天狗



村長>
こんにちはー。
天狗さん、いますかー?

天狗>
はーーーーーーい。
(戸を開ける天狗)
あ!
これはこれは村長さん。
お久しぶりです。

村長>
久しぶりですねー。
元気してましたか?

天狗>
はい。
元気してましたよー。
そういう村長さんもお元気そうで。

村長>
いやぁ、おかげさまで。
私の息子も天狗さんの鼻以上に元気ですしね。
ぐわはははははは!

天狗>
わははは!
村長さん、絶好調ですね!

村長>
いやぁ、めんぼくない。
わははははは!

天狗>
あはははー!
ところで今日はそんなシモネタを言いにきたわけではないですよね?!

村長>
はい。
そうですね。
実は今日は天狗さんにいろいろとお願いがあって参りました。

天狗>
ほほう。
私にお願い、ですか。

村長>
ええ、そうです。

天狗>
いいですよ。
私にできることであればなんでもご相談に乗りますよ。

村長>
ありがとうございます。
そう言っていただければ私としても頼みやすいです。
では、まず一つ目のお願いですが、
よろしいでしょうか。

天狗>
はい。
どうぞ。

村長>
村のはずれにゴミの集積所があるのはご存知ですか?

天狗>
はい。
知ってます。

村長>
そうですか。
やはり知ってましたか。

天狗>
ええ。
それはもちろん知ってますよ。
私もたまに利用させてもらってますから。

村長>
で、ですね、
最近そこの集積所が荒らされて困っているんですよ。

天狗>
あ、そうなんですか。
それで私に見張りをして欲しいというお願いですか?

村長>
いえいえ。

天狗>
では、荒らされた後の掃除をやって欲しいとか?

村長>
いえいえ。

天狗>
あ、そっか!
荒らした犯人を捕まえて欲しいってことですか?

村長>
いえいえ。

天狗>
そうですか。
これも違うんですか。
では、お願いというのは何でしょうか?

村長>
はい。
実は、ゴミを荒らさないで欲しいというのがお願いです。

天狗>
はい?
あのー、言ってる意味がよくわかんないんですけど。

村長>
そうですか?
じゃあもっとわかり易く言いますね。

ゴミを荒らすな!!
散らかすな!!
ボケ!!

天狗>
あらららー?
まさかとは思いましたが、それ、やっぱり私に言ってるんですね?!
ちょっと待ってくださいよー。
私、荒らしてないですよー。

村長>
嘘をつくな!!
お前がゴミを荒らしているのを見たという村人がいるんだ!

天狗>
濡れ衣ですよ。
私じゃないですよ。
いったい誰がそんなこと言ってるんですか!

村長>
天狗さんの隣の家に住んでいる山村さんですよ。
山村さんが言うには、
「昨日、私がゴミを捨てに行ったんですね。
  するとなんだかゴミを漁っている人がいるじゃないですか。
  そこで、『何してるんですか?』と言うと、いきなり
  『ウー』と唸り、真っ白い牙を剥き出しにしてこちらに向かってきたので、
  手に持っていた杖で叩こうとすると、『ワンワン』と吠えて
  逃げていきました。」
ですって!

天狗>
「ですって!」
じゃないですって!
それ犬ですよ!
犬!
どう考えても!
なんでそれが私になるんですか!

村長>
あ、そっか!
犬か!
そうですね。
犬ですね。
もう「ゴミを漁っている人がいる」ってところだけで
天狗さんが犯人だと思っちゃいました。

天狗>
あなたの私に対する認識はどんなんなんですか!

村長>
いや、天狗だから。

天狗>
天狗がなんでゴミを漁るんですか!
そんな話聞いたことないですよ。

村長>
そう言われてみればそうですね。
いやぁ、申し訳ない。
お恥ずかしい

天狗>
もう、村長さんったら、面白いんだから。

村長>
いやぁ、勘弁してくださいよ。
じゃあ次のお願いなんかしちゃおっかな。

天狗>
ええ、いいですよ。

村長>
はい。
じゃあいいますね。
あなたは天狗なので村の子供たちが面白がって
あなたのことをからかったりすることがありますよね?!

天狗>
そうですね。
そういうこともありますね。

村長>
まぁ、からかう子供たちのほうが悪いんですが、
そういうときは怒らないで我慢してやって欲しいんですよ。

天狗>
そのくらいわかってますよ。
ちゃんとうまいこと対応してますよ。
子供のやることなんだから、可愛いもんじゃないですか。

村長>
本当にそうですか?

天狗>
え?
またまた村長ー。
いったいどういう意味ですか?

村長>
おや?!
とぼけるんですか?
じゃあ、いいでしょう。
はっきり言いますけど、あなた、この間、子供に大怪我させましたよね?!

天狗>
えーーー?!
そんなことしてないですよ。
するわけないじゃないですか。
また犬と間違えてるんじゃないですか?

村長>
いえいえ。
そんな事ないですよ。
いったいどこのアホが犬と天狗とを見間違えるっていうんですか。

天狗>
さっき山村が犬と天狗を見間違えたっていう話をしたばっかりだろっ!!
じゃあ今度は誰が見たんですか。

村長>
隣の山村さん。

天狗>
また山村さんですか!
もう山村さんが話しているっている時点で
その話に信憑性がないことくらい、自分で判断してくださいよ!
村長!

村長>
いやいや。
今度は絶対間違いないですよ。
じゃあ話ましょうか?

山村さんから聞いた話によると、
子供たちが牛を取り囲んで、叩いたり蹴ったりして
いろいろといたずらしてたらしいんですね。
すると怒った牛が角で子供に大怪我を負わせたらしいんですよ。

天狗>
牛やん!!
牛て、自分で言うてますやん!
村長さん、頭おかしいでしょ!

