10章 沈んだリング、円は閉じたか?〜カオレム編、最終章〜
























午後





















74,5センチ



フッキング、ランディング、測定、撮影を超高速っでこなし、即リリース。
この人、むちゃくちゃやるようで、すごく紳士です。(魚に対しては 笑)























やはり武兄はやってくれた。

ボートを走りながら、武兄はワンチャイも見逃したボールを見つけた。

そして、すぐに結果は出たのだ。

自分より大きな魚とか、そんなことはどうでもいい。

自分もホントにうれしかった。武兄の顔に自信が戻った(笑


極東の釣キチ2人は固く握手した。




ワンチャイもうれしそうだ。










 

午前中は、俺&にーしこさん、武兄&DOZさんの2艇に別れ釣りをした。

このにーしこさんもいい味出してる方で、のんびりモードになった。

日式TOPで鍛えた腕で次々ピンポイントキャストを決めるにーしこさん。


「こんな投げまくる釣りとはカルチャーショックですわ」


といいながら、2人して投げる、巻く、をしゃにむに繰り返す


霧が晴れ、日の上がり始めたカオレムの湖面に豪快&さわやかなにーしこさんはよく映える






・・・・が無念のTIME UP!







にーしこさん、DOZさんは所用で午前中で釣りを切り上げ、バンコクへ帰っていった。



オーラと笑顔がさわやかな2人の兄貴

シャドーを手にしたにーしこフェイスが見れなかったのが残念!!

お二人とも、またいつかお会いしましょう!!



出船前、朝の宿にて。左からにーしこさん、武兄、DOZ兄、ワタクシ。
前夜の釣り談義、バカ話は最高でした!!
一人もいいけど、みんなで飲むビアチャンはやっぱり最高!!













だが、2人が帰ったあと、カオレムは復活したのだ(笑
















連日の出撃でワンチャイはふらふら。

十分に昼休みを取り、短時間勝負に出た。


そして冒頭の74,5センチが武兄の手に落ちたのである。

更に武兄は1匹追加。















その後、またしても「笑」撃の事態は起こるのである・・・。

 


















船が岸に着いた。

「あ、俺ここ着たことある。ジャングルを抜けるとラグーンがある!!」と武兄。

と、ここで問題発生。

順応性の高すぎる俺は、すでに生活のすべてをはだしで行っていたのだ。

連日の船での出撃、靴はおろか、サンダルの必要性を感じなくなって、

履物はもって来てすらなかった。



「ハショウフウ、サソリ、ポイズンスパイダー・・・・」





何がいるかわからんジャングル、はだしで歩くのはさすがに俺もためらった。

だが、ワンチャイもはだしだ。

彼にできて、俺にできないことはない!!(はずだ 汗)

俺ははだしでジャングルに踏み込んだ。






しばらくジャングルを歩いていく



と・・・・


「おぉ!!」

日本の野池を思い出させる、こじんまりとした池があった。

キャストスペースが取れない。

おれはそのまま素足ウエーディングした。

ぬめぬめとした感じを受けるほど、水は温かかった

足元を、小さな熱帯魚が泳ぎまわっているのが見える。






魚は釣れなかった。


 

「はだしでジャングル踏破」だけでも十分おなかいっぱいなのに

帰り道、更なる事件発生。

ワンチャイ、武兄、少し遅れて俺、の順番で歩いていた。

と・・・・










「アヤッ!!」



ワンチャイが逃げ出した!!そして武兄が叫んだ!





「ハチだぁ!!」





二人は一目散に逃げ出した・・・。








巣を叩き壊したらしい。細い獣道、回り道などない。

ハチさんたちは前方で「すでに準備OK!」とコキゲンな様子である。






俺は決意した。

「突撃じゃぁ!!!!!」








・・「痛っ!」




まずモモをさされた。




おれは手を振り回し、走った・・・。















ようやくボートについたとき、俺のモモは腫れ上がっていた。





「ワンチャイ、あのハチしってる?」



「知らない」



とワンチャイは笑いながら言った・・・。

異国の地で、名前も知らない、現地人すら知らない(ホンマか?)、

そんな虫に襲われる恐怖・・・




俺が刺された全身黒色&ケツのオレンジのバンドがあるあのハチの正体はいまだわからない。

「全部ネタにしてやれ!」

俺は諦めモードでタバコに火をつけた。




つーか、ワンチャイ兄貴・・・・


ガイドなのに一番先に逃げるな!!

