本州の、真ん中あたりにある富山県。
県の西と東で、赤いきつねのつゆが違うこの県の普通の高校生。
ある日、地理の地図帳を眺めていた少年がつぶやく。
「あ〜どっか行きて〜な〜。」
まだ肌寒い春の始めに、物語は始まりを向かえた。
何気ない一言が、すべてを始まりへと突き動かした。
とりあえず、俺たちは行ってみることにした。
いつかくる旅立ちのその日の前に、少しだけ、背伸びをしてみよう。
いつもの自転車で、いつもの通学路とは少し違う道を行って。
行ってこよう。
家族にこう、言い残して。
「ちょっくら行ってくっら、神戸まで。あ、今日の夕飯は外で食べるから。」