A>
さてと、洗濯でもするか。
(と言って洗濯機のフタを開ける。
すると中に一人の男がいる。)
うわっ!!
B>
うわっ!!
A>
な、なんなんですかあなた!
こんなところで何をやってるんですか!
B>
こらこら!
何をいきなり質問とかしてくれてんだよこの野郎!
A>
えっ?!
ええっー?!
B>
人を驚かすだけ驚かしといて謝りもしねーってのはどういうことだよ!
人を驚かせたら、まず謝るのが筋ってもんだろ!
A>
え?
は、はい。
どうもすみません。
って、そんなところに入っているあなたの筋のほうが通ってないでしょ!
なんで私のほうが謝んなきゃならないんですか!
B>
おいおい!
今度は俺様を悪人呼ばわりかよ!
俺がどこにいようが、そんなの俺の勝手だろうが!
A>
いや、それはそうですけど、この洗濯機は私の持ち物ですから。
っていうか、この洗濯機が置いてあるこの部屋!!
この部屋自体が私の部屋なんですから、
どう考えてもあなたのほうが悪いですよね?!
不法侵入で訴えられても仕方のないことをしてるんですよ!!
もう、警察呼びますよ!
B>
え?
ここ、お前んちなの?
俺んちじゃないの?
A>
違いますよ。
私のうちですよ。
B>
うそ!
お前、俺を騙そうとしてるんじゃないだろうな?
A>
どっちかっていうと騙そうとしているのはあなたでしょ!
B>
なんだとこの野郎!
俺にケンカうってんのか?!
A>
い、いえ。
けっしてそのようなわけではないですが。
B>
そうか。
ならいいけど。
じゃあここの家が本当にお前のうちなのか確認するから、
ちょっとここの「ウール洗い」って書いてあるボタンを押してみてくれない?
A>
え?
これですか?
はい、いいですよ。
(ポチッ。ウィーン。グルグルグルグル。)
B>
あー、もういいよ。
だいたいわかったから止めて。
A>
はいはい。
(ポチッ)
B>
んー、やっぱり微妙にうちの洗濯機と違うみたいやな。
この水の味がちょっと違うもん。
A>
み、水の味かよ!
ウール洗いも、ウィーン、グルグルグル、も関係ないじゃん!
B>
お前、なんでタメ口なんじゃい!
A>
え?
あ、いえ、ごめんなさい。
B>
全く。
調子乗んなよ!
A>
は、はぁ。
B>
次から気ぃつけーよ。
で、お前が言うように、やっぱり俺んちじゃないのか。
ということは、ちくしょー、またあいつらの仕業だな。
A>
え?
あいつらって誰のことですか?
B>
あいつらと言えばあいつらだろ!
洗濯機を買うと一緒についてくる、あの小人達のことだよ。
さては俺が洗濯機の中で気を失っている隙にここまで俺を
運んできやがったな。
ちくしょうめ。
A>
なんですか?
その小人達って。
普通洗濯機を買ってもそんなのついてこないですよ。
B>
お前は本当に無知だなぁ。
ほら、ここ。
ここにでっぱりがあるだろ?!
これを押して回して引っ張って叩いて撫でると、
小人達がぞろぞろ出てくるような仕組みになってるんだよ。
最近の洗濯機ってのは。
A>
なんですかその操作の複雑さは!
最後の「撫でる」は手加減が難しいでしょ。
そんなに繊細な仕組みを作るくらいならもっと他のところに
お金をかけたほうがいいんじゃないんですか!?
B>
うるせーな。
俺にそんなこと言ってもしょうがねーだろ!
俺が作ってるわけじゃねーんだからよ!
じゃあ、実際に見せてやるよ。
ほれ。
小人達>
わーーーーーー。
A>
わー!
な、な、なんだなんだなんだ?!
ちっちゃい小人がいっぱい出てきたぞ!
B>
お前なぁ、ちっちゃい小人って何だよ!
どのくらいの大きさからちっちゃい小人なんだよ!
小人の標準サイズを知ってるなら教えてくれよ!
まぁ、いいや。
どーだい?
嘘じゃなかったろ?
A>
ほ、ほんとですね。
びっくりしました。
でも一番びっくりしたのは、
一発でその難解な操作がうまく行ったことですけどね。
B>
そうだろ!
俺は小人を出させたら日本一なんだよ。
A>
そうなんですね。
いやぁ、最近の洗濯機ってこんなになってるんですね。
全然知りませんでした。
では、この小人達はなんのためについているんですか?
B>
それはもちろん汚れを落とすためだよ。
洋服に、落ちそうも無い頑固な汚れがついているのを発見すると、
そのちっちゃい手で丁寧にもみ洗いをしてくれるんだよ。
A>
あ、そうなんですか。
それは便利ですね。
B>
だろ!?
便利だろ!?
でもな、困ったこともあってな、
こいつらすごくイタズラ好きなんだよ。
俺が洗濯機の中で気を失っているとこっそり違う洗濯機に運んだりしやがるんだよ。
本当に困ったもんだよ。
A>
それはあなたが洗濯機の中で気を失わなければいいだけの話では?!
B>
お前はアホか!
俺だって洗濯機の中で気を失ったりしたくないわい!
だけど洗濯物と一緒にグルグル回ってると目が回って気持ち悪くなって
気を失ってしまうんだから、しょうがないだろ!
A>
だったら洗濯機の中に入らなければいいんじゃないんですか?
なんで洗濯機の中に入ったりするんですか?
B>
なんだよ!
お前は人の趣味まで否定するのかよ!
お前んちの洗濯機だけではなく、俺んちの洗濯機の中にも入っちゃいけないってのかよ!
え!!
A>
そ、そんなに怒んないでくださいよ。
私的にはあなたがあなたの家の洗濯機に入っても入らなくても全然かまいません。
B>
だろー?!
だったら別にいいじゃねーか!
ぐだぐだ言うんじゃねーよ!
A>
す、すいません。
でもですよ、あなたが洗濯機に入らなければ小人達もイタズラをしないわけですから、
B>
だからなんで俺が洗濯機に入っちゃいけねーんだよって言
A>
あー、もう、うるさうるさい!
(ポチッ。ウィーン。グルグルグル。)
B>
うわー!
あーーーーーー!
目が、目が回るーーーー!
気、気持ち悪ーーーーーーー!
バタン、キュー。
A>
よしよし、気を失ったぞ。
これで小人達の出番だな。
小人達>
わーーーー。
A>
おっ!
出てきた出てきた。
小人達>
わーーーー。
ぐわーーー。
バタン、キュー。
A>
なんだよ!
小人達まで目ぇ回してるじゃん!
だめじゃん!
っつーか、それを見ている俺も目が回ってきたよ。
うわー!
バタン、キュー。
中人達>
わーーーーー。