今回は(自己流解釈)説明文が多いです。お付き合いいただければ幸いです。




「でさ〜、なんでアシュタロス、お前が俺の中に居るんだ? ルシオラなら判るんだけどさ〜」


まるで先ほどまでの悪夢や、感動のシーンなど無かったかのようにヨコシマが六畳一間のアパートの部屋で

ちゃぶ台を挟んでアシュ様に説明を求めていた。

ここがヨコシマの夢の中である以上、場面変換はヨコシマの意思に左右されるから良いのだけれど……。

急に雰囲気まで変わったヨコシマに、さりげなくお茶を入れつつ横に座りながら何とはなしに視線を送る。

微笑が返って来て、ほおが染まるのを感じた。

やっぱりヨコシマの良い所はヨコシマらしいところよね、と呟きながらルシオラは

砕けた調子で話しているヨコシマとアシュ様アシュタロスの会話に耳を向けた。

アシュ様はお茶を一口、口に含むと、こちらも落ち着いた雰囲気で語り始めた。




GS横島

 序 章  〜夢の終わり〜 




「それは、ヨコシマ……おまえの力の所為せいだ」

「俺の?」


ヨコシマも一口お茶をすすると、目で続きをうながす。勿論、俺には難しい話はするなというものも含めて。


「……そうだ。お前の力の性質。お前の力そのもの。

その結果と偶然の産物……いや、必然だったかもしれんが……」


考え込むように眉を傾けたアシュ様に……。


「簡単に話せ」


こちらは未だ理解不能のために眉が傾いたヨコシマの一言……。

苦笑しながらアシュタロスが考える事、数秒……。


「……以前、お前は私を複写したな。能力、思考の複写だ」

「……えっ……(考え中)……ああっ、あれか……」

「ソレが原因の一つ。そしてお前は私を倒した者であり、私の側に居たものだ。

ソレが原因の二つ目、そしてお前は私とは縁が会った。

前世も今生も……もしかしたらそれ以外にも……おそらくソレが三つ目だ」


指を折りながら原因を述べるアシュ様にヨコシマが、ふんふんうなずきながら聞いている……。


「そして原因の四つ目……」

「未だあるのか?」


折られた指にげんなりと視線を向けてヨコシマがうめく。


「コレで最後だ。もっともこれが一番の原因、要因と言ってもいいかもしれんがな……。

お前の力、性質そのもの、潜在能力でもあり現在のお前の最強の能力、つまり文珠もんじゅの霊的性質ゆえ……と考えられるな」

「……よく判らん」

「……つまり、お前は私を複写した事でお前自身に私自身の受け皿が発生していたのだ。

更に文珠もんじゅの作成者としての能力が、私の欠片かけらを取り込むことを可能にした。

まぁルシオラの霊基構造を取り込んでいた事も影響したかもしれんが……」

「五つじゃん……」


アシュ様のあきれたような声にヨコシマのつぶやきが答える。

そんなつぶやきを聞きながらヨコシマの表情が何かを考えるような物に変わっている事に私は気付いた。

危険なモノではないが、さりとて危険が無いわけでないこと……思いつき、実行する事で何かが変わる。

……いや変えようとしていることを。

そんな気がしてヨコシマを見つめる。ヨコシマは私に向かって微笑む。心配するなというように。

その微笑に誤魔化ごまかされそうになりながら確信する。


「ヨコシマ……」


不安げな声が私から漏れる。微笑みに秘められた決意が私を不安にさせる。


「何を考えている?」


アシュ様もヨコシマに何かを感じたのだろう。

尋ねるというよりも確認のようのアシュ様の声にヨコシマが微笑を苦笑に変えて……。


「ちょっと思いついたんだが……」


そんな調子で語り始めた内容は、突然思いついたにしては考えられていて、

ヨコシマが可能性の一つとして考えていた事だと感じられた。

要約すれば……

私達、つまりアシュ様とルシオラを転生させ尚且なおかつヨコシマもその場に存在する事だった。

ヨコシマとアシュ様の話の中で出た結論は、


『過去は変えられない』

『世界も変えられない』

『運命も変えられない』


ということ。

過去は変えられないというのは、多少変更してもズレるだけで結果は変わらないらしい。

これはアシュ様自身の経験と資料に基づくもので今回の事で確信したとの事。

世界も変えられないというのは、これは世界自身の保護機能、もしくは免疫機能による改変に対する抵抗による為。

