10.Midnight High Kicks
タリアット村からの帰り道
ペスト発生にてツェツェレグ封鎖
そんな21世紀には考えられないようなアクシデントにより回り道を余儀なくされつつも
無事ウランバートルに着いた俺たちは
武さんと再会し、2人とも帰還祝いに「カツ丼」を奢ってもらった。
夜は夜で
「現在進行形釣旅人友の会・総会」を
武さんお勧めの韓国焼肉屋で行った。
連絡事項が食い違ったことによる誤解も、ここで解消。
重ねた手がその証だ
・・・モンゴルに来て初めて人間らしい一日を送ったとおもった(笑)
武さんの性格上、宿に入れ替わり立ち代りやってくる若い連中とは気が合わないだろうと読んでたけど
そのとおり(笑)
俺たちの到着を絶対に心待ちにしていたであろう武さん、
その日以降、われわれ3人は
バカバカしく、生き生きと飲みまくりはじめる・・・。
俺も武さんも「いじる側」で、
当然のようにテルさんをいじりまくって遊んだ(笑)
「我武者羅無茶苦茶」 meets 「天上天下唯我独尊」
パプアでの標的は万世だったが、
彼ならその過酷さを代弁してくれると思う・・・笑
万世は寝起きが悪い&たまに逆切れ(逆切れ返しをされると小さくなるけど・・・)するのであの程度で済んだが、
テルさんは包容力がありすぎ、何をやっても“俺たちには”怒らないので、
我々2人は暴走しまくった(笑)
「テルさん、絶対俺の髭剃り使わないでね!」
「だってテルさんは○○人だから・・・笑」
「絶対テルさんは○イ○だし!」
・・・ひどい、あまりにもひどい(笑)
だが楽しすぎた(笑)
俺たちが骨休めをしている宿はパッカーの間ではかなり有名な「あずさや」という宿だ。
日本人宿(日本人バックパッカーがあつまり、漫画などがおいてある)で
久々に心穏やかな日々を送る。
武さんにしつこく再出撃の交渉したけど、氏の帰国の意思は固い。
まぁ頼んでおいてなんだけど、もう俺も燃え尽きてしまったからさ、
どうでもよくなってたんだよね。
バガボンドやら、なにやら、
漫画を読み、ボケッと数日過ごした。
「バガボンド」をよんで「天下無双竿!」とか言って影響を受けまくり、(これは後に事件を生む)
「さくらの唄」って漫画を読んで脱力し・・・
大好きなバンド「Going Steady」の名アルバムと同じタイトルだから期待したんだけども、
なんか「銀杏BOYZ」な漫画だった・・・
きっとミネタ君はこれを読み、あのアルバムを作ったんだろう・・・・。
ナウシカの原作も読んだ。
1シーズンを終え、道具の手入れをする武さん。
大変そうです。マジで頭が下がります。
意味もなく男3人で遊園地に行ったりもしたっけ。
このモンゴルの遊園地、
やはり「モンゴル」なんだわな・・・
「なんて爽やかなバカなんだろう」
が全快(笑)
まず日本円で30円ほど出して「お化け屋敷」に入る。
オバケ役は怠けて一人も現れない。
一応、おどろおどろしい音楽がかかり、真っ暗な室内にドクロの置物などはあるのだが・・・
そんなことを思いながら真っ暗な通路を手探りに進むと
いきなり足が地面の感覚を失った
真っ暗な中にいきなり下り階段を設置するお化け屋敷がどこにあるんだろうか・・・・
直接的、物理的恐怖。
これはすでにお化け屋敷ではない・・・
身の危険を感じます。
陰湿です(笑)
日本だと、絶対安全上許可されません。
サイコーです(笑)
「なんて爽やかなバカなんだろう・・・」
今度は回転ブランコ(?)に来ました。
各座席一人のり。
子供たちや彼女がのり、
男たちは下で見守ります。
結構盛況していますネ。
・・・しかし、次の回を待つ客は誰一人いない。
平日の昼間から、野郎3人で遊園地を回る我々。
33歳♂、33歳♂、21歳♂
心に一抹の安堵を残しつつ(笑)、
ここは誰かが“イケニエ”にならなければなりません。
ジャンケンポンで負けたのは、もちろんこの人!
