モアイ


イースター島の飛行場から、新婚旅行にきたカップルが出てくる。

男>
よしこちゃーん、飛行機にすごく長く乗ってたけど、疲れてなーい?

女>
よしおくーん、平気よー。筋肉モリモリよー。

男>
相変わらず絶好調みたいだねー。
ギャグもさえまくってるしねー。
じゃあ早速モアイ像でも見に行こうかー。

女>
うん。いきましょー。


(モアイ像の前にたたずむ新婚カップル)


男>
やっぱでかいよなー。
こんなの、いったいどうやって作ったんだろうなー。

女>
ほんとよねー。

謎の声>
抜いてー。

男>
ん?
何?
今なんか聞こえなかった?

女>
うん。
なんか変な声が聞こえたわねぇ。

謎の声>
抜いてー。

男>
ほら、まただ。
また聞こえてきたよ。
なんか「抜いてー」って言ってるように聞こえない?

女>
うん。
「抜いてー」って言ってるように聞こえるわね。

謎の声>
早く抜いてー。

男>
「早く」が付いたね。

女>
何かあせっているのかしらね。
しかし声はするけど姿は見えないわね。

謎の声>
こっちこっち!
おれおれ!
おれだよ!
モアイだよ!
モアイ!

男>
え?
何?
もしかしてこのモアイ像がしゃべってんの?

モアイ>
その通りだよ!
おれだよ!
モアイだよ!

男>
なーんだ、モアイかー。
はっはっは。
うわー!
ばっ、ばけものだー!

女>
きゃー。
たすけてー。

モアイ>
なんだよ。
そのわざとらしい驚き方は。
いいよ。
別に無理して驚いてくれなくたって。

男>
いやいやいや。
別に無理して驚いているわけじゃないよ。
ねー、よしこちゃん。

女>
そうよそうよ。
ねー、よしおくん。
これが私たちの驚き方なんだからしょうがないじゃないの。
じゃあ逆に聞きますけど、どんな風に驚けばいいっていうのよ。

モアイ>
あー、もう別になんでもいいよ。
別にお前らの「驚いた話」、略して「驚いちゃった話」なんかどうでもいいよ。

男>
それ、言い方を可愛くしちゃってるだけで、全然略してないよ。

モアイ>
あー、もう、そんなところにはひっからからなくていいからさー、
早く抜いてくれよ。

男>
何だよ、「抜いて、抜いて」って。
白髪か?
白髪なのか?
白髪を抜いて欲しいのか?
って、お前、どこにも白髪はえてねーじゃん。
っつーか、髪の毛自体はえてねーじゃん。
つるっぱげじゃん。

モアイ>
しっ、らっ、がっ、とっ、かっ、じゃっ、ねーよ!

女>
じゃあ、鼻毛?

モアイ>
はっ、なっ、げっ、でっ、もっ、ねーよ!
鼻毛は「白髪とか」の「とか」に入れてあげてよ。

男>
じゃあなんなんだよ。
お前がちゃんと主語を言わないからわかんないんだろ?
ちゃんと何を抜いて欲しいのかを言えよ!

モアイ>
わかったよ。
じゃあちゃんと言うよ。

この俺を、この俺を抜いてくれ。
この俺を、この俺様を、
この地面から、この地面様から抜いてくれ。
この地面様から抜いてくれー!!!

男>
何かっこつけた言い方してんだよ。
地面に「様」はいらねーだろよ。

モアイ>
あー、もう、そんなとこにはひっかかんなくていいって。

男>
お前がひっかかって欲しいような言い方するからだろ!
まぁ、いいよ。
わかったよ。
抜くのね?!
お前様をね?!
地面様からね?!
お前様を地面様から抜くねぇ。
うーん。
でもさぁ、お前って地面に置いてあるだけなんじゃねーの?

モアイ>
お前はアホだなぁ。
もし俺が置いてあるだけだったら、ちょっとした風でも
すぐぐらついて簡単に倒れちゃったりするだろ?!

