『猿岩石日記』2014.4〜5

(1)

 あのヒッチハイクについて、最初から最後まで通して知りたくなったので、読んでみる。

 更に、最近の有吉さんの活躍を考え、内容だけでなく文章にも期待した。期待を裏切らないおもしろさだ。

 上半分が有吉さん、下半分が相方の日記になっている。有吉さんは、ネタとは思うが相方を下に見ている風がある。

 辞書も見ずに手書きした日記なので誤字が結構ある。「彼らの感じたことをそのまま表現するために(あるいは誤字が実は彼らの高等ギャグかもしれないし)、訂正は最小限にとどめました。また、誤字であっても意味深長なものについては傍点をふっておきました。」とまえがきにある。

 パート1の186頁の有吉さんの日記に「観行」とあり、傍点がふってある。誤字だ。正しい漢字は?と思い、コウの方が間違っているから「興」かしらと思う。なんか違う。相方の方を読むと「観光」とあり、もちろん傍点はない。思わず恥じ入る。と同時に、今有吉さんがえらそうなことを言った時に、この事実を指摘したら、ギャフンと言わせることができるのにと、知り合いでないのを残念に思う。


(2)

 パート2のまえがきに、以下の記述がある。

 ユーラシア大陸横断ヒッチハイクと闘う猿岩石を応援してくれたのならば、日本の芸能界で闘う彼らを是非応援してあげてください。

 間違いなくもっと厳しい闘いになるのですから・・・・。

 そして、有吉君と森脇君へ

 漢字の勉強をしましょう。

 

 誤字に対する態度が明らかに厳しくなっている。パート2を読むうちに同じ気持ちになる。傍点を目にするたびに正しい漢字は何かと考える。そのせいで自分の漢字の知識をたえず試されている緊張感を感じる。漢字クイズがやりたいわけじゃない。いいかげんに誤字をなんとかしろと言いたい。

 33頁、上段に「点適」が出てくる。「適」が間違っているのだろうが、正解がすぐに出てこない。下段36頁では「てんてき」とある。間違ってはいない。ただ、記述式試験であやふやな漢字をすべてひらがなで書くわけにはいかない。批判のハン、最小のショウ、非難のヒ、否定のヒ、それぞれ反、少、否、非じゃないかと迷った過去を思い出してしまった。自立と自律でも痛い目にあった。読んでいるうちに「滴」だと気付く。ヘンの間違いは結構ある。

 44頁、下段に「有吉、大活殺」とある。その場を大いに活気づけるような殺しか、いったい何を言いたい?意味自体とれない誤字が初めて登場した。同音異義語の間違いは、間違った漢字の意味の方がぴったりくることが多く、書いている人間の心境がわかっておもしろい。わかったうえでのギャグにもなる。しかし、これは?有吉が何をしたのかから考える。「カツヤク」とわかる。「役」のヘンを間違え「殺」になったのだろう。

 翌朝、目覚ましが鳴る前に目が覚め、ベットの中で暇なので、いろいろ考えていたら、「カツヤク」の漢字は「活役」ではなく「活躍」じゃないかと気づく。間違ったうえに更に間違える。ある意味、天才だ。それともつい真意が出たのか。確かに役にたつことをしている。真相はわからない。


(3)

 ゴールしたのは1996年10月19日。パート1の初版がゴール前の10月10日、図書館の本が第21版で発行日が同年の12月15日、パート2の初版が同年の11月23日だ。

 ゴール後に、途中、飛行機で移動していたことがわかり問題になったことを覚えている。移動区間までは覚えていなかったが、読んでいるとイラク滞在に空白の数日があるので、この間のことかと思う。

 ネットで確認すると、タイからミャンマー、ミャンマーからインド、イランからトルコに入る時に飛行機を利用したようだ。インドからパキスタンに入るときの大変さが書かれており、これ以上の危険が予想されたのだろう。

 日記を読んでいた時には、ミャンマー入りとインド入りについて、流れに不自然さを感じなかったが、改めて読んでみると、車に乗せてもらったり、国境を越えたときの状況の記載がない。

 有吉さんの方の記載でいくと、5月24日「ついに首都ヤンゴンについた。」、5月28日「ついにインドに来てしまった。」で、経緯の説明がない。トルコ入りの方は、パート2に8月6日「とうとうイランだっしゅつ。トルコだ。」と書かれている。

 パート2を読むと「全行程ヒッチハイク」に疑問を持つのはわかるが、パート1で疑問を感じた人は、なかなか鋭い人だと思う。『猿岩石裏日記』を読むと、途中飛行機を使ったことが新聞報道されたのは、パート2の出版前のようだ。きっかけは、『猿岩石日記』パート1の記述内容が疑惑を生んだからではないようだ。

 改めて考えて見ると国境越えや関所越えの危険やスリルを書いた小説はたくさんある。国境を超えることに特に注意もしないで読んでしまうのは、日本が平和だからだろう。




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