お別れのプレゼント


また会おうね。


そう言って別れたあの日以来、もう彼に会う事はなくなった。
大好きだった彼がいなくなってから三年、彼女はずっと家に篭りきりだった。
二人を知る友人達が心配して何度も家を訪ね、互いの両親も彼女を気遣った。
それでも、彼女の中から彼の記憶が消える事などなかった。

ある日、彼女に一通の手紙が届いた。
滅多に彼女宛の郵便物など来ない為、いぶかしながら差出人を見る。
差出人の名は、いなくなった彼だった。


悪い冗談だと思った。

反面、淡い期待も抱いた。

彼が事故で病院に運ばれた時、病室で最期を看取ったのは紛れもなく彼女だ。
だがそれも、全て悪い夢なのではないかと、何処かで期待している自分がいた。
悪戯ならば捨ててしまおうかとも一瞬思ったが、彼の筆跡を間違えるはずがない。
恐怖と期待で震える腕を押さえ、そっと封を開けた。





やあ、元気か?
実はこれ、科学館の企画でさ、五年後へ手紙を書こうってやつなんだ。
本当は自分宛に書くらしいんだけど、俺だけずるして君に書いた。

五年後の君は何してる?
俺は隣にいるのかな?もしいなかったら、こんな手紙送ってごめんな?
君がどんな人生を歩んでいようとも、君が笑っている事を祈るよ。

なんか、何書いていいかよくわかんないな、これ。

どうしても君に伝えたい事だけ、書くな?
五年後の俺が何をしているかわからないけど、五年前の俺は確かに君が大好きだったよ。
そしてできれば、五年後の俺も君が大好きでいたいと思う。

そして何より、君が幸せでありますように。
これが、俺の望みであり願いです。
じゃあ、手紙はこの辺で。





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