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紅葉の旅
      宮崎大学    林 芳

 10月からずっと宮崎は晴れの日が続いている。奇麗な秋の空に誘われて紅葉の旅に出たくなった。宮崎の紅葉名所といえば、やはりえびの高原だと思う。日本に来て今年で三年目に入るが、行きたい場所はいっぱいある。中でもえびの高原にはまだ行ったことがないので、一度は行ってみたいとずっと思っていた。そんなところに、宮崎地区中国留学生会から秋の紅葉を見に行くメールが届いた。「やった」という気持ちと「そこに何があるのか」と我が家では一晩中えびの高原に行く話で持ち切りだった。まだ旅まで一週間あった。今度の旅は、沢山のコスモスが咲く生駒高原を見たり、えびの高原の山を登ったり、韓国岳の山裾に岩を積み上げた露天風呂を体験したりもする。

 日曜日の朝、予定の時間に大学からなかなか出発できなかったのは、えびの高原の紅葉を見たい人が予想より多かったからだ。私は、「これは、楽しい旅が始まるぞ」と私はそう思った。十時になって、やっと44人を乗せたバスが出発することになった。
 バスに乗ってから約1時間ぐらいして、最初の到着場所であるコスモスの名所―生駒高原に着いた。確かに、コスモスの満開時期は過ぎでいたが、周囲の山々と真っ青な空の下で若者の笑い声や、高原の澄み切った空気にかすかな花の香りが漂っていて、長い間バスに乗っていた疲れからも解放され、五感も満足した。
うららかな日差しの中で、広い芝生の上と花壇の中で取った写真はとてもよかった。特に勧めたいのはそこのアイスクリームだ。三百円のアイスクリームはミルクがたっぷりで、普段あまりアイスクリームを食べない私だが、知らず知らずのうちにすべて食べてしまった。
 又、バスに乗って次の目的地に行く途中、歌のゲームをした。上手か下手か、中国の歌か、日本の歌か、そういうことは関係なく、ただ皆が楽しければいいのだ。

それから最終目的地えびの高原に着たとたん、目を見張るような澄みきった青空とコバルト色の湖に魅せられ、童話の世界へと私は引き込まれた。水面に映った山々の紅葉イキ見事な景色となっていた、そのすばらしさといったらなかった。「さすが名所、ここに来てよかった」と思わず呟いた。えびの高原に来た人は皆、山に必ず登りたくなるにちがいない。山に登る道は自然の遊歩道で、でこぼこがあったり、険しい道もあるが、大学で毎日教室に座って勉強する私たちにとってはいい運動だった。山の中腹まで登って、別の方角を見ると二つの景色に分けられていて、自然の大いなる魅力で別世界のようだった。一方の景色が黄色っぽく感じるのは、山野に溢れるほどススキが自生しているからである。このススキの色が日だまりの中で淡く美しく、大学のキャンパスとはちょっと違う雰囲気があった。バスから遠くを見ると、淡い黄色の中に赤や金色に染まった紅葉が重なっていて、西洋の油絵の中によく見られるようにすばらしく、又、あたかも燃えているように見え、とても奇麗だった。そこでの景色を見ながら、弁当を食べるのは人生の幸せを感じた。又、他の一方の景色は硫黄山からのイオウに染められ赤茶けていて、植物がぜんぜん見られなかった。多くの大岩石が積み重なり、全く別の趣きになっていた。友人に聞くと、この死火山は、昔は硫黄の匂いがとてもきつかったが、今はほとんど感じられなくなったそうだ。沢山の外国人の日本に対するイメージの中でも火山は代表的なものであろう。初めて火山を見る私にとっては新鮮であり、神秘でもあった。

自然の豊かさを見るだけでも楽しいが、ススキに触って、仲間と美味しい物を食べて、さらに、写真を取れば、えびの高原の秋をもっと楽しめると思う。もし、えびの高原に行ったら、ぜひ見て、触って、味わってほしい。
残る2時間の旅は、えびの高原の代表的な自然観察道を通り、約1時間半かけて3つの池を見て回った。山々の紅葉や野生の鹿なども見て、様々な自然を体感できた。もし、時間があってもっとゆっくり歩けたら、楽しみは盛り沢山だったと思う。
 のびのびと自然に接することができて楽しかった。もし、今度機会があればまたえびの高原を訪れたい。最後に、いろいろお世話をしてくださった宮崎県日中友好協会の皆さんと宮崎地区中国留学生会の皆さんに心から感謝したい。

えびの高原にて 硫黄山 生駒高原 観音池にて

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