久能海岸       04,10,31
「釣れるかね!」

突然 後ろから声を掛けられて ビーックリ!。

おじさん 両目が白目だけ。

釣り道具を一式抱えている。

「駄目だよ、底波で仕掛けを切られてばっかりだ!。」

「そうかぁ・・・。」

オレの隣で 釣支度を始める。

見えてんだな、餌もしっかりと付いているし。

んでも、仕掛けが砂浜に上がっても 魚信を聞いてい
 
る!。

座頭市である!。何か格好良いな!。

今度は 仕掛けがグシャグシャにからんで上がって来

た。

「うぁ〜、グシャグシャだよ!。」 って声を掛ける。

しばらく仕掛けと格闘していたが 諦めたようである。

そして 片付け始めた。

「なに、もうやめるの?。」

「あぁ、仕掛けを駄目にするだけだからな。」

オレの隣に来て座り込む。

片方の目は見えているようである。

思い切って言ってみた。

「目が悪いと 糸がらみはどうしようもないね。」

さっきも 手を貸してあげるのは訳無い事なんだけど

そんな事されるのは嫌な人もいるしな。

「視力が0.3しかないんだ。」

そんな事ないな、多分0.03だと思う。

「年も 八十過ぎたしな。」

「えぇーーっ!ホントですかぁー!。」

何か嬉しくなった!。

見た目には若い、六十半ばといってもおかしくない。

「結構飛ばすじゃぁないですか!。」

「それでも80メートル位は飛ぶかな。」

「ゲェーッ!、オレよりよっぽど飛んでるよ!。オレ、

 せいぜい50メートル位しか飛んでないよ。」

「大丈夫だ、ここは遠くへ飛ばしても釣れないよ、知り合

いで 5、60メートル飛ばすのが 結構釣ったりするんだ

から。」

このおじさんに弟子入りしたくなって来た。

「じゃあ、お先に!。」

「あ〜い!。」

良い人生送ってんなぁ・・・・・。

いい出会いだった!。