第12章 釣然なるままに・・・〜恐怖のバスとアフリカンDAYs〜









帰国に日が近づいている。

帰国の飛行機はナイロビ発。

おれは北上し、タンザニアを目指さねばならなかった。

いったんマラウイの首都:リロングウェにでて、

そこからタンザニアの首都までの国境をまたいだ長距離移動バスを予約した。

首都だけあって、通信手段はしっかりしている。

俺は航空会社に連絡し、リコンファームを済ませた。

リコンファームとは予約再確認、「確かに乗ります!」という念押しだ。

これをやらないと、チケットはあっても座席がないというとんでもはっぷんな事態が起こりかねない。



帰国便は10月8日、既に3日から後期の授業ははじまっている。




予定通り帰らないと

大学の授業登録に間に合わない。



晴れての男確定なってしまう。(“一流”ではない)



一つ上のオトコ・・・

ぜんぜんかっこよくないぞ!!笑


とにかく無事にリコンファームを済ませた俺は、あまったマラウイ通過をタンザニア通過に両替し、少し早めにバスターミナルへと向かったのだった。









出発は午後7時。



辺りはだんだん暗くなってきた。




出発時刻を待っていると、恰幅のいい黒人男性に声をかけられた。


ケニアに帰るのだという、パッと見で凄くお金持ちとわかるこの方。
(名前を聞いたが、この後出現するあまりに強烈な男のせいで忘れてしまった。)

だいぶお酒が進んでいるようで

なんやかんやで気に入られ、出発まで屋台でおごってもらえることになった。のだが・・・。









彼の連れの男が現われた。



既にゴキゲン状態である。

まだ明るいが、完全にトランスしておられると見て取れた。







「この人にはあまり関わらないことにしよう・・・」








どこの国の出身で、いつアフリカに来たのか、

日本では何をしていて、いつ帰国するのか、

・・・そんな旅先での初対面で耳にタコができるほど繰り返した質問の嵐に耐える。








しかも相手は酔っ払いである。


何言ってるのかわかんないし、ツバとばすし、

耳が遠くなって何度も繰り返さなきゃいけないし・・・


既にはじめに知り合ったおじさんよりは、

後から現われた酔っ払いのほうがトランス男のほうが俺に食いついてきていた。



暑苦しい顔が目の前30センチまで接近してくる




ようやく俺が質問できる雰囲気になった。


とりあえず名前を聞いてみた








「What’s your  name?」


・・・1秒後、トランス男の口から出た言葉に俺は耳を疑った
































































































「チャオズ」























「は?」








































「・・・・お名前は?」






































「チャオズ」








「へ?」















状況がわかっていただけるだろうか?

地球の裏側の

寂れた屋台で

目の前の黒人が自らを「チャオズ」と名乗っているのである。

























世界的名作漫画の「ドラゴンボールZ」のはてしない雑魚キャラ、チャオズ
















ちょっと考えて・・・・・


























































「ミスターポポの間違いでは?」










そう言おうとして・・・やめた。

「これ以上関わらないほうがいいかも・・・笑」







































同じくドラゴンボールのキャラ、ミスターポポ。
自分で書いてて、かなり“チャオズ”に似てると思う


























































この男の暴走はもう止まらなかった

















トイレに立つ際、自分で投げたおしたビール瓶。


トイレから戻って店員がそれを片付けてしまったことを知ると・・・


「おれのビールをどこへやった〜〜〜〜!!」 


・・・あんたが投げたんでしょうが(汗)











おつまみのビーフジャーキー売りを売りに、物売りがビーフジャーキーを抱えてやってくる。

1本10円くらいで、割り箸くらいの太さながら、30センチくらいと結構細長い。

パクパク食った後、「10本でお代は100円になります」と言われ
















































チャオズ激情


















































「俺は8本しか食ってねぇ!!!!」



























・・・・酔っ払いとシラフの物売り

客観的に見て、はてしなく君は分が悪いよ(笑)
















挙句



「6本目のジャーキーは途中で折れて半分だったじゃないかぁぁああああ!!!」












ものすごくセコく暴走してる。





















































俺ともう一人のオッサンは止めることなく大爆笑














腹痛すぎ!






面白すぎるぞ、チャオズ!!








