雌阿寒岳に登る

(2003年6月10日)

トップに戻る
旅行記メニューに戻る


 今シーズン最初の山歩きは雌阿寒岳です。毎年一度は登っているお気に入りの山です。今回はまだ登ったことのなかった阿寒富士にも足を延ばしまし た。


 5時に起床。朝食を取ってから阿寒に向かう。途中コンビニによって、麦茶と昼食を買う。
7時にオンネトー野中温泉(雌阿寒温泉)に着く。天気は快晴。さっそく登山靴に履き替え、歩き始める。
標高705mの登山口から1合目2合目あたりまでは深い樹林帯の中を歩く。
  
 3合目4合目ぐらいまではハイマツ帯の中を歩く。シーズンはじめの山歩きはとかく足取りが重い。
冬の間トレーニングを積んでるわけでもなく、確実に1年分年を取り、体力は落ちている。だから今日も無理をしないよう心がける。
頻繁にデジカメで写真を撮ったりして休憩をはさむ。
 4合目から先は岩場が続く。背後にはオンネトーが見える。エメラルドグリーンの湖面を深い森の中に浮かび上がらせている。この風景がたまらない。
 雌阿寒岳に登るたび思うのは、この山はとても立体感のある山だと言うこと。深い樹林帯から、ハイマツ帯、森林限界をこえて岩場へと、ぐいぐいと標高が上 がっていく。そしてその変化が目で見下ろせるのいい。
  
 8合目の岩場の陰には高山植物の葉が見え隠れする。この時期はまだ少し早いのか花はほとんど見ることはできない。
 9合目からはポンマチネシリ火口がのぞけ、立ちのぼる噴気が見える。火口の縁を少しずつ登っていくと月面のクレーターのような形をした中マチネシリ火口 が見える。その向こうには雄阿寒岳と阿寒湖が見える。
 9時5分1499mの頂上到着。リュックから麦茶を出し、しばし休憩。
  
 風も微風で心地いい。今日は時間もあるし、天気がいいので、阿寒富士に登ってみることにする。雌阿寒岳頂上からオンネトーキャンプ場へ降りるコースを8 合目まで下る。そこから阿寒富士への分岐に分かれる。そのあたりはガンコウランやメアカンキンバイ、ミネズオウなどの高山植物が群生している。コマクサの 花も二輪見つけた。まさにカムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)と言った感じだ。
  
 阿寒富士は火山礫が堆積してできたような山で、細かい砂礫に足を取られながら登る。10歩足を進めては高鳴る動悸を鎮める。汗が噴き出す。30分ぐらい で1476.3mの頂上に到着。いつも見る雌阿寒岳の火口を今日は違った角度から見ることになる。阿寒富士は遠くから見ると三角錐のようになっているのか と想像していたのだが、南側にも尾根が続いていた。ちょっと霞んではいたが、道東一円を見通すことができた。
  
 下りは砂礫がクッションになって、とても楽だった。ただ野中温泉側に戻るコースをとったので、8合目分岐からまた雌阿寒岳頂上へと登り返すことになる。 雌阿寒岳頂上から登山口への下りは、疲れているのか、けっこうきつくて、登りと同じだけの時間がかかった。足の筋肉がこむら返りを起こしそうになってい た。やはり筋力や体力は落ちてきている。無理は禁物ということを肝に銘じる。

 大きい自然に対面するとき、人間はそのちっぽけな存在に気づかされる。日々の不安や憂鬱、人と人とのいさかいなど、たぶん自然界にとって取るに足らない ことなのだろう。人の一生より遙かに長いサイクルで、雌阿寒岳は噴気を出し続け、高山植物はこの夏もまた小さな花を開かせる。つまらない見栄やこだわり は、少し急な斜面を登ると、激しい動悸と噴き出す汗の前に、ものの見事にうち砕かれる。人は野生動物に比べても、運動能力の劣った不器用な生き物にすぎな い。だから、人は自然を前にしたとき謙虚であらねばならない。柄にもなく、そんなことを考えさせられる今回の山歩きだった。


トップに戻る
旅行記メニューに戻る