「こ……ここの管理人って……アンタが!?」

「外見で判断してもらっては困ります。私はコレでも竜神の端くれなんですよ」


にこやかに話し掛ける小竜姫を、吹き飛ばされ座り込んだまま美神が見つめる。


「一瞬前まで何の気配もさせなかったのに……今はただ立ってるだけで凄まじい霊圧だわ……!」


先程とは打って変わった雰囲気に呆然とする美神。


「あたたたた……」

『大丈夫ですか? 横島さん』


吹き飛ばされたダメージから、ようやく立直った横島に、おキヌちゃんが心配そうに声を掛ける。


「大丈夫……コレぐらいなら……」


慣れてるから、と続けようとして……横島の動きが止まる。

目の前には心配そうなおキヌちゃん……だがその姿は横島を激しく驚愕させる。

オキヌの姿はいつの間にか巫女服姿だったのだ!!


「一瞬前までブレザーだったのに……今はただ立っているだけで萌え要素満載の巫女服に……!!」

『巫女服って……アレ? ホントだ……どうして?』


いつの間にか変った服に驚くおキヌちゃん。

しかし横島の驚愕はそれ以上だった。


「ああぁぁぁ、おキヌちゃんが露出の少ない巫女服に!

だが、ブレザー姿も捨てがたいが巫女服の神聖なイメージが清純そうなおキヌちゃんにピッタリだ!!

しかしチラリズムありのブレザーも捨てがたいし……!!」


驚愕の余り叫びだす横島。


「美神さんっ! 俺はどっちに萌えたらいいんスかっ?!」

「知るかーっ!!」


どげしっ!


横島の魂の叫びは美神のツッコミにより止まった。




GS横島

 第三夜  その4 〜竜へ至る道 其の参〜 




   

「……と、ともかく、鬼門を倒した者は中で修行を受ける権利があります。さ、どうぞ」


何事も無かったように進める小竜姫……さま?


「竜神と言うと、あのコ神様なんスか……!?」

「そのようね。人間とは桁違いの力を持ってるわ。

さっき吹っ飛ばされたのも攻撃されたわけじゃない。

抑えてた霊気の圧力を開放しただけ。あんなのがもし本気になったら……」


小声で話し合う俺と美神さん。

おキヌちゃんは小竜姫様に自分の服が変わった事を尋ねている。


「どうやら私の神気に触れた事が、何らかの引き金になって貴女がもっとも馴染んでいた姿になったみたいですね」


おキヌちゃんの姿を一目見てそう言った小竜姫さま。

おキヌちゃんはブレザー姿よりも本来の――幽霊として服装は巫女服らしい。

小竜姫様の霊圧のショックで、深層意識に有った巫女服ものが仮初めに纏っていた制服の姿を元に戻したらしい。

説明を聞いても、よく解らんが……。


「一目で解るなんて、さすが神様っスね……!?」


呟いた俺に小竜姫様が……じっと見つめてくる。


「?? あの……何か?」


角が生えていようが美人に見つめられて俺は緊張する。


「……あの、何処かでお会いした事は有りませんか?」

「……え……え!? いや、俺、ここに来たのは初めてなんスけど……?」


小竜姫様の突然のセリフに『もしや逆ナン』……なんて考えが俺の脳裏に浮かぶ。


「小竜姫様……俺のこと……」

「あれ? 貴方、眼の色が……『浄眼』ですか」


おもわず勢いで小竜姫様に飛び掛ろうとした俺の耳に小竜姫様の不思議そうな声が聞こえた……眼の色……アレ?

思わず美神さんの方を向くと……素早く手で隠すようにガードしてる。


「……変ってます?」

「変わってるから向こう向きなさいっ!!」


慌てて顔を戻すと俺の蒼く変った瞳に小竜姫様の姿が……その服が透けて下着が……おおっ……さらしだ!」


「えっ……!?」


小竜姫様が胸を手で隠すように……て俺、声に出てた?


「小竜姫さまっ、気を付けないと見られちゃうわよっ!!」


美神さんが小竜姫様に声を掛けるが――。


「見られるって……ええっ!? まさか……透視!?」


俺を先程とは違う視線で、じっと見つめる小竜姫様。


「見ましたか……」


小さな呟き……小竜姫様は俯いて微かに肩が震えているように見える。


「いや……その……見たって言うか……見えたって言うか……」


ああ……なんか小竜姫様から無音の圧力が。


「だ……だから、わざとじゃなくて、多分、色々な衝撃で『眼』が開いたって言うか……」


小竜姫様の身体が更にぶるぶると震え始める。


「み……見たって言ってもブラ代わりのさらしだけで……いや、ちょっとだけピンクの……じゃなくてー」


既に俺の第六感は死の危険を知らせていたが……逃げられない?


