日曜日の街中

隊員＞
そこのあなた。

Ａ＞
・・・・・・・

隊員＞
あなた。

Ａ＞
・・・・・・・

隊員＞
あなたってば。

Ａ＞
え？
は、はい。
僕ですか？

隊員＞
そう。
あなたです。

Ａ＞
あ、そうですか。
何か用ですか？

隊員＞
あなた、じぇい隊に入りませんか？

Ａ＞
え？
いきなりですね。
いいですいいです。
入らないです。

隊員＞
そうですか。
入らないですか。

それは何故ですか？

Ａ＞
え？
だって命をかけて国を守るなんてこと、
僕にはできませんから。
大変申し訳ないですが。

隊員＞
はっはーん。
あなた、何か勘違いしていますね？！

Ａ＞
え？
勘違いて、何がですか？
自衛隊って命をかけて国を守ったりしないんですか？

隊員＞
いえいえ。
そうではありません。
私たちは自衛隊でありません。
Ｊ隊です。

Ａ＞
え？
ぜい隊？

隊員＞
Ｊ隊です。
Ｊ。

Ａ＞
Ｊ？
Ｊってあの英語のＪですか？

隊員＞
そうです。
英語のＪです。

Ａ＞
あ、そうなんですか。
英語のＪのＪ隊ねぇ。
・・・・・・・・・
ダジャレ？

隊員＞
だ、ダジャレじゃないです。
どっちかっていうと自衛隊のほうが真似しているんです。
こっちは平成元年から活動しているんですから。

Ａ＞
自衛隊は昭和ですよ。

隊員＞
え？
そうなんですか？
それ、本当ですか？

Ａ＞
もちろんですよ。

隊員＞
本当ですか？
おかしいなぁ。
もしそれが本当だったら自衛隊のほうから文句が来るはずですけどねぇ。

Ａ＞
Ｊ隊の存在を知らないんじゃないですか？
もし知ってても別にどうでもいいって思われてるとか。

隊員＞
な、なにー？

じゃあ全然問題ないじゃないですか。

Ａ＞
あ、あれ？
てっきり「バカにするなー！」って怒るのかと思いましたよ。
でもまぁ、問題なくて何よりですね。
それでは。

隊員＞
あー！
ちょっとちょっと！
まだ帰らないで下さい。
お互いの誤解が解けたところで、Ｊ隊に入りませんか？

Ａ＞
入りませんよ！
自衛隊以上に入りませんよ。
そんな得体の知れない組織。

隊員＞
じゃあ得体が知れれば入るんですね？！

Ａ＞
いやいや、
得体が知れたからといって入るわけないじゃないですか。
万一、何か面白そうとか、得になることがあれば
入ることを考えてもいいかなってぐらいですよ。

隊員＞
そうですか。
わかりました。
それではＪ隊について説明しますので聞いてもらえますか？
すぐすみますから。

Ａ＞
すぐですか？
いいですよ。
別に急ぐ用事もないし。
じゃあ、お願いします。

隊員＞
わかりました。
それでは説明しましょう。

まず、Ｊ隊に入るには、入隊料として２００円を納めていただきます。
入隊料が納められて、隊員になることが認められると
Ｊ隊員カードを支給します。

Ａ＞
なんだかレンタルビデオ屋の会員になるときみたいですね。

隊員＞
そして６回に１個、スタンプを押します。
スタンプが１７個たまると、ゴールドＪ隊員カードが支給されます。
私は入隊して１５年になりますが、
まだゴールドＪ隊員カードはもらえていません。

Ａ＞
ゴールドをもらうのってそんなに大変なんですか？
っていうか、６回って何の回数なんですか？
しかも６回とか１７個とか、中途半端な数ですねぇ。

スタンプがたまるとカードがゴールドになるところなんかは
風俗店みたいですね。

隊員＞
そうですね、私が、
じゃなくて、隊長がよく行く風俗店のシステムから
パクって来ました。

じゃなくて、
パクって来たようです。

Ａ＞
なんかその間違い方が、パクッたのは隊長じゃなくて自分だってのを表していますよね。

隊員＞
そ、そんなことはないです。

Ａ＞
ほんとに？

隊員＞
ほ、ほんとです。
その話は置いといて。

どうでしょう？
これでだいぶＪ隊のことがわかっていただけたと思うのですが。

Ａ＞
いやいや、全くわかりませんよ。
だいたい、Ｊ隊の隊員カードのことしか説明してないじゃないですか。
６回っていうのが何の回数なのか教えてくれれば
多少それから推測できるかもしれませんが、それも教えてくれないですし。