一人回転ブランコ決定。
これを書いている今、思い出し笑いが止まりません(笑)
「我武者羅無茶苦茶」「天上天下唯我独尊」の爆笑を声援に
一人テルさんが回転ブランコに座ります
「この人お金払ってまでこれ乗りたいんだね」
「人として終わってるよね〜」
下戸のテルさんを尻目に、
当然2人は慢性的に酔ってます(笑)
他人の不幸は蜜の味
愉快以外の何者でもありません。
「ズガー」は疲れたテルさんの口癖です(笑)
そしてまたこの名言がっ!
「なんて爽やかなバカなんだろう」
このころからテルさんのオーラが、
水にぬれたモンゴルリスルアーのようになっていきました・・・笑
その後、
武さんが「史上最強」とよぶアトラクションに到着
扉の中の、小さな車が見えるかな?
わかりやすい例え、みんなが一番よくわかるたとえで言えば、
ユニバーサルスタジオジャパン(UFJ)の
バックトゥーザヒューチャー
その危険性は、実際モンゴルの地で、実際にお確かめください・・・。
取り壊される前に(汗)
そして次はメリーゴーランド。
恒例のジャンケン、今度は俺が負け。
草原の国、モンゴル
騎馬民族の国、モンゴル
蒼い狼の国、モンゴル
ここでメリーゴーランドにまたがった俺など、戦国時代なら切腹モノです
・・・でもね、俺がこういうのやっても面白くないんだよ。
やられるべき人が、やられるべくして意味がある。
人間、何かしら自分の「役割」ってあるからさ、
少なくとも俺はいじられる立場ではない。
ということでテルさん、今後もよろしくお願いします・・・・・笑
以後、テルさんの受難は永遠続いた・・・
そんな中、
「我武者羅無茶苦茶」&「天上天下唯我独尊」が志願して乗ったアトラクションがあった!
写真を撮り忘れたので、絵でごめん!
なんかさっきの回転ブランコ見たいに本体自体が回って・・・
人の乗る子機も回る…。
は〜いただいま回転中です。
俺はこの手ののりものには恐怖は感じないので、
重力が上に行ったり下に行ったりったりしながらカメラで武さんの表情を追います♪
でもね・・・
回転が止まったとき、俺たちの気分は最悪だった。
なぜならここまでの高回転&時間が長いとは思わなかったから。
だって、唯一の安全装置、腰周りのベルトがこんなんなんだもの・・・・・・
「なんて爽やかなバカなんだろう・・・」
こんなモンゴルでがんばる武さん。
その苦労を思うと、すいませんが笑けてきます(笑)
どうぞお体に気をつけて、暴走し続けてください(汗)
日が暮れても暴走はとまらんぞ!
というか加速するぞ。
というか俺という人間を殺さぬ限り、面白すぎるトラブルはおわらんぞ!(笑)
〜ある夜のこと〜
チョロート帰りで疲弊し、1ヶ月以上まともに風呂に入ってない俺達は、
モンゴル式垢すり&マッサージに繰り出した。
念入りに、選んだ。
おばちゃんが順番待ちをしていて
健全きわまる店だった。
1時間、全身垢すり。
とんでもない量の垢が出た。
その後1時間、全身マッサージ
整体&圧迫でもんのすげ〜気持ちよし!
が、事件はおこる。
最後の最後に聞かれた悪魔のササヤキ・・・
「Special Massage OK?」
武さんの答え〜
「Don’t Touch me !」
と逆上した(そうだ。)
テルさんの答え〜
「こんな事務処理的ではイケない」
と、・・・結局無理だったそうだ。
拓矢君の答え〜
「なんともならんけど、どうでもいいわ。」
精神の混乱を招いたとき、俺はとりあえず諦めることにしている。
おそろしくあっさり諦める。すぐ寝る。
蛇足だがな、
ウジウジいう奴に俺がよく言う叱責の言葉に、
金玉でモノゴト考えて、チ○チンの指す方へ進め!
ってのがありまっす。
(ちょーすけとか聞いたことあるやろ?)
で、大体の男が右曲がり、“右回り”の無限ループ、
ダメ人間のスパイラルに落ちていくのでありまっす(笑)
男の子にはね、
脳、脊髄、金玉
3つも判断中枢があるんだよ?
