ケツの下に振動を感じる。
さっきまでの震えとはちがう。
俺達はトラックに乗っている。
青い空、緑の大地がなんだかボーッとみえる。
ジャンクションで体が横に取られた。
出来損ないの甘栗のように、脳みそも「コロり」と転がった気がした。
思い返せば10分前、
ファーストフード店で絶体絶命の状況の中、
「ま、なんともならんし、飯でも食って考えよ」
とジュースでも注文しようとした。
動揺しまくってるオヤジの手前、
無理にでも笑顔を作ってみせた。
5分、だろうか、10分だろうか。
怒りがさめてくると、どうしようもない虚無感に襲われた。
「どーすんべ？」
ガラス越しにラスカルどもがみえる。
・・・・・
「ラスカル？」
後ろから声がした。
振り返るとそこには、ものすごい大男が立っている。
「・・・・死んだ」
ボブサップのような体躯の、青Ｔシャツを着たその男。
木刀も、特殊警防も、・・・何やってもかなわないと思った。
観念した。
が、不意にオヤジの顔がほころんだ！
「!R%TH&B=$%%>！！ＭＹ ＦＲＩEＮＤ！！！！」
（ちなみにオヤジは１６０センチ、体重50キロくらいの小男。ひ弱です）
「追われてるんだろ？車で走ってるときに見かけて、
もしやと思って引き返してきたんだ。
店の前に車をつけてある。すぐに乗れ！！」
店の入り口を出た。
サップがラスカルにおもいっきりメンチを切った。
俺達二人はボブサップの背中の影に隠れるように店を出て、
急いでトラックに乗り込んだ。
サップの奥さんが間髪居れずにエンジンをふかす。
もはや悪態をつく気力もなかった。
青いサップの背中が頼もしかった。
トラックは悪路をかっ飛ばす。
車体はグラグラ揺れ、
俺の脳みそもグラグラ揺れ・・・ふとある言葉が頭をよぎる。
ここは天国じゃないんだ、かといって地獄でもない
いい奴ばかりじゃないけど、悪い奴ばかりでもない
（ｂｙ bule hearts マーシー ♪train-train）
この国に電車はないが、とりあえず
トラックよ
走ってゆけ、どこまでも・・・
ってな。
家に帰り、
俺と親父は無言で昼寝した。
非現実的な１日、
夕食の下ごしらえをしながら、
親父は言った。
「タク、見えたか？」
「何が？」
「やつ等の腹だよ」
「なんか不自然に膨れてたよね」
「バス車内でのすれ違いざま、俺は見た」
「刃渡り３０センチ以上の巨大ブッシュナイフが入ってた」
・・・・
夕食前、
ミタおばさんが今日の無事を
神に感謝し、祈った。
俺は手を合わせ、目を閉じた
おばさんも去年
ナイフを突きつけられ
持ち物全部奪われたとか
こんなことはよくあることらしい。
この国の車のフロントガラスはかなりの確率でひびが入っている。
車荒らしによるものだ。
割れたガラスの部分を
ラップで補填してたり
今夜はさすがに笑ねぇや
やけにお祈りが長い
俺もなんか唱えようとした。
が、頭に浮かんだのは・・・
「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏・・・」
ふ、不吉だ・・・。
長いお祈りが終わった。
おばさんは半分涙ぐんでいた
「Ｔｈａｎｋ ｙｏｕ Ｇｏｄ ，Ｍａｙ Ｇｏｏｄ ＆ Ｓａｆｅ Ｔｒｉｐ of TAKU」
おばさんはもう１度繰り返した。
翌朝
案の上、飛行機は２時間近く遅れた。
空からみた町は
緑あふれ、なんとも平和であった。
ＴＲＡＩＮーＴＲＡＩＮの歌詞が再び頭をよぎる
俺は首都を後にした。