これもアシュ様やヨコシマが経験した事、世界は変えられない……正確には変えにくいということ。

そして運命も変えられないとは……。


「運命……いや歴史と言い換えてもいいかもしれないが、過去に起こるべきものは必ず何らかの形で起こるのだ」


アシュ様は苦々しげにそう語る。ご自身が魂の牢獄に囚われていた身であるが故に……。


「ど〜ゆうことだ?過去が変えられないと言ったのは、お前だろう?ソレと運命とどう違うんだ?」


ヨコシマが混乱一歩前の表情で尋ねている。

私にも良くわからなかったけれど……。


「例えヨコシマ、お前が過去に行き戦争を止め多くの人の命を救ったとしても、

その世界では別の原因で多くの命が失われることになるということだ……」


アシュ様は語る。歴史は多少変えられても、そこで行なわれたエネルギーの増減は変えられない。

そこで動くエネルギーが大きければ大きいほど過去は変わらない。

それゆえに運命としか言い様の無い出来事が起こるのだと。


「つまり、俺が例えルシオラやお前を救おうとしても……」

「お前の近しい人間……あるいは複数の人間が死ぬ事になったかもしれん。

私の場合は失われたエネルギー量が莫大だからな……改変できたとしても……」

「世界が終わるってか……」


だからアシュ様は変われなかったのだろう……そして……。


「じゃあ俺だけなら……」

「お前も、すでに只の人間では無い。世界を救ったGSヨコシマタダオなのだ。それはすでに歴史の一部だ。

そしてこれからのお前自身そのものも……お前自身望まざるものとしてもな。

お前の事だ、自分の中に私達を取り込んだまま過去にさかのぼるつもりだったのだろう?

残念ながら今の私達では個としての存在を維持するほどの霊基構造は不足している」

「だからアシュタロス、お前はルシオラに自分の霊基構造を与えて自分は消えるつもりなんだろう?」


淡々と告げるアシュ様に、さらりとヨコシマがたずねる。

私の身体がピクリと震える。アシュ様……まさか……。


「ヨコシマ……本当にお前は鋭いな。いや鈍いと感じるお前も愚かに思えるお前もヨコシマのヨコシマたる所以ゆえんか……」


苦笑を含んだアシュ様の言葉は肯定。


めてんのか? ソレ」


顔をしかめるヨコシマの言葉は確信。


「私は最初からそうするつもりだった……お前の中で気付かれぬまま……。

ルシオラが確実に転生するには、確率を上げるにはソレが一番だ」

「でも、今は俺が知ってる……お前が居る事を」


アシュ様とヨコシマ、二人の視線が絡み合う。

私はただ見つめるだけ……アシュ様の決意とヨコシマの覚悟……その横顔を。

沈黙が流れ……破られたのは……。


「だから、俺は未来に行こうと思う」


そんなヨコシマの言葉……覚悟の言葉。


「勿論、ただ行くんじゃない。自分自身も転生という形で未来に送り込む。

ルシオラやアシュタロス……お前達と共に居られる時代、いや世界に」


アシュ様は答えない……私も同じ。

こんな時のヨコシマは大きく感じられる。

全てを包み込むような……不思議な感じ。

ヨコシマの中のヨコシマらしい所。私がかれたところ。


「危険は有る……」

「なんとかなる!!」


アシュ様の言葉……危険性の指摘。確認では無く。だって覚悟は出来ているのが判るから。

ヨコシマの言葉……根拠の無い自身、確証の無い返事。

けれど……なんとかなる、いやなんとかするだろうと思わせる響き。

決めてしまった事が伝わるから……私はただヨコシマを見る……いいえ、ヨコシマを信じるだけ。

アシュ様の溜息ためいきにヨコシマらしい笑顔がこたえる。

夢が覚めようとしている……ヨコシマの夢が……アシュ様の夢が……そして私の夢が……。

私はヨコシマの夢の中で……夢を見ているような気持ちで……目覚めのときを…………。









相変わらず長くなる……おかしい短くするつもりだったのに??

原因はアシュ様の説明口調……

「貴様の説明文が悪いのだ。台本を渡すなら、もっと推鼓してから渡すがよい」

ごめんなさい……ひとえに私の力不足でございます。努力します。だからアシュ様、頭掴んで振り回すのは〜


                       ぐぇっ




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