千葉県市川市のみやお整形外科(整形外科 リハビリテーション科 膝足関節外科)のHP


Q)中高年者の膝の痛みについて


〜考えられる疾患〜

1.変形性膝関節症

特に思い当たることがないのに膝が痛んだり動きが悪くなった場合、ほとんどがこの病気で
す。膝の軟骨(骨の表面をおおう柔らかい骨でクッションの働きをしている)が傷ついたりすり減
ったりするために、歩いたり階段の上り下りで膝が痛んだり、曲げ伸ばしがしにくくなります。
ひどくなると膝に水が貯まったり、痛くて歩けなくなったりします。

2.膝半月板損傷

半月板とは軟骨と軟骨の間にあるクッションで、これに裂け目が入ってきます。原因としてはひ
どい捻挫や、仕事や運動などでの過大な負担が多いですが、膝への負担の積み重ねで徐々
に擦り切れてくることもあります。切れ方がひどくなると曲げ伸ばしなどで引っかかって痛みを
起こします。

3.骨壊死

膝の軟骨の下にある骨が直接いたんで潰れてくる病気です。進行すると表面の軟骨にまで損
傷が及んで強い変形を起こしたりします。痛みは動いているときだけではなく、夜間に激痛を
起こすこともあります。

4.慢性関節リウマチ

全身の関節に関節炎が起きる病気であり、膝だけではなく手や肘など体のあちこちの関節が
腫れて痛むこともあります。進行した時にひどい関節をおこすことがあります。

〜自宅での生活の過ごし方やリハビリ〜

膝が痛いと言って病院にこられる患者さんとお話ししていると時々「運動不足のせいだと思う
ので、頑張って歩いています。」というお声を聞きます。中には「歩くと痛いけどリハビリだと思
って我慢してます」とおっしゃる方もいますが、はたして歩く事は膝にとっていいのでしょうか?
確かに足の衰えを防ぎ、心臓や肺などに適度の負荷が加わる点ではいいでしょう。しかし膝の
痛い方は、膝のクッションである軟骨や半月板が傷ついていたり炎症が強い状態であり、無理
して歩くことでさらに症状が悪化する可能性もあります。したがって「膝が痛まない程度に歩
き、痛みが出たら少し座って休む」ようにして下さい。靴は踵の高いものや固くて重いものは避
けて足にあった底の柔らかいものを選んで下さい。
次にリハビリです。膝が悪いと周りの関節の袋や靱帯、筋肉などが固くなってますます痛みが
ひどくなるので膝を柔らかくする運動をこまめに行いましょう。膝の力を十分抜いて、少し痛むく
らいまでしっかりと曲げ伸ばしして下さい。お風呂などで膝を暖めてから行うといいです。膝の
周りの筋肉を鍛える運動も大事です。椅子に座りゆっくりと膝の曲げ伸ばしを行います。この運
動で膝の中が痛む場合は、仰向けに寝た状態で膝を伸ばしたままで足を上げ下ろしするような
運動に変えて下さい。回数は10回程度から始めて徐々に増やして下さい。繰り返しが大事で
すので、くじけずに頑張りましょう。

〜外用剤(湿布、軟膏)〜

膝に限らず体が痛くなったという時にまず思いつく薬、それは「湿布」だと思います。この湿布
はおおまかに分けると冷たい湿布と温かい湿布の2種類があります。冷たい湿布は消炎鎮痛
剤(痛みと腫れをやわらげる薬)を含み、急性期の強い腫れや痛みから慢性の痛みのすべて
に効くいわば万能薬といえます。一方温湿布はトウガラシの粉などを含み、局所に温感を与え
また血の流れを良くしてくれますが、皮膚への刺激が強くかぶれやすいという欠点がありま
す。どちらを使うかですが急性期で腫れや痛みが強い時期には冷湿布、慢性期には温湿布が
良いと思われます。また外用剤には塗り薬もあり、形状はクリーム、ゲル、ローションなど、含
まれる薬も痛み止めから血行改善剤まで様々あり症状に
応じて使い分けています。湿布に比べて使用感は弱いですが、よく擦り込むことでマッサージ
効果も期待できます。