思ったことを、やればいい。
言いたいことを、いえばいい。
あとで土下座でもすればいい・・・汗。
for the S○X sence
煩悩を開放せよ
ってか?笑
「・・・岸釣りスターにはなれなかったけど、センズリスターにはなれたよ・・・」
実も心も全てがスッキリした俺だったが、
暴走は止まらない。
ウランバートルの最大の事件が、更に起こったのだ!
〜深夜の大暴走、○○屋の値段をマジメに尋ねるコト〜
飲みに向かった先は
純情な武さんが5年目にしていまだ行ったことのないという,
モンゴルきってのショーパブ。
マルコポーロ
ま〜よ〜するに
タッチ禁止で、
上半身裸のねーちゃんが踊るのを見ながら
愉快にお酒を飲みましょうという場である。
「あずさや」さんに泊まった男ならば、
まず行くことになると思う(笑)
だって、日本人の女の子も興味本位で遊びに行くぐらいだし♪
あれだよ、旧東世界の社会主義国の遺産として、売春などエロスに規制がキツく、
今なおそんな雰囲気が残るモンゴルでの
唯一に近い“怪しげ”なナイトクラブだ。
絶対上半身だけで、日本で見たらかわいいものだけど、
夜の娯楽がないに等しいこのウランバートル、
外国人で単身赴任の白人お父さんとかは、まずここで週末の疲れを癒していると見た!
実際、その日も白人がかなり多く、
成功している中国系、韓国系、そして「あずさや軍団」
若い日本人の男たち。
嫌がる武さんを
「これもモンゴルガイドとしての社会勉強ですから!」
とか、良心の呵責を抑えるテキトーな言い訳を見繕ってさしあげ、
俺たち3人はこの摩訶不思議なナイトクラブに入り込んだ。
エントリーフィー500円(安っ!)を払い、
席に着くと、
すでにステージ中央で何人かの踊り子さんが踊ってはいるのだけど・・・
「はぁ〜ブスばっかじゃん!」
しかも客に対して踊り子すくなっ!
モンゴル首都全員のスケベ魂にこれは失礼ってもんだろう!
客席の間を練り歩き、客はそのヒモパンツにせいぜい100円くらいのチップをはさむのがルールだ。
それに対して、少々のサービスがなされる
(ちなみにモンゴルの物価水準は、大体日本の5〜10分の1です。かなり物価の安い国です)
期待スンナ、そこの高校男子諸君!
せいぜい10秒、至近距離で踊って(体をくねらせて)くれる程度。
だが、踊り子さんはやはり“メタボリックな白人”のところに行くのだ。
そりゃそうだ。
だって、このテーブルには見た目があまりに若々しすぎる若者二人
(もちろん俺&武さん。武さんはほんとに見た目も精神力も若く、みなぎってます。ハイ)
に乞食一人・・・
テルさん、少なくとも髪は切ろうよ・・・
カザフだけじゃなく中国でもタクシーと待ってくれなかったジャン・・・・。
精神分断症の俺が「もう自棄だ!」って言ってるとき、
テルさんはいつも「ウランバートルにはカツ丼とマルコポーロがあるよ」
ってなぐさめてくれたのに・・・
この状況はどうだ?期待が大きかった分、失望はでかかった。
俺は品行方正な日本人代表であるから、顔はいつも笑ってお調子をとるが、
心でないていた。
魚影の薄い、しかも魚が病気がちの管理釣り場のようではないか!
・・・しかも、一番フケた踊り子が、異常に俺のこと見てくるんですけど・・・
「これはゲームだ!エリアフィッシングだ!」
徹底的な雑魚の数釣りを意識し、パターンを組みなおした俺は
とりあえず10円札を扇状にし、扇いだ・・・。
・・・撒き餌はエリアでも反則なのにね笑・・・
ムカついたので小銭大放出でしばしのプチ入れ食いを堪能する。
眼前で揺れている2つの“物体”よりも、
周囲のデブ白人の恨めしげな視線のほうが嬉しくなってきたあたりでむなしさがこみ上げてきたので、
おそらく同じ心境であろう武さんとともに、
俺たちははすごい勢いで飲み始めた。
ウォッカボトルを3等分し、俺たち2人は一気飲み。
下戸のテルさんはおじおじしている。
俺の強烈なからみ酒の末、テルさんは消えた。
「ぜってートイレでシ○ってるよ!!」
断定を下した俺たちは、
更にもう1本ウォッカボトルを頼み、
2人でビールグラスに2等分すると
もう、一気に近いハイペースで杯を開けた。
(武さんはこういう品性下劣発言を絶対しません。念のため。言うのが私、笑うのが武さん、そんな感じです)
ブスに喜ぶデブ白人、この世の地獄絵図だ!