隊員＞
わかりました。
それではＪ隊とは何かってところを説明しましょう。

Ａ＞
はい。
最初からそうしてくださいよ。

隊員＞
Ｊ隊とは何なんか、を説明するには、まず隊を結成したいきさつから
お話する必要があるでしょう。
隊を結成したのは、平成２年の冬でした。

Ａ＞
あれ？
さっき、平成元年って言いませんでしたっけ？

隊員＞
あ、そうでしたそうでした。
平成元年の冬でした。

Ａ＞
なんか出だしから怪しさ満開だなぁ。

隊員＞
当時大学生だった私は、その日大学をサボって
昼間から家でぼーっとテレビを見ていました。
するとそこに友人の山川が訪ねてきました。

「なぁ、俺と一緒にＪ隊を作らないか？」
と山川が言ってきたので、
「うん。作ろう。」
と答えて、Ｊ隊を作ることになりました。

Ｊ隊の誕生です。
ババーーーン！！

Ａ＞
なんだそれ！
ババーン、じゃねーよ！
もうぜんっ・・・・・・ぜんわかんないよ！

もう隊の結成するきっかけとかいいですから、
Ｊ隊の活動内容とは何なのかを教えてくださいよ！

隊員＞
わかりました。
それではお教えしましょう。
その後、３年間の空白期間があった後、
私と山川はＪ隊の活動を開始することにしました。

まずは隊員カードが必要です。
私たちは画用紙を買ってきてカードを作りました。

Ａ＞
おいっ！
もう隊員カードはいいよっ！

隊員＞
そうですか。
隊員カードを作成するのもＪ隊の活動の一部なので
一応説明しとかなくてはいけないかと思いまして。

Ａ＞
だったら、
「Ｊ隊の活動のひとつは隊員カードの作成。」
でいいだろっ！
３年間の空白期間が、とか、私と山川が、とかはいらないだろっ！
何で物語調にする必要があるんだよ！
もっと簡潔に要点だけ説明しろよっ！

結成したらすぐ活動しろっ！
３年間も休むなっ！

隊員＞
わかりました。
では簡潔に説明します。
Ｊ隊の活動のひとつは、Ｊ隊本部に毎日通うこと。
Ｊ隊の活動のひとつは、Ｊ隊本部に出てきたら、まず机の上を掃除すること。
Ｊ隊の活動のひとつは、次に、机の上を掃除したぞうきんを洗うこと。
Ｊ隊の活動のひとつは、その次に、机の上を掃除して洗ったぞうきんを絞ること。
Ｊ隊の活動のひとつは、

Ａ＞
だーーーーー！
もうーーーー！
なんなんだよ、それはよー！
いちいち、Ｊ隊の活動は、とか言わなくていいよ！
それから、机の上を掃除したりとか、ぞうきんを洗ったりとか、
そんな細かいことはどうでもいいんだよ！
もっとＪ隊の活動目的みたいなことを言えって！
言えって！！

隊員＞
わ、わかりましたわかりました。
そんなに興奮しないでください。

Ｊ隊の活動目的ですよね。
うーん、なかなか説明するのが難しいんですが、
ひとことで言うと、世界平和ということになります。

Ａ＞
ひとことで言うなよ！
全然わかんねって！
もっと具体的に言えって！
言えって！

隊員＞
わかりました。
では言いましょか。

横断歩道のところで、学校に通う子供たちが交通事故に遭わないように、
黄色い旗を持って子供たちや車を誘導するのが、主な活動です。

Ａ＞
それ、緑のおじさんじゃないの？

隊員＞
違います違います。
緑のおじさんではないです。

Ａ＞
でもやってることは緑のおじさんと一緒でしょ？！

隊員＞
確かに似たようなことをしていますが、
緑のおじさんとは違います。

Ａ＞
そうなの？
それは何が違うの？

隊員＞
緑のおじさんは、Ｊ隊員カードとかもってないですから。
もちろんゴールドＪ隊員カードも。

Ａ＞
え？
もしかして隊員カードだけの違いなの？

隊員＞
まぁ、物理的にはそうですね。
でも、精神的には緑のおじさんとは心構えが違います。
向こうはやっつけの仕事でしょうけど、
こっちは世界平和を考えながらやってますからね。