ま、それがタイらしいけど(笑

 


















翌日も武兄は2匹釣り上げた(自分は2日連続坊主ですが・・・)

やはりノってくると、この人の勢いはすごい。

ジタバクジョイント改にもバイト連発、

自分にもバイトがかなりあり、翌日に希望を持たせてこの日は終了。

 























明日はカオレム最終日。

お膳立ては整った。

ビールを飲み、決意を新たにする。

俺たちが狙うは、もう80アップのみだった。

旅を締めくくるオレノサカナがほしかった。

「大和男児の底力をみせてやれ!!」

 
















 

最終日、俺は朝一、1投目で65センチくらいを釣った。

幸先よいスタートだ。










投げて、投げて、投げまくった。

巻いて、巻いて、巻きまくった。






投げて、巻いて、投げて、巻いて・・・・・。





最高の非日常空間がそこにはあった。

 

















スコールが降り出した。

叩きつけるスコールは体温を強烈に奪う。

(当然レインジャケットなんかもっていってないし)

「泳いだ方があったかそうじゃない?」


俺たち3人は湖に飛び込んだ。

ワンチャイと競泳した。

こいつ、速い!負けるもんかと、俺も泳いだ。

足がつかない、底も見えない。


泳げない武兄はボートを利用して筋トレをしている(笑


3匹のクソガキははしゃぎまくった。

と・・・


「ほろり」


指輪が外れ、カオレムの湖底へと沈んでいった。





スコールの中筋トレ中の武兄。
武兄、実はカナヅチ(バラしてよかったですか?)
でもこの人が泳力を得たら、今以上に無茶して、命がいくらあっても足りなさそう(笑














 

大学の前期試験を終えた後、DOZ兄の店で買った指輪。

世界の釣りが、PCの中の二次元の世界から、

色を帯び、温度を帯び、3次元の世界になったあの日。

あの日にみせてもらった、シャドーの歯形つきルアー。

いつか、きっと・・・そう思い、おれは蛇柄の指輪を買った。

臥薪嘗胆ではないが、この指輪を見れば

つまらない授業中も、タイの蛇頭を夢見れた。

その目標を達成した今、役目を終えたとばかりに、指輪はカオレムに還った。






斧を泉に落とした木こりの話、幼き日に読んだ童話が思い出される。



スコールはやんだ。


「カオレムよ、指輪と引き換えに・・・・・」





ボートによじ登った。



エンジンがかかった。



煮詰まってきた。


挑戦は終局へと向かう。

 
























1箇所に、2つのベビーボムを発見した。

浮上の間隔が共に短いこの2つのボール。

まさに「もぐら叩き」状態。

これは釣りか?虐待か?

すべてのねじは吹っ飛び、

俺たちはただ、投げて、巻いて、はしゃいだ。

稚魚が1匹引っかかってきた。

「残酷だなぁ」と思い、「ごめんね」とも思った。

でも、釣りを止めようとは思えなかった。

ただただ本能のままに・・・。







スレ掛けにしてしまった幼稚園児。
ごめん!でも綺麗〜!
ホントの赤ちゃんは真っ赤です!!






















カオレムが指輪のお返しをくれることは終になかった。






















 

帰り道、通称「カスープ広場」に寄り道した。


釣れなかった。


ふと見上げれば最高の夕焼け。

ビルマに沈む夕日、すべては終わったのだ。


11日間、この湖に出撃した。

100時間以上、竿を振り続けた。

自分自身、3度ほど脱皮した。



真っ黒になりながら、ひたすらに湖の王者を追いかけた。

円をこじ開けた怪物は、二度と姿を現すことはなかった。

「悔しい」とは不思議と思わなかった。



 

ボートが湖面をすべっていく。

闇が迫ってきた。

「また来ればいいじゃないか」

カオレムがそう言っている様に思えた。

怪物とのファイト&バラシも、すべてカオレムの仕組んだ演出に思えた。

 

いつものようにフェンが寄ってくる。

「釣れた?」

俺は言った。

「釣れたけど、オレノサカナには会えなかったよ」

フェンはわかったような、わからないような顔をした。

「練り餌釣り、する?」

「今夜はいいや」

俺はベットに溶けた。