一人だけいたかわい子ちゃんが奥に消えてしまった腹いせに、
ますます俺たちの悪酔いは加速していった・・・・。
※ちなみにテルさん、このときトイレで慰めていたのではなく
俺のからみ酒に絶えられなくなり、宿に戻っていたのでした・・・
踊り子たちがなぜかレオタードに着替え、
新体操みたいな、後に見る上海雑技団の超レベルを下げたようなようなものが始まったあたりで
虚無感に耐えられなくなった俺。
再びフリーダンスがはじまると、
ステージに何故か乱入し、一緒に踊りだした若い白人男にムカつき出した。
「ゆ、ゆるさん。ブスでも男よりはましだ!」
キレた(酔っていた)俺は
俺もステージに上がって踊りだした・・・。
は〜い、このあたりから記憶が怪しくなってきましたよ♪
だんだん武さんの顔色が悪くなってきた。
「もう無理だ、帰ろう・・・」武さんの言葉に席を立つ我々。
武さんはもう外に出てからあわてて後を追ってきた従業員さんに席に忘れた財布をとどけてもらう始末。
「俺がしっかりしなければ!」
店の前で即タクシーを拾い、「あずさや」と連呼する俺。
走り出したタクシー。
なぜ運転手とは別に、助手席にレスラーのような大男が乗っているのかは、このとき想像もしなかった・・・
武さんはドアを開け、吐き続ける。
「大丈夫です、せいぜい数キロすぐつきますから・・・」
そう思いながら、俺もすでに意識が飛びかけていた・・・
「あずさや」到着。
料金はなんと
4000円
は?歩ける距離だぞお前?
モンゴル通貨「トゥグリグ」との聞き間違いかと思った。
10トゥグリグ=1円
すなわち4000トゥグリグ、400円か?
そう思って(それにしてもモンゴルの通過を考えると高め)4000トゥグリグ払うと、相手は受け取らない。
あくまで40000トゥグリグだという。
ここで俺はこのタクシーがナイトクラブの酔っ払いを狙った、悪質ぼったくりタクシーと気づいた。
武さんは安らかにお眠りしておられる。
しばし言い合いの末、思った。
「めんどくせぇ。払えない額でもないし、ウルギー見たくこれ以上もめるのはゴメンだ。」
「金で解決できることは金で解決しよう」
そう思った。
「俺もずいぶん“日本人”になったもんだゼ!」
そう思いながら、4000円払ってタクシーを降りる。
肝心の武さんのことをわすれて・・・
しかし事件が起こった!
俺が降りるか降りないかで、タクシーは発車、
しかも後部をふり、俺に嫌がらせをしたのだ。
ちょっと記憶がはっきりしないが、
足の指を引かれたのか、はじけた小石がぶつかったのかはわからんが、
俺の右足に鈍痛が走り、
俺は反射的に左脚で車体に反転ざまハイキック返すと、
外装はメッコリとへこみ、タクシーは止まった。
そして助手席が開いた。
助手席にレスラーのような大男が乗っていた意味を、アンタレスな頭で俺は瞬時に理解した!
「くそっ、トラぶったときの用心棒かっ!」
馬鹿バスの朝青龍とはわけが違う。でかい!
俺は瞬時に「スミヤバザル(朝青龍のお兄さん)」と名づけると・・・
というか、名づけるか名づけないかのうちに、俺の体が宙に浮いた。
胸ぐらをつかまれ、持ち上げられた。
俺は必死に応戦し、逆に相手の襟を閉め、我慢戦、長期戦の様相を呈し始めた・・・
日中読んでいたバガボンドがマズかった!
