プール

(プールの更衣室に小学生の子供が二人いる。)

子供A(以下、A)>
おい、早くしろよ。
おいていくぞ。

子供B(以下、B)>
まってよー。
もう少しで着替え終わるからさぁ。

A>
まてねーよ。
もう、いつもおせーんだから。
先いくからな。

B>
待ってよー!


(プールの更衣室から出てきたA。いきなりプールに飛び込もうとする。)

A>
いぇーい!

プールの監視員(以下、監)>
ピピピピピー!!
こらこら!
そこの子供!
いきなりプールに入っちゃだめだろ!
プールに入る前にはまず準備体操しないと。

A>
えー?
まじでー?
準備体操なんてやりたくないよ。
めんどくせーよ!
どうせ今から運動するんだから別に体操なんかしなくてもいいじゃん!

監>
だめだめ!
ちゃんと準備体操をしなさい!
ちゃんと準備体操をしないと大変なことになっちゃうんだから。

A>
なんだよ。
大変なことって。

監>
知らないのか。
じゃあ、しょうがないな。
いいかー、教えてあげるからちゃんと聞いておくんだぞ。
ちゃんとなー、
準備体操しないとなー、
ブクブクに太っちゃってなー、
みっともない大人になっちゃうんだぞ!
そうなってもいいのかぁ!!!

A>
あのさぁ、それ、プール関係ないじゃん!
しかもさぁ、準備体操くらいでさぁ、
そんなに痩せたりする訳ないじゃん!
それでもし痩せるような激しい体操なんだったら、
それはもう準備体操とは言えないじゃん!
本格的な運動じゃん!
準備体操のための準備体操とかが必要になるじゃん!

(と、そこへ少年Bが走ってきて、プールに飛び込もうとする。)


B>
わーい!

監>
ピピピピピー!!
こらこら!
そこの子供!
いきなりプールに入っちゃだめだろ!
プールに入る前にはまず準備体操しないと。
準備体操しないと、もう大変なことになっちゃうぞ!

B>
えー?
大変なことって何ー?

A>
なんか、準備体操しないとブクブクに太っちゃうらしいよ。

B>
えー、そうなの?
プール関係ないじゃん!
じゃあ準備体操やんなくても特に問題ないじゃん!

監>
なるほどー!
そう言われてみればそうだね。
プール関係ないね。
君は頭いいなぁ。
じゃあ、準備体操しなくてもいいよ。

A>
なんだよ、それー!
おれも同じようなこと言ったじゃん!
えこひいきかよ!
そして、お前が準備体操は必要ないとか言うなよ!
準備体操は大切なんでしょ?!
急に運動すると、足がつったり、心臓がびっくりして止まったりするかもしれないから、
まず体を適度に動かして、泳ぐための準備をしないといけないんだろ?!
ちゃんと説明しろよ!
キンニク!

監>
あ、なるほどー!
頭いいねー。
わかってるんだったらやろうねー。

A>
うわっ!
やられた!
そうきたか。
わかったよ。
やるよ。

(適当に運動する少年AとB。)


A>
ねー、もういでしょ?!

監>
そうだな。
もういいだろ。

B>
わーい!

監>
あ、ちょっと待って!
プールに入る前に、シャワーを浴びなさい!

A>
えーーーーー。
まじでー?
いいよ、面倒くさい。
どうせ今から水に入るんだからさぁ、
別にいいじゃん。

監>
ばか!
そういう問題じゃないんだ!
プールの前にシャワーを浴びないとなぁ、
大変なことになっちゃうんだぞ!

A>
またかよ!
はいはい。
今度はどんな大変なことになるの?

監>
プールの前にシャワーを浴びないとなー、
シャワーを使わないことになるからなー、
水の節約になるんだぞー!
つまり節水だぞー!
特に今年の夏は水不足だから、節水には協力したほうがいいぞー!

A>
お前バカだろ?
だったらシャワー浴びないほうがいいんじゃん!
この、キンニク!

監>
あ、そっか。
じゃあ違う違う。
えーとね、えーとね、あっ!わかった!
プールの前にシャワーを浴びるのはねぇ、
ご飯の前に手を洗うのと同じことなんだよ。
体についているばい菌を洗い流すためなんだよ。

A>
「あ!わかった!」って、今思いついたのかよ!
そんなんでよく監視員やってるよな。

監>
さぁさぁ、適当な理由もわかっただろ?!
わかったらさっさとシャワーを浴びて来い!
この小学生どもが!

A>
なんだよその横柄な態度はよぉ。
まぁ、いいや。

(シャワーを浴びる少年AとB。)


B>
わーい!

監>
こらこら!
まだダメだぞ!
プールに入る前には、下半身を消毒するための消毒槽に入りなさい!

A>
えー?
まだ入れないの?
面倒くさいなぁ。

監>
こらこら!
面倒くさがらない面倒くさがらない。
消毒槽につかるのも大事なことなんだぞ。

A>
えー?
なんで大事なの?

監>
それはわかんないけど。

A>
バカ!
キンニク!
キンニクバカ!
自分で「下半身を消毒するため。」って言ったじゃないか。

監>
わかってるなら、やれよ!
小学!

A>
なんだよ。
小学て。
わかったよ。
やるよ。

(消毒槽につかる少年AとB。)


B>
わーい!

監>
こらこら!
「わーい!」
じゃねえよ!
まだだめだよ!
まだやることがあるだろうがー!!