しかしチャオズは大真面目。





























ビール瓶の底を叩き割り、それを握って物売りに掴みかかった。























・・・・さすがにこの辺でようやく止めに入る俺達。














チャオズのビーフジャーキー代を払い、

もう1本ビールを頼んでチャオズをなだめる




「ホントに8本しか食ってねぇんだよぅ・・・」



・・・まだ言ってらぁ(笑)
































































しかしその後、その暴走の方向は俺に向いてきた









チャオズは唐突にこう切り出した。





「アフリカの女はどうだった?良かったか?」

「・・・ヤってないって(汗」

「激しすぎて腰が砕けそうになったろう?〜〜?」

「だからヤってないから・・」


「なに?!やってない?なぜ買わないんだぁぁ
ああ!?」



「・・・悪い、正直、魑魅魍魎界の女よりは海賊版CD屋で売られてるブリトニーのジャケットのほうがまだまし(笑)」





「なぜだぁ?なぜだぁああ?」











・・・あまりにしつこいので

「マラウイ通貨は殆ど既にタンザニア通貨に変えちゃって明日朝国境での朝飯の金くらいしかないの!」

と切り返す。














「朝飯の金しかない?朝は女を食えばいいのだ〜」





既に全く意味不明。


































・・・・プルプル・・・










































「この餃子やろうがっ!!!!」














自爆してもナッパにキズ一つ負わせられなかった分際でっ!!














正直どどん波でぶっ殺したい気分だ。















































更に奴の暴走は加速した。







































「俺の“ナイフ”の切れ味はやばいゼ!」





日本での飲み会でもアホな男は手首からクイクイ曲げてみせるが、

この餃子野郎は既に次元が違っていた



























































































































肘からクイクイやってますがな!


























その被害は更に拡大した





「おい、そこのネーちゃん、こいつに“ゴチソウ”してやってくれ!」



片っ端から女性に声をかけるチャオズ。




「ビールをおごってくれ、俺は女をおごってやる!」







もう、言ってることがムチャクチャだ。






















































「た、頼む、こいつを殺させてくれ・・・・(実は爆笑)

















多分、最愛の天心飯ですら


太陽拳でぶっ殺したくなるウザさ



















































そんなこんなで時刻は出発間近、チャオズに見つからぬよう、

奴が席を立った隙にこっそりバスに乗り込む俺





しかし・・・

見つかった





バスに乗り込んでくるチャオズ。




「タクを宜しく!!」

「こいつと仲良くしてやってくれ・・・」










そう大声でわめきながら、
乗員1人1人に握手しだした。






しかもなぜか
泣いてる










からみ酒に泣き上戸



もはや手に負えませんな











さすがチャオズだけのことはある、

暗算もできないほどの知能指数であることは疑いないと思われた。
















「た、頼む、早く発車してくれ・・・」








そんなこんなでバス発車。

どこの国でもバカはバカ、

酔っ払いには手がつけられないと言うお話。






































「さらばチャオズ、君が捨て身で振りまいたネタを俺は忘れない・・・笑」














































































































あんた最高!






































と思っていたらこのタンザニアへのバスの道中、チャオズなど一瞬で吹き飛ぶとんでもない事件に巻き込まれるのだった・・・。








































何時間もひたすらノンストップで走るバス。




























サバンナの中、ようやく「村」のような場所に来た

















































トイレ休憩を終えて自分の席に戻る俺。





























すると・・・・











































































わけわからんガキが俺の席でゲロを吐いていた

































しかもまっ黄色の胃液を!



























な、何してんだてめぇ!!!

















































日本で言えば中学生ぐらいのガキだ。


さすがに笑って許せる歳じゃない。



挙句









ゲロまみれの席を俺に返し、
奴は本来の自分の綺麗な席へと帰っていった・・・

























ゆ、許せん!








がしかし・・・








とりあえず次に手を考えないと
























他の客がもどって来る前に、俺は別の席に座った・・・(汗)
























次々に用をたして戻ってくる乗客たち。








異変に気付いた彼らはソコを避けてどんどん席が埋まっていた・・・・




























しかし・・・そして・・・・




一番最後に乗ってきた太ったおばさんが、
残っていた“元”俺の席にそしらぬ顔でデカいケツをしずめたのだった・・・汗













気付いていないのか?

それともどうでもいいのか?

