目を覚ます。

夢の中で目を覚ます。

コレは夢だ。

夢だと自覚する夢。

夢だと知りつつ見続ける事を望んでしまう夢。

そんな幸せな、そして残酷な夢を俺は見る。


――どうしたの? ヨコシマ――


彼女が俺をのぞき込んでいる……いや、彼女の膝枕で寝ている俺に微笑ほほえみかけている。

俺は彼女に微笑ほほえむ。


「ナンデモないよ」


そんな返事を返す。

まなじりに熱いものが流れる。俺は今、泣いているのだろう。

そんな俺を不思議そうに見る彼女………泣きながら微笑ほほえんで見つめ返す俺。

いつもの夢……幸せな夢……そして悪夢の……始まりの夢。




GS横島

 序 章  〜夢の始まり〜 




手を伸ばす……手を伸ばす。

大切な何かをつかむ為、大切な何かを護る為。

手を伸ばす……手を伸ばす。

大切な何かを無くさぬ為、大切な何かを失わぬ為。

手を伸ばす……大切な誰かをうしなわぬ為に……俺は手を伸ばす……

声を上げ、叫び、怒鳴り……

手を振り回し、殴り、叩き……

もつれそうな足を必死に動かし、障害物を交わし、飛び越え、蹴散けちらし……

全身の、全霊を掛けて……

それでも俺は届かない……必ず俺は間に合わない……何時いつも俺は護れない……護りたい人の手がつかめない。

暗闇の中、護りたい人の姿が浮かぶ。

美神さん、おキヌちゃん、シロ、タマモ……

雪之丞、ピート、タイガー、唐巣神父……

小鳩ちゃん、愛子、冥子ちゃん、美神隊長、ひのめちゃん、魔鈴さん……

小竜姫様、パピリオ、ワルキューレ、ヒャクメ、べスパ、グーラー……

クラスメートの女の子達、西条とその他大勢………俺の知る者達、俺に関わった者達、今の俺が亡くしたくない者達……

コレは夢……コレは悪夢……何時いつも見るモノ……変わらないモノ……

それでも俺は足掻あがき続ける。たとえコレが夢であっても、変わらない悪夢であっても、伸ばした手が届かぬ事が判っていても。

狂いそうな絶望と、壊れそうな心と、はじけそうになる自分自身への怒りが俺を襲う。

でも俺は狂わない、壊れない、怒りで我を忘れない。

狂うことも、壊れることも、忘れることも、俺は俺自身に許さない。

なぜなら、うしなった人は居ないから。

俺が護りたくても護れなかった彼女が此処ここに居ないから。

コレが夢だから……失う人に彼女が居れば俺は壊れているだろうから……

だから俺はコレが悪夢だとわかる。

この悪夢は俺への罰、彼女を護れなかった罪、力の足り無かった俺の、努力をしなかった俺の、気付かなかった俺の……罪。

そして、俺の不安、恐怖、そして傷……消えない傷、いや消しては消す事は許されない傷。

だから夢をみる。永遠のような刹那を繰り返す。決して慣れない同じ夢を。


夢はめる。何時いつも見る夢は、いつ終わるかも決まっている。

この残酷な夢は、在り得ない幸せな時間と、絶望と狂気の狭間の時間、そして……最期に奴が現れることで終わる。

この夢の原因であり元凶であり、奴が居なければ幸せな時も、絶望と狂気の狭間も、この悪夢そのものさえ無かったはずだ。

奴は何時いつもの様に俺の前に現れた。まるでこの悪夢を終わらせる為に来る様に……………

そして俺は……









この作品は『夜に咲く話の華』様の小ネタ掲示板に投稿した、私の初投稿作品です。

HP作成のきっかけとして、投稿作品を保管しようかと考えていたのですが、

『夜に咲く話の華』様が閉鎖になりましたので………

とりあえず、ある分だけ少しずつアップしていく予定です。

できれば、以前のように何処かに投稿していきたいかなっと考え中。




続く   戻る