B>
えー?
もうないよー。

監>
お前達、人工呼吸のやり方は知っているのか?

A>
バカにすんなよー。
人工呼吸のやり方くらい知ってるよー。

監>
そうか。
知ってるのか。
知ってるならいいや。

A>
っつーかさぁ、人工呼吸のやり方はお前が知ってれば十分だろ?

監>
ばか!
俺は泳げないんだぞ!
俺が溺れたらどうするんだ!
誰が俺を助けてくれるんだ!

A>
だめじゃん!
何でそんなんで監視員やれてるんだよ!

B>
わーい!(とプールに飛び込もうとする。)

監>
こらこら!

B>
なんだよ、しつこいなー。
まだ何かあんのかよ。

監>
プールサイドからプールに飛び込んだら危ないだろ!

B>
別に危なくねーよ。
いいじゃん。
周りに誰もいないんだから。

監>
ばか!
とびこんだところにいきなりトラックが走ってきたらどうするんだ!
飛び込む前にはちゃんと左右を確認しなさい!

B>
トラックなんか来るわけないだろー!
ちゃんと考えてしゃべれよ!
もういいよ。
とびこんじゃおっと!(バシャーン)

A>
おーれもっと!(バシャーン)

監>
あっ!
こらこら!
もー、しょうがないガキどもだなぁ。

(と言って、ボーッとしている監視員)

A>
お、おじさーん!

監>
・・・

A>
おじさんってば!

監>
・・・

A>
こらっ!
そこのキンニク!

監>
誰がキンニクじゃ!

A>
何ボーッとしてるんだよ!
タカシが溺れてるんだよ!
助けてよ!

監>
な、何ー?!
それは大変だ!
急いで助けないと。
それではまず準備体操を、と。
うりゃー!
とりゃー!
ぐりゃー!

A>
こらこらこらこらー!
何してんだよ!
そんなのはやんなくてもいいだろ!
しかもめちゃくちゃ激しい体操だし!

監>
バカ!
準備体操しないでプールに入るとなぁ、大変なことになるんだぞ!

A>
バカ!
お前がバカ!
タカシが死んじゃう以上に大変なことってあるのかよ!
もー、体操とかいいから早くしろよ!

監>
よし。
わかった。
じゃあ、シャワーを浴びて

A>
やると思ったよ!
それもやんなくていいんだよ!
消毒槽にもつからなくていいからな!

監>
わかった!
じゃあ、人工呼吸の練習

A>
今練習してどーすんだよ!
ボケー!
早くとびこめよ!
助けろよ!

監>
わかったよ。
そんなにガミガミ言うなよ。

A>
おいおいおいおいおい!
お前、その手に持ってるものは何だよ!

監>
そんなの見たらわかるだろ!
浮き袋だよ!
これが巨大なドーナツに見えるか!
巨大なドーナツ・・・。
うーん、そう思って見れば見えないこともないか。
これは巨大なドーナツだドーナツだドーナツだ。
ブツブツブツブツ。
うわっ!
こんなところに巨大なドーナツが!!
こんなに食べれないよー。

A>
えええええええーーーーーい!
おっ、前は、あっ、ほかっ!
何やってんだよ!
それは浮き袋なの!!
う、き、ぶ、く、ろ!!

監>
そうそう!
そーだよ!
これは浮き袋なんだよ!
俺は泳げないんだから浮き袋が必要なの!
別に大人が浮き袋使ったっていいだろっ!

A>
別に大人がどうしたこうしたの問題じゃねーんだよ!
浮き袋があるんだったら投げてやれよ!
そのほうがよっぽど助かるよ!
わかったら早く投げろよ!

監>
なるほど!
わかったよ!
じゃあ早速投げるよ!
でもその前に・・・(と言って浮き袋の空気を抜き始める。)

A>
ちょっちょっちょっちょっとちょっとちょっとー!!
何やってんだよ!
何で空気を抜いてんだよ!

監>
いや、だってさぁ、空気を抜いてちっちゃく丸めたほうが
遠くまで飛ぶし、コントロールもうまくつけれるじゃん?!
ねぇねぇ、俺って頭いいでしょ?!

A>
脳みそがキンニクでできてるにしては頭いいね。
って、バカ!
頭わりーんだよ!
それがもしちゃんと届いたとして、どーやって使うんだよ!

監>
お前のほうが頭わりーんだよ!
膨らませればいいだろがっ!

A>
お前のほうが、お前のほうが頭わりーんだよ!
溺れてアップアップしてるやつがなぁ、
どうやって膨らますことができるっつーんだよ!
浮き袋に入れる空気があるくらいなら自分の肺に入れるっつーの!!

監>
お前のほうが、お前のほうが、お前のほうが頭わりーんだよ!
っていうか、頭いいなー、お前。

A>
普通だよ!
お前が頭悪すぎるんだよ!
だからもういいから!
早く投げろよ!

監>
よし!
わかった!
どりゃ!!
(と言いつつ子供Aを投げる。プールに落ちる子供A。)

A>
ばばばばか!
何するんだよー!

監>
うっさい!
さんざん人をバカ扱いしやがって!
そんなに言うならお前が自分で助けろ!!

A>
わかった!
おい、タカシ!
肩につかまれ!

B>
ありがとう!
タケシ!
助かったよ!

監>
なんだよ、それ。
そんなに簡単に助けられるなら、最初から自分で助けてあげればよかったじゃん!
っつーか、俺は何のためにここにいるんだろうね。

A、B>
しらねーよ!!