〜内服薬〜

痛みを抑えると同時に関節の炎症も抑える薬(消炎鎮痛剤)が主に使われます。痛みや腫れ
が強い時には非常に有効です。ただし胃腸に負担がかかるので胃薬と一緒に処方されること
が多いです。

〜注射薬〜
膝関節の痛みや炎症を抑える薬(ステロイド剤)と関節のクッション剤となる薬(ヒアルロン酸)
の2種類があります。ステロイドは長期にわたって使うと逆に軟骨を痛めるので、炎症や痛みの
強い時に使われることが多いです。ヒアルロン酸は副作用も少なく、効果も優れており、週1回
のペースで注射を行います。

〜手術療法〜

術式は病気によって異なるので病気ごとに説明をします(リハビリの期間は施設によって多少
の違いがあります。)

〜変形性膝関節症(膝の軟骨がすり減り形が変わってくる病気)の場合

1.人工膝関節手術

すり減り傷ついた軟骨を削り取って金属をかぶせる方法です。痛みの改善には非常に有効で
す。ただし膝の曲がりがやや悪くなること(あぐらがかける位)と、10年前後でゆるんで再手術
が必要になることがあります。リハビリは術後1〜2日で膝の曲げ伸ばしや立つ練習を始め、
1〜2ヶ月で歩いて退院となります。

2.高位脛骨骨切り術

脛骨(すねの骨)の膝のすぐ下を切って曲がった足をまっすぐにすることで、いたんだ軟骨にか
かる負担を減らし痛みをとる手術です。人工的に骨折を作り又つなげる手術と同じなのでリハ
ビリにかかる期間はやや長く1〜2ヶ月は松葉杖が必要になります。体重の重い方や軟骨の傷
んでいる部位や程度によっては適応にならない場合がありますが、自分の骨や軟骨が残せる
ので、比較的若くて肥満のない方に主に行われます。

3.関節鏡視下デブリードマン

膝に1cm位の創を2〜3箇所つけ、そこから関節鏡(膝の内視鏡)を入れて中を見ながら傷つい
た軟骨を削って滑らかにしたり細かい骨のかけらなどを取り除いたりする手術です。リハビリは
もっとも短く入院期間も4日〜2週間程度です。軟骨の傷み方が軽いものに有効です。

〜半月板損傷の場合

関節鏡で膝の中を見ながら切れた半月板を削って滑らかにしたり、かけらを取り除いて治療し
ます。早ければ1〜2日で歩いて退院できますが、
しばらく膝に水がたまることもあります。

〜骨壊死の場合

膝の外から壊死した骨を取り除いて他の部位から取ってきた骨を移植する方法や軟骨そのも
のを移植する方法などが行われます。またO脚など膝の形が悪い事が病気に影響している場
合には、高位脛骨骨切り術を行って負担を減らします。これらの術式は自分の骨や軟骨が使
えるという利点がありますが、リハビリに期間がかかるのが欠点です。程度がひどい場合には
人工膝関節置換術を行う事もあります。

〜関節リウマチの場合

関節炎がひどく痛みや腫れがひかない場合には、炎症を起こしている膝の中の滑膜(かつま
く)という膜を切除して関節炎を鎮める方法(滑膜切除)が行われます。術後早くから膝の曲げ
伸ばしや歩く練習ができますが、病気の進行を遅らせるだけで効果は一時的であるという意見
もあります。骨の変形が激しい場合や動きが悪い場合には人工膝関節置換術を行います。

以上主要な手術についてお話しました。手術を受けるのは勇気がいりますが、適応をきちんと
選べば、満足いただける治療法ですので、痛みの治まらない方は主治医とよくご相談の上で
受けられるとよいと思います。



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