トントン

ノックの音がする。

トントン

誰かが扉を叩く音。

トントン

それは誰かが来た証。

トントン

それは来客を告げる音。

トントン

それは日常の音。

トントン

ここが横島忠夫の夢の中であることを除けば。









ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン

ドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッ

ドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコ

ドコッドコッドコッドコッドコッドコッドコッドコッドコッドコッドコッドコッドコッドコッドコッドコッ

ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド




「って……うるさい!! 誰だ!!」


自分の夢の来客に警戒していた横島も、余りの乱打に怒声を上げる。

その声にピタッとばかり乱打が止み――


「あの〜すみません。夜分(?)恐れ入ります。私……」

「すまんな〜こんな時間(?)に、土産みやげ持ってきたから勘弁して〜な」


そんな声が……聞こえた。


「だから誰?」


尋ねる横島に答えるように扉が開き、現れた二人はお互いを紹介しつつ登場した。


「キ〜やんと……」

「さっちゃんです」


まるで漫才コンビのようだ……それが横島の第一印象だった。




GS横島

 序 章  〜終わる夢、始まる夢〜




「てな訳でやな〜わしら横島はんの為に一肌脱ごうっちゅう訳や」

「あなたには随分借りがありますからね。少しでもお役に立てればと思いまして」

「ぜーぜーぜー……あ、あんたらな〜」

「大丈夫? ヨコシマ……」

「今のは危なかったな、ヨコシマ」


そんな会話が始まったのは時間にして1時間後……夢の世界に時間の概念が有るのかは兎も角。

出現と同時に横島の夢の空間が歪み、危うく夢世界の崩壊=横島の精神崩壊=ルシオラ、アシュタロス消滅と

成りかかるも横島の文字通り必死の努力により持ち直し尚且なおかつ安定するまで霊力全開暴走寸前状態だったのだ。

来客二人が言うにはコレでも随分、力を抑えて来たらしいが……

いきなり只の人間の精神を神魔族のトップの精神に繋げれば普通は人間側が壊れる。


――ホントに手助けに来たのか!?――


疑問が三人の心に浮かんだとしても責めることは出来ないだろう。


「さすが横島はんや。わしは信じとったで」


なぜか御守りを握り締めながら……


「当然ですよ。私達が見込んだ人物なのですから」


手が白くなるほど十字架を握り締めて……

力強く語られても――


「………………」×3

「…………(汗)」×2

「……………………」×3

「………………(汗)」×2


…………………………………………


「って、ちょっとまて、手助けって……」


横島の言葉にキーやんとさっちゃんはうなずき、ルシオラは驚愕し、アシュタロスは眼をみはる。


「そうです。貴方が考えている事です」

「わしらやったらかなり手伝えるで」


そう答える二人の背後からは文字通り後光が射していた……今だ信用度は低かったが。


「止めに来たんじゃないのか」

「んなわけないやろ。ちょっとは信用してぇな」

「他の方法なら兎も角、今、貴方が考えている方法なら止める理由はありませんよ」

「しかも、今わしらに手伝わせたら余計な心配事は全部わしらが面倒見たるっちゅうサービス保証つきや」

「さらに今ならルシオラさんとアシュタロスさんの霊基構造の不足分をお付けしてお値段据え置き」

「おまけに、神界魔界の秘術もサービスセットに含めたるで〜」

「コレでほぼ確実に貴方の望みが叶って言う事なしです」


気になるお値段は〜てな具合に続きそうなノリで畳み掛けるように漫才コンビ神魔界のトップが告げる。

信用度ますます低下(笑)…………しかし二人の申し出は渡りに船どころでは無かった。



横島の考えではアシュタロスの知識をベースに術式を作成し、文珠の力を増幅器兼術式の発動媒体として使用。

細かな所はハッキリとは言えないが、絶対的な霊力不足が判っていた。

不完全な術式の霊力の変換率の低さ、それ故の不確定要素の増加すなわち失敗確率の増加でもある。

失敗は、すなわち魂の消滅であり、文字通り全てを失う事となる。

術式の不完全さを文珠で補っても五分五分。しかも楽観的に見ても……それが横島達の現状。

解決方法は奇蹟でも起きて完璧な術式が浮かび尚且なおかつ突然霊力が増す、そんな冗談のような出来事でもない限り、

博打に出るか時間を掛けるか……横島は前者を選ぶつもりだったのだ。



そんな冗談のような奇蹟が今ここにある……文字通り、神の奇蹟と言うべきか悪魔の気まぐれというべきものが……。

信用度の回復には繋がらないが……(笑)