男>
まぁ、そりゃそうだけど。
でも、そうだとしたらせっかくしっかり埋まっているのをなんで抜きたいのよ。

モアイ>
それはね、飽きちゃったから。
この風景が。
ずーっとこっちばっか見てんじゃん?
後ろがどんな景色だったのか、全然覚えてないもんねー。
だからぼちぼち後ろの景色を見てみたくなってさ。

男>
だったら最初っから地面に埋まらなきゃいいんじゃん。
そうしたら好きなときに好きなところが見れるじゃん。

モアイ>
だから、埋まってないとぐらついて、間単に倒れちゃうって言ってるだろ!!
しかも自分で埋まったわけじゃないんだからしょーがないだろ!

男>
え?
じゃあ誰かに埋められたの?

モアイ>
そうだよ。
みんなで海水浴に来たときにな、友達にな、遊びで首まで埋められてな、
それでみんなが忘れてそのまま帰っちゃったんだよ。

男>
それって、友達の麻薬とかを盗んだりしたから埋められたんじゃねーの?

モアイ>
盗んでねーよ!
ただの遊びだよ、遊び。
リンチとかじゃねーよ。

男>
あっ、そう。
そんなら別にいいけどね。
でもさぁ、他にもたくさん埋まってるモアイ、あるじゃない?
あれらも全部友達が忘れて帰っちゃったの?

モアイ>
そんなの、俺が知るわけないだろ!
それは本人に聞けよ!
っつーかさぁ、そんな他のモアイのことはどうでもいいからさぁ、
早く抜いてくれってばさってばさっ!!

男>
それは無理。

モアイ>
な、なんでだよー。

男>
お前、自分の大きさ、わかってんの?
いったい何tあると思ってんだよ。
そんなの、俺一人の力で抜けるわけないじゃん。

モアイ>
別にお前一人で抜かなくてもいいじゃん。
ほら、そこのよしこちゃんと協力してさ、
抜けばいいじゃん。

男>
よしこちゃん、どんだけ力持ちなんだよ!
よしこちゃんの力を借りたぐらいでお前が持ち上がるかよ!

モアイ>
だって、よしこちゃん、さっき、
「筋肉モリモリー」
って言ってたじゃん。

男>
あれはギャグなんだから、関係ないっつーの。

モアイ>
あっ、そう。
じゃあ、わかったよ。
じゃあさ、抜かなくていいからさ、俺の周りの砂を手で掘ってよ。
ある程度掘ってくれたらあとは自力で抜け出すからさ。

男>
それも無理だよ。
いったいどんだけの砂を掘らなきゃいけないんだよ。
だいいち、ここ、砂じゃなくて土だよ。
とても硬くて手じゃ掘れないって。

女>
あなた!
私、いい方法を思いついたわ!

男>
え?
本当に?
どれどれ。
どんな方法?

女>
あのね、歯医者で歯を抜くときには痛くないように麻酔を打ってから抜くじゃない?
それと同じように、まず麻酔を打てばいいんじゃないかしら。

男>
お前はあほか!
誰も痛い痛くないの話をしてるわけじゃねーんだよ!
抜き方の話をしてんだよ!!

モアイ>
脳みそまで筋肉モリモリー!

男>
うるさいよ!
人のヨメをバカにすんじゃねーよ!
いくらなんでも脳みそまで筋肉モリモリじゃねーよ!
せいぜい延髄までだよ!

女>
わかったわ。
抜き方ね!
じゃあさ、じゃあさ、
歯医者みたいにペンチで抜けばいいんじゃない?

男>
お前はつくづくアホか!
どこにこいつを抜くだけのでかいペンチがあるんだよ!
もしあったとしても誰がどうやって使うんだよ!

モアイ>
金玉まで金玉モリモリー!

男>
なんだよ、それ。
金玉は金玉モリモリでいいじゃん!
っつーか、うちのヨメには金玉はついておりません!

女>
じゃあさ、じゃあさ、
地面を爆弾で爆破しちゃおうよ。

男>
おまえなぁ、爆弾なんてどこにあるんだよ。

モアイ>
金玉まで

男>
って、ハイジャックしようと思って準備してた爆弾があったなぁ。
そういえば。

モアイ>
チンゲボーボー、って、あるんかい!!

