アフリカ編 プロローグ〜旅人の休息〜
PNGから帰国した。
久しぶりの日本、東京の夜、
そこは色とりどりのライト
きらびやかな人々。
夜がふけても人々の波はとどまることを知らず
女性も一人で闇に消えてゆく
「変わった国だなぁ」
電車の中、新潟になるとそこはまだ雪国だった。
白銀世界
その中にも確かに春の息吹
顔を出した地面、はじまりの若葉
俺は久しぶりに富山へ帰った。
しわと白髪、久々のオヤジはもうおじいちゃんになっていた。
駅まで迎えに来てくれた車を
帰りは俺が運転する。
オヤジが助手席、不思議な感覚。
携帯に入っていたたくさんのメール。
「いつ帰るんよ?」
「生きてんのか?」
「早く来い!!」
神戸まで駆け抜けた「いつもの」自転車で
「いつもの」通学路を、
「いつもの」カラオケBOXへとかっ飛ばす。
高校剣道部の懐かしい顔
受験少年院を突破した後輩達。
これから受験に挑む後輩達。
この1年、徹底して「個人」で生きてきた俺に
剣道部時代の「集団」は
磁石の同じ極をつき合わせたかのようにもどかしく
でも懐かしい。
「いつもの」ように青春パンクを叫ぶ。
ジャパハリネット、哀愁交差点、
「帰ってきたよ、そういいたくて」
「なんや、かえってきとったんけぇ?」
久々の母はババァになってはいなかったが、
それでもなんか縮んでしまったようで・・・
「何か食べたいものあるけ?」
俺は「フツーのもの」と答えた。
「お前が運転とはなにやら変な感じだのぅ」
弟を乗せて「始まりの漁港」へ。
10年前、ルアーフィッシングを始めたこの漁港。
堤防はいつの間にやら2本に増え
立派な駐車場ができていた。
幼稚園時代からの友人、俺の釣りの師匠(タメ年)との再会。
急な夕立、俺たちは魚を狙うこともなく、
雨宿りしながらタバコをくゆらせる。
壁に立てかけた竿、ルアーから雫が落ちた。
「相変わらず熱いことやっとんのぅ」
「師匠もお変わりなく」
「今日は魚釣れんでもいいのぅ」
「昔みたいに釣り過ぎるのも疲れますしね」
「いい加減敬語やめろよ〜」
いつかの若狭の峠
3年前、あれだけ苦労した峠も
今は哀愁の空気が車内に満ちる
あの夏のメンツがそろった。
もうママチャリではないけれど・・・
3年前お世話になった、そう○さん宅。
変わらぬオヤジさん、
若々しいままのそう○さん、
いつかの少年達はビールで再会を喜び合った。
オヤジさんが長渕をモノマネで歌う。
「3万五千人の観客の皆さん〜・・・」
妙にハマるおやっさんのMC。みんな笑った。
間奏
「10万人の観客の皆さん〜・・・・」
「ふ、増えてるやん!」
みんな、笑った。
3年間なんて、あっという間だ。
高校時代の友人との再会。
受験少年院、執行猶予付き出所だった友人達も、
この春見事お勤めを果たし、自由の身になった。
みんな、アホなまんまだ。
いや、このメンツだからアホになれるのだ。
中学時代の女友達とデートだ。
男は何にも変わらんけれど、
女の子はどんどん綺麗になる。
ヨレヨレの服着た俺は、
ちょっとだけ時間の流れを思った。
変わるもの、変わらぬもの
俺はもう迷わない。
タイから帰国後のように鬱になんかならない。
いや、鬱になってる時間などない。
転がり始めた円は止まらない。とめられない。
だけどその重心は揺れ動くことはない。
帰る場所がある。待つ人がいる。
だから行く。
俺は、俺が、俺であるために。
旅に出よう。
6月半ば、俺はさっさと航空券を手配した。
浪漫に向かってルアーを飛ばそう。
両の手に夢を、そして Shout&Dance!
至福の一服、深呼吸
だだっ広い大地がかき消すさ!
夢がかなうその日まで、夢見心地でいるよ。
(Blue Hearts ♪夢)
未知を感じる道を、
アフリカへの道を
さぁ、はじまるよ。
はじめるよ。