(2004/06/05完成)


兄達は世界各地の戦線に行ってしまった

開戦から25日目
エックスと博士、そしてユプシロンの避難が完了した

研究所にはライトットと私、
そして軍から提供された警護ロボット達が残った

「ラストナンバーさん この研究所もさびしくなったダス」

「ライトット またみんな戻ってくるよ ・・あれ?誰か来た??」

「何も聞こえないダスよ」

10秒後警護ロボット達が騒ぎ出したので玄関に行ってみると
サングラスにコート姿の青年と警護ロボットが対峙していた

「ナニモノカ! ココニキタモクテキハ!」
まったく、軍のロボットはプログラムが単純で困る

「まって!! 
 その人は私の知り合いなの
 今日来る予定だったのだけどあなた達に教えるのを忘れていたの」

「ソウデスカ シツレイシマシタ ナカニドウゾ」

昔 この研究所がD.W.Nに襲われた事があるからなのか
警護ロボット達の危険判断レベルが高めに設定されているのはかなり迷惑だ
しかし私にはこのロボット達を調整する権限は与えられていなかった
この程度のロボットなど私の手にかかれば3秒でプロテクトをはずして
10秒後には全プログラムを書きかえる事が出来るというのに
連中は旧式のロボットのように口をそろえてこう言うのだ

『ラストナンバーさん
 貴方ほど優秀な方のお手をわずらわせる事はできませんよ
 このロボットの調整は当局で行います』
この警護ロボット達が、私達を監視する目的で提供されたのは明らかだった
しかし政府からエネルギーと物資を無制限に要求できる
という契約の見返りとしては安いものだ

「ひさしぶりね」

「ああ・・・・」

「最近開発したホログラム投影装置を見せるから研究室に来て
 今回のは以前と同じ能力だけど1/10の体積に減らしたの」

「・・・そうか」

「あっ ライトット 席をはずしてくれない?」

「どうしてダス???」

「この人に最初に見てもらって映像を編集してから貴方に見せたいの
 ロボットと違って 人間に見てもらうと色々直すところが見つかるの」

研究室の扉を閉めるとこの部屋は外部から完全に独立する
核シェルターというわけではない
私が起動する以前にエックスを隠すために完全遮音
全周波数の光線を通さないように改修したのだ

「ここは安全よ」

「ロボットのくせにウソがうまいな」

「ええあなたも人間みたいなかっこうね」

「あの警護ロボットのセンサーはどの程度だ?」

「今のあなたの姿なら人間と認識するでしょうね」

「その程度なのか?」

「ええ 分解して調べたから」

「なんてやつだ 軍にバレたらどうする??」

「大丈夫 元どうりになおしたから」

「世間のうわさはあながち間違いでもなかったようだな
 ラストナンバー 『ライト博士の技術を完全に受け継いだロボット』」

「本当は『完全に』では無いの 私はロボットだもの限界はある」

「なぜライト博士はおまえだけ公表したんだ?
 5年間に1体しかロボットを作らなかったとでも言うのか?
 しかも何年も学会に出席しなかったのにおまえを発表した時は
 まるで政治家のように全TV局に出演してはしゃいでいたぞ」

「・・・そうね 私の本当の名前が『ラストナンバー』
 ではないと言えばわかる???」

「・・・・・・あいつは何を作ってるんだ?」

「自分の製作者に対して『あいつ』とはひどい言い方ね『お兄さん』」

「!!!なぜわかった」

「私は工業用ロボット
 耳で聞けばあなたの電子回路の発するわずかな音がわかるし
 目で見ればあなたの動力炉の温度分布がわかるから
 まったく いつ動力炉が停止してもおかしくない
 そんな状態でメンテナンスも受けずに稼動しているD.R.Nはあなただけよ」

「オレはD.W.Nでもあるんだぞ!!」

「ええそうね 博士を除けば
 あの頃のあなたを治せたのはあの男くらいしか居なかった
 でもね、動力炉はともかくとしてあなたの電子回路の発する音は
 私達兄弟特有の音楽を奏でているの 少なくとも私にはそう聞こえる」

「なんとでも言え!おまえはオレの知っているライトに似ていすぎる」

「・・・・・誉め言葉と解釈しておくわ
 ・・・・・・で? 気が済んだ?? 
 さっさと邪魔な服を脱ぎなさい 動力炉の調整をするから」

兄は黙って服を脱いだ
服以外は私の手ではずした
彼の体はライト博士の予想どうりだった

「なおせるのか?」

「私の能力では完璧にはなおせないけど 通常生活には支障は出なくなるはずよ」

「通常生活程度では困るんだが」

「ならバスターを1000発打つごとに1回程度のペースで
 メンテナンスに来なさい 当分博士は帰ってこないし 
 事前に連絡さえもらえればあの警護ロボットをごまかすネタも用意するから」

「どうやって連絡を入れろと?
 この研究所も軍に盗聴されているだろう?」

「まだ盗聴機はしかけられていないけどそのうちつくでしょうね
 画像をオフにして無言電話をかければいいわ
 私が電話に出るまで何度もかけるのよ」

「どういう耳をしているんだ!!
 おまえ本当に工業用ロボットなんだな」

「ええ 家庭用ロボットタイプに作られなかったことを感謝しているわ
 ・・・・あっ 電源を1度切りますね」

「勝手にしろ・・・   プツッ」


結局修理を終えると彼はすぐに帰ってしまった
話したい事が 
聞きたい事が
伝えなければいけない事が山ほどあったのに

「ラストナンバーさん 人間に知り合いなんていたんダスか?
 あなたは起動してから1年しかたっていないのに」

「そうね ライトット
 あなたにはわからないヒトだったかもしれないけれど
 私の記憶装置の中にあるデーターの中では最もなつかしい
 ヒトなの」

「恋人ダスか???」

「ロボットの私にとってはもっと大切なヒトよ」



彼に会ったのは
100年を超える私の稼動期間の中で
その日が最初で最後になった



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