「………………」

「ヨコシマ……」

「ヨコシマ、決めるのはおまえだ」

「ルシオラ……アシュタロス……」

「ヨコシマ、わたしヨコシマを信じてるわ。例えだまされていたとしても私はヨコシマと共に……」

「そうだ、ヨコシマ……私達はお前に救われた身。例えあからさまに胡散臭うさんくさい話でも可能性があるなら……

お前が決めたなら、それは私の決断でもあるのだ」

「なんか散々な言われようやな〜」

「サービスオプションが足りなかったのでしょうか……?」

「それともノリが合わんかったんかいな……N●VA兎のほうが良かったかいな?」

アレですか……しかしアレは練習不足では……」


――本気か、本気なのか? 色々な意味で――


そう突っ込まれずに入られない空気が流れて…………。


「判った。あんた達を信用しよう」


静かに告げた横島は……おとこであった。

ていうか半分自棄やけに近かったかも知れない。

それぐらい二人の提案は魅力的だったのだから。

例え今の信用度が最底辺に在ったとしても。

現在考えうる最高の条件なのだから。

しかも神魔界のトップが横島達をだます理由が見つからない。消す気ならこんな回りくどい事はしないだろう。

なによりわざわざ会いに来る必要すらないのだ。

もちろん其れを考えても横島を躊躇ためらわせるほどに信用度を下げてしまったのも当人達なのだが……。


「ほな、やりましょか」

「準備はいいですか?」


気軽に、もしくはさわやかに掛けられた声に


「えっ……ええっ!? い、今からっスか?」


いきなりの急展開に慌てる横島。

当然といえば当然である。


「はい。そうですよ♪」


何か楽しそうなキーやんと……。


御土産おみやげ持ってきたゆ〜たやろ♪」


こちらも楽しそうなさっちゃん……。

横島たちの困惑をよそに、手土産てみやげの包みを開けると其処そこには術式が展開された。


「こ……これは、高圧縮高等術式……しかも門外不出、禁術とも言える術式では……」


アシュタロスの驚愕の声。


「コレぐらいのモン使わんと確実とは言われへんからなぁ……でも持ち出すのに苦労したけどな」

「術式は完璧ですよ。これぐらいでは横島さん、貴方に借りは返せませんが……」


何でも無い事のようにいう神魔界のトップ二人。


まずいんじゃないのか……」


心配そうに横島は二人に尋ねるが、


「心配はいらん。わしらの事も術式のほうもな」

「そのとおりですよ。必要な霊的エネルギーは私達二人でまかなえますから」


気楽な声が返ってくるだけだった。


「でも、そんなに急がなくても……」


あくまで気楽に物事をすすめる二人。そんな二人の性急さにルシオラが尋ねる。


「それがな、そうもいかんのや。わしらが今の条件で手伝えるのは今日を逃せば何時になるか判らへん」

「そのうえ私達がお手伝いできる時間も限られていますし」

「そ〜なんや。トップともなると中々難しゅうてな」

「私達は兎も角、他の者がね…………」


二人は一瞬複雑そうな表情かおを見せたが……。


「心配せんでもちゃ〜んと後の面倒は見たるさかい」

「安心してください」


聞く者を安心させるようなさっちゃんの声と、落ち着かせるようなキーやんの声。


「ありがとう」

横島の一言……一言では語れない感謝の言葉。


「ほなな」

「また会いましょう」


そんな言葉に送られて。

横島は旅立った。

ルシオラとアシュタロスと共に。

後戻りの出来ない、後悔をしない為の旅が始まる。

                                   







夢シリーズ(勝手に命名)終了〜終わった終わった終わったよ〜。

プロット段階では短かった筈なのに書いてる内に……何故に長くなるのか〜(号泣)

とりあえず、転生の旅まで進めたので良しとしましょう……。

なにせ、予定では横島達が旅立ってから世界がどうなるか……まで行く予定だったのが。

あと一話書かなきゃ終わらない状態です。自分の未熟さを思い知るときですね。

だめじゃん俺(反省)。




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