はたまたニブいのか・・・・?














































当然のごとく強烈なゲロ臭が車内に充満していた















・・・死





























































チャオズの出現が何かの暗示だったかのように







このバスは次々ととんでもないことばかりおこる。

















都合、まる1日以上乗りっぱなしだったわけだが・・・・・


































さらに・・・・










前にも触れたことがあると思うが、新鮮なままの輸送のためだろう、

ニワトリは生きたまま足を縛られて運ぶことが多いが・・・









バスの中、足元を鶏が駆け回っている





意味がわからん。こんなバスがあっていいものか・・・




誰かの荷物から逃げ出したか?ちょろちょろやかましいんじゃ!


そして、臭い



その上俺の靴の上でクソしやがるし、



この場で屠殺してやりたい衝動を必死にこらえる



















































































そして夜のこと・・・・













街灯一つない道、完全消灯でひたすら1本道を突っ走るバス。











ウトウトしてると・・・・・
















何か頭に直撃した!







































不覚にも「ギャーーーー」と叫んでしまう。














































正体はニワトリだった


































お分かりいただけるだろうか?






真っ暗闇の中、それなりに大きな動く物体が顔に直撃した恐怖






















































































更に珍事は続く






















またもウトウトしてると、また何かが俺の顔に落ちてきた。









































、ヘビかぁああああ!!!!」






































































・・・自転車のタイヤでした。



























次から次へとおかしなものが振ってくるこのバス。




















もう、さすがの俺も眠気が飛んだ。





























































































ただいまナショナルパークを縦断中・・・





































今度は・・・・





























































ライオンが出た〜〜〜〜〜






























暗くて、しかも俺の窓とは反対側。













よく見えなかったが、








現地人も窓に殺到。








いくらアフリカとはいえ、彼らにとってもライオンは珍しいものなのだろうか?






アフリカといえど、その辺にライオンがゴロゴロいるわけじゃないのよ。





その殆どが保護区やナショナルパーク内に住む。







個人的には人間に守られるわけではなく、闊歩していてもらいたいもんだが・・・・。


















































そしてこのナショナルパークを出た直後、超メガトン級のネタが待っていたのだった・・・。






























































ニワトリとタイヤの襲撃により眠気がとんだ俺。




クソガキのゲロ臭もあいまって、最高に気分は悪い。















俺は窓を少しあけて外を眺めていた。





当然街灯や、人工物など何一つない。





360度、どこまでも闇、限りなく星














「日本じゃ地平線沿いに星が見られるなんて考えられないなぁ」








そんなことを思いながら窓の外の星を見てまどろんでいた時のことだ・・・




















































いきなり地平線に赤い星が3つ現われた


















































!?
















!?




















































直後




























































「パ、パン、パン・・・・」





















































襲撃だ!


































騒然、そして大混乱に陥る車内。











伏せて、その上から重なって、重なって・・・・
































バスがガタガタ揺れだした。













































タイヤがやられたらしい。






















































バスに悲鳴と絶叫が響く・・・・





























































































・・・銃声はやんだ。
























時間にすればほんのわずかな時間だったかもしれないが・・・









「ポリス!ポリス!」と叫ぶ人々。

























・・・・バスはパンクしたタイヤで、何とか近くの警察の敷地までたどり着いた。



























車体に残る銃痕







































打ち抜かれた前輪
前輪が両方とも打ち抜かれていたら・・・そう思うと今更ながらゾッとしますね。

























警察に着き、すこし落ち着きを取り戻した人々



幸い、けが人は誰もいなかった。



金銭目当ての強盗か、


それとも何かもっと黒い集団なのか・・・・



それは今でもわからない。


しかしながらアフリカの中でも治安のよいタンザニアで、



よりによって狙撃されるとは・・・















ふと70年代に乱獲された象のことを思った。




突然の閃光と炸裂音の中





いつの間にやら体中を貫かれ・・・






死んでいったのだろう。













怖っ







ここから目的地のダルエスサラームまではあと2時間ほどの距離だ。




しかしながら、今夜は警察の敷地内で1泊して、翌早朝出発すると言うことで落ち着いた。



「やったゼ!宿代が1泊浮いた!!」



浮いた宿代で、現地ではぜいたく品の鶏肉をほおばった。








空には金色の星が何事も無かったかのように溢れている。





俺は非現実感の中をふらふら彷徨っていた。































翌朝、バスは無事ダルエスサラームに到着した。



・・・Fish on in MALAWI & TANZANIA  

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