Ａ＞
いや、そんなことねーって！
むしろ緑のおじさんのほうが子供たちの安全のことを考えてるって！

あなた達はゴールドＪ隊員カードをもらうことしか考えてないんでしょ？！
どーせ。

隊員＞
そんなことはないですよ！
子供の命第一でやってますって！

Ａ＞
本当かよ！！
あ、そうそう、ゴールドＪ隊員カードで思い出したけど、
何を６回でスタンプ１個なんだよ！
なぁ。
いい加減教えてくれよ！

例えば、子供を無事故で横断させた回数とか？
でもそれだとあっという間に貯まるか。
集めるのが大変って言ってたもんなぁ。

隊員＞
お前はバカだなぁ。
全然違うよ。

Ａ＞
バ、バカとか言うなよ！
だから例えばって言ってるだろっ！
本当は何なんだよ！
教えろよ！
教えてくれよ！

隊員＞
わかりました。
ではお教えしましょう。

それは、朝出かける前に歯を磨いた回数です。

Ａ＞
は、はぁ？
それ、まじ？

Ｊ隊の活動と全然関係ないじゃん！

っつーか、そんなことよりも、
ちゃんと毎朝歯、磨けよ！
ゴールドＪ隊員カードを取得することなんか
簡単じゃねーかよ！

隊員＞
それが、Ｊ隊の活動と全く関係ないこともないんですよ。
子供を横断させる時に、
「いってらっしゃい。」
と声をかけますよね！？
その際に口臭が臭かったら子供たちが朝から不快な気分になるじゃないですか。
そんな気分にさせないためにも朝の歯磨きは必要なんですよ。

Ａ＞
だったらなおさらだよ！
ちゃんと毎朝歯を磨けよ！
ちゃんと歯を磨かないと子供たちに
「Ｊ隊のおじさん」
じゃなくて、
「口臭のおじさん」
って言われるぞ！

隊員＞
それ、Ｊ隊と口臭が何もかかってなくて
うまくもなんともないです。

Ａ＞
別にいいんだよ！
うまいこと言おうとか思ってないんだよ！

もういいよ！
Ｊ隊に関してだいたいわかったから、もう帰るよ！

隊員＞
いやいや、
ちょ、ちょっと待ってください。
本当にだいたいわかったんですか？

Ａ＞
別にどっちでもいいだろ！
そんなこと。
もう話を聞くこと自体がばかばかしいの！

隊員＞
そうですか。
わかりました。
では、Ｊ隊のＪとはどういう意味なのかも
話す必要はないですね。

Ａ＞
あ、それは気になるなぁ。
じゃあそれだけは教えてもらおうかな。
Ｊにはどんな意味があるの？

隊員＞
ふふふ。
やはり気になるでしょう？！
ではお教えしましょう。
実はＪ隊のＪは、その形に意味があるんです。

Ａ＞
へー、そうなんだ。
そのＪはいったい何の形を表してるの？

隊員＞
あれ？
わかりませんか？
Ｊ隊の活動内容を考えればすぐわかると思ったんですが。

Ａ＞
それがわからないから聞いてるんだろ？！
じらさないで早く教えろよ。

隊員＞
そうですか。
ではお教えしましょう
子供たちが横断歩道を渡るときはどうしますか？

Ａ＞
え？
渡るとき？
まず左右を確認するわなぁ。

隊員＞
そうですね。
そしてどうします？

Ａ＞
そして、手をあげて

隊員＞
そこっ！

Ａ＞
え？
なにが？

隊員＞
そこ！
そこですよ！
子供たちは手をあげて横断歩道を渡りますよね？！
その形が、ほら。
Ｊに見えるでしょ？！

Ａ＞
見えるかっ！！
見えるものかっ！！
Ｊには見えない見えないよ！！
アルファベットで例えるならＩだろ！
Ｉ！
だったらＪ隊じゃなく、Ｉ隊にしろ！
Ｉ隊に！
Ｉ隊に！！

隊員＞
そんなあなたに「会いたい。」
うふっ。

Ａ＞
・・・・・

隊員＞
あ、あれ？
リアクションないな。

って、いなくなってるし！！
は、はやっ！！
・・・・・
まぁ、いいや。

でもＩ隊かぁ。
Ｉ隊・・・・・・。
「Ｉ隊に会いたい！」
とか言っちゃったりして。
うん。
いいかも。
いいかもね！

よし！
じゃあ、Ｊ隊じゃなくてＩ隊に名前を変更するように、
隊長の山川Ｊの助に相談してみよーっと。