男>
うん。あるよ。
ほら、これがそうだよ。

モアイ>
ほんとだ!
あるじゃんあるじゃん!
じゃあさ、これでいっちょ
「ドカン!!!」
ってやっちゃいましょうよ。

男>
よし。
じゃあセットするからちょっと待っててね。
・・・・・
おっけー!
準備完了!!
後は自分で起爆させてね!
俺らは危ないから遠くで見守っているからね。

モアイ>
うん。
わかったよ。
じゃあ起爆の方法教えて。

男>
おっけー、わかった。
いい?
ここに赤のコードと青のコードがあるじゃない?
で、正しい方のコードを切ると時計が止まるのね。
でももし間違ったほうを切ると「ドカン!!!」ってなっちゃうから
くれぐれも間違ったほうを切らないように注意してね。

モアイ>
いやいや、「ドカン!!!」ってなっていいんでしょ?!
爆発させるのが目的なんだからさぁ。
で、どっちが「ドカン!!!」てなるほうなの?

男>
それがさぁ、それを書いておいたメモをなくしちゃってさぁ、
わかんないんだよねぇ。

モアイ>
そのくらい覚えておけよ!
っつーか、メモしたんだったら覚えてるだろ!
今日の朝飯が何だったのかを思い出すより簡単だろ!
じゃあどうすんだよ。
いちかばちかためしにどっちか切るのかよ。

男>
だからね、どっちを切ればいいのかわかんないからね、
とりあえず赤のコードも青のコードも無視して
このスイッチを押すの。
すると爆発する作りになってるから。

モアイ>
だったら最初っからそれを教えろよ!
赤とか青とか、必要のない情報を
俺の脳みそにインプットすんじゃねーよ!

男>
わかった、わかったよ。
俺が悪かったよ。
そんなにおこんなよ。

モアイ>
全くー。
じゃあスイッチ押すからな。
みんな、俺から離れて!!

男、女>
わー!

モアイ>
スイッチ、オン!!!
・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・
あれ、爆発しないぞ?!
押し方が悪いのかな。
もういっぺん押してみようかな。
スイッチ、オン!!!
スイッチ、オン!!!
スイッチ、オオオオオオオオーン!!!
・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・
だめじゃん!
おーい!
爆発しないんだけどさぁ、このスイッチ壊れてんじゃないの?

男>
そんなことないですって。
モアイさんのスイッチもちゃんと動きますって。
他の解答者がスイッチを押すのが、モアイさんより一瞬早いんですよ。

モアイ>
他の解答者にはスイッチを渡すんじゃねーよって他の解答者って何だよ!!
この場合の正解はなんだよ!

男>
この場合の正解はですねぇ、って、おーっとっと。
誘導尋問にはひっかかりませんよー。
自分で考えてくださいねー。

モアイ>
えーい、あほか!
別に誘導尋問とかじゃねーよ!
もうー!!
ちゃんとやれよー。

男>
あああああ!!!!

モアイ>
な、なんだよ、うるさいな。

男>
安全装置を外すのを忘れていたよー!
きっとそれが原因だよ。
ちょっと貸してみて。
・・・・・・・
はい。
外したから。
これで大丈夫だよ、きっと。
も一回やってみてよ。

モアイ>
今度こそ大丈夫なんだな。
よし。
じゃあスイッチを押すからみんな離れて!

男、女>
わー!

モアイ>
スイッチ、オーーーーン!!!

ドカーーーーーーン!!!!


男、女>
うわーーーーー!!!!

男>
しまったー!
そのスイッチは俺とよしこちゃんの背中につけていたジェットエンジンの
点火スイッチだったーーーー!!!
イースター島からどんどん離れていくよー!
モアイさーん!
ばぁーーーいばぁーーーーーい!!!

モアイ>
なんで背中にそんなもんつけてるんだよー!
あほかー!!!
よしこちゃんとよしおくーん!
ばぁーいばぁーい!!!