もう忘れるから
あれからどれだけ経ったんだろう。
メールもずっとしてたし、電話もした。家にも行ったし、手紙だって書いた。
だけど貴方が私に何の反応も示さなくなって、どれだけ経ったんだろう。
私が辛いと泣いた時、貴方はすぐに来てくれた。
私が会いたいとこぼした時、貴方は笑って迎えに来てくれた。
貴方が苦しいと呟いた時、私は急いで貴方の家へ向かった。
貴方が会えると笑った時、私は嬉しくて前の日から寝れなかった。
全部が過去の話で、全部が思い出で、最後にお別れすら言ってくれなかった貴方。
ただ一言、「別れよう」とさえ言ってくれれば、こんなに貴方を追い求めたりしなかったよ。
貴方がいつの間にか、違う女性を見ていたのも知っていたよ。
私と話さなくなったのも、私と目を合わさなくなったのも、全部知ってたよ。
それでも、貴方を諦められなかったのは、どこかで期待をしていたからなんだよ。
せめて、私の期待を、完全に殺して行って欲しかったよ。
貴方にとって私は、もう昔の事なんだろうね。
私にとって貴方は、まだ現在の事なのにね。
ゆっくりと深呼吸をして。
携帯電話のメモリを消して、貴方の住所がわからないように、地図も手紙も捨てた。
私はずっと貴方の影だけを追ってきて、貴方が先に進んでいる事すら忘れていたの。
私が隣に居ない貴方の未来なんて、見たくなかったの。
だから忘れたふりをしていたの。未来がある事すら忘れた事にしたの。
でももう、道は別れたから。
ここから先は、違う未来に続いているから。
貴方の事は忘れないよ、でも、この気持ちはもう忘れる。
貴方が好きで仕方ない「私」を、もう忘れるから。
だから今だけ、まだ貴方を好きな「私」がいる今だけ。
このまま泣いていてもいいでしょう?
この涙の中に、昔の「私」が溶けて流れ落ちればいい。
そしたら、全て流れ落ちたら。
その時こそ、「優しかった貴方」を忘れるから。
END