6万で庭は無理だろ!
考えて質問しろよ!
主>
失礼しました。
では違う質問しますね。
押入れは湿気が多いほうがいいですか、それとも少ないほうが
客>
(かぶせ気味に)
うららー!!
あんまかわってねーっつーの!
本質的には一緒じゃねーか!
主>
わかりました。
では、もっと違う質問しますね。
アパートの名前は長いほうが
客>
(かぶせ気味に)
もういいよ。
こっちから条件いうからメモして。
主>
はい。
ではお願いします。
客>
まず、駅から徒歩10分以内ですね。
主>
ふむふむ。
それは途中にコンビニとかあったほうがいいですよね?!
客>
そうですね。
コンビニはあったほうがいいでしょうね。
主>
ふむふむ。
では、途中に自販機とかもあったほうがいいですよね?!
客>
え?
まぁ、自販機もあったほうが便利でいいでしょうね。
主>
ふむふむ。
では、途中に大きなカエルのモニュメントとかも
客>
(かぶせ気味に)
だからなんなんだよ!
うるさいよ!
もしもそういう条件があるんだったら今から言うって!
だまってきいてろよ!
だいたいなんなんだよ!
「大きなカエルのモニュメント」て。
俺、関係ないだろ!
そんなの、あってもなくてもどっちでもいいよ!
主>
失礼しました。
客>
じゃあ続けて言うからな、口挟むなよ!
主>
はい。
どうぞどうぞ。
客>
「どうぞどうぞ」て!
あのねぇ、
まぁ、いいや。
じゃあ言いますよ。
日当たり良好、南向き、閑静な住宅街、2階以上、新築、
フロ、トイレ別、ぐらいかなぁ。
希望としては。
主>
わかりました。
(資料を調べる)
うーん、ご希望にそえるような物件は
なさそうですねー。
客>
そーですか。
そーですよね。
大丈夫ですよ。
最初から希望にぴったりの物件が見つかるとは考えてませんから。
では、どれか条件を落とせば見つかりそうですか?
主>
そーですねー。
プール付きという条件を落とせば見つかりそうですけどねー。
客>
おいおい!
お前、ちゃんと聞いてたのかよ!
プール付きが希望だなんて言ってないだろ!
プールの「プ」の字も言ってないっつーの!
主>
でも、プールの「フ」の字は言いましたよね?!
客>
プールの「フ」て!
無理矢理じゃん!
しかも俺が言った「フ」は「風呂」の「フ」なんだよ!!
プールなんて全く関係ないんだよ!!
アチョー!!
主>
わかりました、
暴力はやめてください。
では、プールはいらないということで探してみますね。
(さらに資料をチェックする。)
お客様、
やっぱり6万円未満でヘリポート付きは
客>
もういいよ!