「天下無双」と頭の中でリピートされ、無駄な覚悟だけで、俺は闘い始めた・・・
・・・・ここで一旦記憶は途絶えます・・・・
気がつくと、俺は「あずさや」のオーナーさんにヘッドロックをかけられ、
引きずられてゲストハウスに連れ込まれていきそうになっていた。
(あとから話を統合すると、マルコポーロから先に帰り、
ゲストハウスの外で飲んでいた他の日本人若者の集団が、トラぶってる俺たちの割って入ってくれたらしいです。
うち一人がオーナーさんに連絡、俺を引きずってベッドに幽閉しようとしてくださったらしい、が・・・)
そのとき、タクシーのところで「時の声」があがった。
「うぉおおおおお!!!」
・・・武さんだった。
ここで、タチの悪いことにまたバガボンドがよみがえったのだ!
「又八になどなって、逃げて落ちぶれていってたまるかよ!」
「武しゃ〜ん!」
俺はオーナーのヘッドロックを振りほどくと、応援に駆けつけた!
(この辺の酔ったときの馬鹿力&暴走力が俺が“軍曹”とクラスメイトから呼ばれるゆえんです。)
“炎”復活!
武さんは暴れていた。
それもスミヤバザル相手にだけではない、止めに入ってくれる日本人も含めて、
とにかく周囲に近づくものを蹴りまくっていた。
「羊どもめ〜〜〜!」
と、ワケのわからんことを連呼しながら・・・(汗)
そして駆けつけた俺に伝説的一言がかけられた・・・
「・・・で、拓矢君、いったい何があったのよ?」
・・・武さん、何が起こったのかもわからず雰囲気だけで暴れていたんですか?・・・
我々は警察で話をつけることとなる。
(※翌朝確認したところ、このとき武さん自身も記憶がないそうです)
警察署前で、またひと悶着。
挑発してくるスミヤバザルに俺が中指を立てたものだからさぁ大変(汗)
胸板を突き合わせ、一触即発。
後で聞いたところ、モンゴル流喧嘩は打撃なし。
いわゆる「モンゴル相撲」なのだ。
しかし、俺もバカではない。こんな大男にそれでは勝てない。
先手を打ったらこっちが悪くなる。
一撃きたところで金的か目を狙おうと思って待っていた・・・。
少し冷静さを取り戻した武さんが、俺たちの間に割って入る。
何事かをモンゴル語で言っている。
わからない、何を言ってるんだろう・・・
そのとき、なんとスミヤバザルは武さんを持ち上げた。
必死に冷静に収めようとしてくれた武さん、しかし、
空中で捕まえられたクワガタみたいに手足をバタバタしている。
「これはまごう事なき正当防衛!武しゃん、又八はいま助けますぞ!」
そうおもって飛び掛ろうとした次の瞬間、
また武さんの口から伝説的一言が・・・
「来るな」
「え?」
「お前は棒もってこい!!」
・・・お話は警察署内部に移ります・・・。
俺&武さん、ドライバー&スミヤバザル
両
者は向かい合って座った。
向こうの要求は「修理代4000円」だ。
「こ、こいつら・・・絶対修理もしないくせに・・・」
モンゴル人の平均月収は日本円にして首都ですら3000円と宿のオーナーさんは言っていたと聞いた・・・
「ゆ、ゆるせん!!」
しかしだ、こっちの言葉がよく伝わらないモンゴル警察は
話せる向こうに同情的になってきた・・・。
武さんは張本人の俺のパスポートを持ってくるよう命じられ、
一旦宿に戻った。
そのときのことをテルさんはこう語る。
「よっぱらった武さんがいきなり入ってきて、
『あいつ、やりやがった〜。あいつ終にやりやがった〜』って
泣きそうな顔で拓矢君の荷物をパスポート探してあさり始めたよ。
先帰ってよかった!っておもった・・・」
俺の最後の抑止弁「武さんに迷惑をかけられない」が、武さんがその場を離れたことにより外れた俺は
マンガル!
(キ○ガイの意味)
シット!
ファック!
