世界が変わる音


真夜中、目を瞑ったまま毛布を深く被る。
暗く寒いこの部屋の中で、音が響き渡る。
言葉には出来ないような音がいくつも、生まれては爆ぜる。
散り行く時ですら、美しい音色を漏らして・・・


世界が変わる音。
世界が生まれ変わろうとする音。


この後に何が待っているかなんて、わからない。
ただ、この世界は生まれ変わろうとしている。
綺麗な音で、耳障りな音で、誰にも気付かれないようにそっと形を変える。
私が今まで見ていた世界とは、今まで感じていた世界とは、違うものへと変わっていく。
どうして誰も知らないのだろう、どうして誰にも知らせないのだろう。
世界は確実に、こうして夜毎変わっていくというのに。
この音を聴いて、人々は何を想うのだろう。
不変の世界などありえないと言う、事実を突きつけられたその時に。
人々は何を想うのだろう。

私は黙って耳を研ぎ澄ませるだけだ。
この先に何があっても、かまわない。
自分自身も、変わろうとしているのだから。
世界が変わるという事。
それは、自分が変わるという事。
夜毎、誰にも聴こえないような音を立てて違う自分へと変わっていく。
毎日毎日が、違う自分。
私を中心とするこの小さな「世界」では、「私」と「世界」は同列であり同意義だ。
だから私は、毎日この部屋の中で「世界」の変わる様を見る。
そうして私は、この部屋の中で「私」が変わる様を聴く。



そう、この小さな暗い部屋の中で、確かに私が変わっていく音が響いているのだ。





END