村長>
いえいえ。
まだ話の途中ですから。

天狗>
あ、そうなんですか?

村長>
そうですよ。
ちゃんと最後まで聞いてくださいよ。
で、その牛だと思っていたのが、近くでよく見てみると

天狗>
それが私だったとでもいうんですか?

村長>
いえいえ。
そうではありません。
よく見てみると、なんと冷蔵庫だったらしいです。

天狗>
どんな見間違いですか!
だったら私、関係ないじゃないですか!
そして、無機物の冷蔵庫がいったいどうやったら
子供に大怪我を負わせることができるんですか!

村長>
だから最後まで聞いてくださいって。
まだ話の途中ですよ。

天狗>
あ、そうなんですか?
すみません。

村長>
で、
あれ?
でも冷蔵庫みたいだけど、天狗っぽくも見えるな。
もしかしたら天狗かな?
いやいや、やっぱり冷蔵庫かな?
ん?
天狗?
冷蔵庫?
天狗?
冷蔵庫?

ってことで、悩んだ山村さんが私のところに相談に来たんですよ。
で、二人で話し合った結果、天狗さんが犯人だという結論に至りました。

天狗>
至るな!
勝手に決めんな!
っつーか、山村も相談すな!
相談とかそういう問題じゃないだろ!
山村がその場でしっかりと見て確認すればいいだけの話じゃないのか!
もし山村がしっかり見てもわからないようなアホだとしたら、
そういう場合は大怪我した子供に聞き込めよ!
わかったか!

村長>
わかりました。
では、天狗さんは犯人ではないんですね?!

天狗>
そんなの当たり前だろ!
確認すんなよ!

村長>
そうですかー。
でも変ですよ。
犯人が天狗さんじゃないとしたら、
犯人は冷蔵庫だということになってしまいますが、
そんな無機物の冷蔵庫が子供に大怪我を負わせることなんて
できるわけないじゃないですか。

天狗>
それ、さっき私が言ったから。
で、どーせ結局は、山村が冷蔵庫と牛を見間違えただけなんじゃないんですか?

村長>
そんなバカな。
牛と冷蔵庫なんかを見間違うわけないじゃないですか。

天狗>
それはお前が山村から話を聞いたその時に山村にそう言え!
アホか!
ボケッ!

村長>
まぁまぁ、そんなに怒らないで下さいよ、ピノキオさん。

天狗>
だ、誰がピノキオやねん!
天狗!
天狗!
さっきから天狗さん天狗さん言うてるがな。

村長>
わかりました。
じゃあ子供たちを大怪我させたのは
天狗さんじゃないということで問題は解決です。

天狗>
まぁ、そうね。
でも犯人が誰だかわかってないから本当の解決ではないけどね。

村長>
では次のお願いです。

天狗>
えー?
まだあるんですか?
もうー、今度はちゃんとしたお願いなんでしょうね?!

村長>
ええ。
今度もちゃんとしたお願いです。

天狗>
今度も?

村長>
今度も。

天狗>
今度は?

村長>
今度も。

天狗>
今度は!!

村長>
今度も!!

天狗>
あ、っそうですか。
わかりました。
今度も、というのであれば、また変なことを言うってことですよね。
わかりました。
今日はもうこのへんでお引取りください。

村長>
今度はちゃんとしたお願いです。

天狗>
いいでしょう。
聞きましょう。
なんでしょうか?

村長>
はい。
では単刀直入に言いますね。
変な歌を歌うのをやめて欲しいんです。

天狗>
え?
変な歌?
もしかしてお風呂に入っている時に歌っている鼻歌のことですか?

村長>
いえいえ。
違います。
毎日夕方5時になると歌っている、夕焼け小焼けの歌の事です。
山村さんから毎日うるさいって苦情が来てます。

天狗>
それは町内放送で毎日夕方5時になると放送している曲だろ!
村長、あんたおかしいよ!
ちょっと考えれば放送だってすぐにわかるだろ!
元はと言えばお前が放送しようって提案したんじゃねーのかよ!
苦情が来てるんだったらそれをやめさせればいいだけの話だろ!

村長>
村なのに町内放送ってあなた(笑)。

天狗>
ぐわららーーーー!
そんなのどーでもいいだろー!
お前をこの俺様の長い鼻でスコーンとかっとばして
外野スタンドにほうりこんだろか!

村長>
まぁまぁ、落ち着いて、ピノキオさん。

天狗>
うわー!
嘘をつくと僕の鼻がどんどん伸びていくよー!
どんどんどんどん伸びちゃうよー!
どんどんどんどん伸びちゃうよー!
どんどんどんどん
どんどんどんどん
どんどんどんどん
ドーーーーーーン!!(ポカッ!)

村長>
いたっ!
痛いですよ
たたかないでくださいよ。

天狗>
うるさいっ!
もう帰れ!
帰ってくれ!

村長>
えー?
まだお願いごとはいっぱいあるのにー。

天狗>
うるさいうるさい!
もういいよ!
結局全部こんな感じなんだろ!

村長>
そうですね。
そう言われてみれば全部そうかもしれません。

天狗>
そうなのかよ!
認めるのかよ!
よりガックシ来るよ!

村長>
じゃあちょっと願い事を考え直してきます。

天狗>
うん。
そうしろ!
そうしてくれ!

村長>
じゃあまた来ますね。
失礼しましたー。(バタン)

天狗>
やっと帰ったか。
全くもう、なんなんだよあいつは。
あれでよく村長になれたよな。


っつーかさぁ、
俺、
天狗である必要あんの?