ありとあらゆる罵声を並べ、挑発してくるスミヤバザルに中指を立てつづた。
・・・もう途中からどいつがどいつかわからなくなって、
警察にもファック!と、とりあえず中指をたてづつけた・・・
パスポートを持って再入場する武さん。
その時、冷静かに見えた武さんがとんでもないことを言い出した・・・
低く、小さな声で・・・
「殺そう。この国、殺し屋は10万で雇えるって聞いたから。」
「ナンバープレートを覚えておけ。こいつは1週間後にはもうこの世にはいない・・・」
「俺も5万出すから、お前も半分の5万出せ。いや、テルさんにも割り勘させよう。テルさんは逃げ帰ったから5万、俺達は2万5千・・・笑」
その言葉に大いに気をよくした俺は、修理費4000円を払い、釈放されたのだった・・・・汗
時間は午前3時。軟禁終了―――。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌朝、ベッドから出づらい。
「やっちまった〜!」
奇跡的なことにいくら飲んでも二日酔いはしない俺だが、
この日はさすがに気分が重かった。
寝室を出てすぐの“茶の間”みたいなところには、すでに“羊たち”が爽やかなモーニングをしているし、
そのすぐ横で、オーナーさんがパソコンをしている。
いたずらがばれた後の小学生みたいな気分で、2度寝を続行。
何より気にかかってたのは武さんだ。
警察からの帰り、俺が寝室に行くときに
「武さんちょっと・・・・」とオーナーに呼び出されていた武さん。
「怒られただろ〜な」
と申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
そのうち武さんが起きてきた。
とりあえず謝ろう。
「・・・すいませんでした。」
「いや〜最高のネタだったよねっ!」
「え?」
「・・・そういうことでよろしいんでしょうか?」
笑いをかみ殺しきれない俺たち。
隣にいたオーナーさんの「どんな気持ちで俺がその言葉聴いてるか知ってる?下手したら殺されてるよ?」という言葉を受け流し、
俺たちは路地に出て、そして思いっきり笑ったんだ。
武さんが言った。
「拓矢君、あのあと、オーナーさんに呼び出されたとき、開口一番に俺はなんていったと思う?」
「・・・さぁ?」
「『殺し屋を紹介してください!』って頭下げたよ(笑)」
「・・・俺を落ち着かせる嘘じゃなかったんだ・・・」
「怒られたかも知れないけど、酔ってて記憶あんまりないからさ♪」
・・・・・・武しゃん、一生付いていきます・・・・・・
俺はは「おつう」のような気持ちでチョロートの王を眺めた。
カツ丼でも食って反省しましょう・・・笑
警察にコッテリしぼられた後だから・・・
ビールつきでねっ!
「反省はしても後悔はしないっ!」
過去の事など、恋愛以外を引きずる男はウジ虫に同じ。
でも失恋を引きずれない男など、“漢”にあらず!
どんなときでも俺達は俺達の味方だ。
世知辛い世の中だから・・・よ?笑
※反省すらする気のない武さんはカツ丼ではなく牛丼をチョイス。流石だ…。
・・・カツ丼“だけ”は弱嘘です(笑)
胸焼けにより、その日に向かったのはケーキ屋さんでした。
でも毎日正午過ぎに起き、
カツ丼とビールでお目覚め、
漫画を読んで午後を過ごし、
ちょっとだけ散歩する。
そんなダメ人間なこの安宿での日々が、
ボクは嫌いじゃありませんでした(笑)
俺とテルさんがチョロートからウランバートルに戻った時、
武さんがテルさんと2人きりになってはじめにかけた一言は、
「お疲れ様…。だから言ったでしょ?」
だったという(笑)
何でこんなことを書いたかといえば、
二度とマルコポーロで俺のようなトラブルを出さないためだ!
反面教師、俺みたいになるんじゃないぞ!
・・・・と完全自己肯定してこの章おわりっ!笑
「感謝はするが、反省はしないっ!笑」
当然殺し屋なんか雇ってないゼ!ナンバーなど酔って忘れてしまったサー!
誰も傷つけない、サイコーのネタ!
壊れたのは車体と俺の経済状態だけさ♪
全てのネタにアイラブユー!
THANK YOU!
※日本人宿のオーナー様他、武さんをはじめ、ご迷惑をおかけした全ての方々にバイルッラ!(ありがとう)
モンゴルよ、ザイルバルタエ!(さようなら)
PS モンゴルの殺し屋はオーナーさんの冗談みたいです。結果論ですが、俺も武さんも旨く丸め込まれたカンジ?結果オーライっす!笑
その数日後、再度トラブル発生で発狂した武さんは、是が非でもと日本へ帰っていかれました。一緒に釣りは出来なかったけど、やっぱ流石です!
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