「えーと……事故って事で……」

わ……私に……

「……えっ?」

「私に無礼を働くと――


ぶんっ


仏罰が下りますので注意してくださいねっ!!」


「うわっち!!」


一瞬にして抜かれた剣が俺を襲い……辛うじてかわす。


「このっ! このっ! このっ! このっ! このっ!」

「のわっ! ひゃっ! ぬわっ! ひぃっ! つぉっ!」


かわしたら……ムキになったような小竜姫の連撃が襲い掛かり……俺は死に物狂いで避けた。






僅か数秒の攻防が終わった時、横島は肩で息をしていた。


(へぇ……手加減したとは言え私の刀を避けた……!?)」


そんな横島を見ながら小竜姫は内心呟く。

が、聞こえたなら『嘘やっ! 今、眼が本気やったで!』と突っ込みが入るだろう。


「ほらっ早く謝りなさい!!」

「すんまへーん、すんまへーん。わざとやないんです」


美神に促され平謝りする横島。瞳の色が蒼から黒に戻る。


「いえ、判ればそれで……」


そう言って、表面上は気にした様子も無く小竜姫は奥に美神達を案内した。




「生きてる方は、俗界の衣服をここで着替えてください」

「……なんなの、このセンスは」


その建物の入口は、如何見ても銭湯の入口の様にしか見えなかった。

壁の鍵付き靴箱も、それぞれの入口に『男』『女』と書かれた暖簾のれんも。

小竜姫の様子からは冗談を言っているようには見えない。


「あなたはこっち!」


小竜姫に呼ばれて横島は戸惑う。


「えっ? 俺も……!? 俺はただの付き添いっスから、番台に座るだけで結構ですって言うか座らせてください!!

の夢を叶えると思って!!」

「けっこーじゃない!! 何が、漢の夢よ、とっとと降りろ!!」


美神に蹴飛ばされ、番台から引き摺り下ろされる横島を眺めつつおキヌが小竜姫に問い掛ける。


『ここの修行ってとっても厳しいんでしょう? 横島さんは……』

「え? GS手伝い……シロート!? ただの荷物持ち?」

「そうっスけど……!?」


尋ねるような小竜姫の声に横島が答える。


「ふーん……?」

「な、なんスか?」


まじまじと見られて、何と無く引けてしまう横島。


「……ま、いいか。見学でも一応着替えてくださいな」

「???」


疑問符を浮かべながらも横島達は中に入っていった。

中は予想通りというべきか……まんま銭湯の脱衣所だった。

脱衣場の内装の、のほほーんとした雰囲気の所為か、いまいち緊張感に欠ける。


(本当にそんなに凄い修行場なのかしら……?)


美神がぼんやり考えていると番台に座った小竜姫が声を掛けてくる。


「当修行場には色んなコースが有りますけど、どういう修行をしたいんです?」

「そりゃ決まってるわ! なるべく短時間でドーンとパワーアップ出来るやつ! この際だから、唐巣先生より強くなりたいわね」


即答する美神に小竜姫は口元に手を当てて微笑む。


「ふふ……威勢がよろしいこと! いいでしょう。今日一日で修行を終えて俗界に返して差し上げます。

ただし強くなってるか、死んでるかのどちらかになりますよ」

「……上等! それでこそ有り難味が有るってもんよね」

「おキヌちゃん……見られてると着替えにくいって言うか……」

虚勢ではなく自然と出た美神の返答に小竜姫は表情を改める。

『私は見張りですから。横島さんこそ、さっき私の……見ませんでしたか?』

「よろしい! 奥へどうぞ!」

「見てないよ……と、急がなきゃ……」


 

着替え終わった美神は、引き戸を開けて奥に進んだ――。




「わ……悪い夢のよーですね。地平線が……」


奥は浴場ではなく……地平線が見え、ストーンヘンジのようなモノが所々に立つ空間だった。

正面に石畳の敷かれた円形の舞台があった。


「成る程。異界空間で稽古をつけてくれるのね」


納得顔の美神さん。俺は周りの光景に呆然としていた。


「人間界では肉体を通してしか精神や霊力を鍛える事は出来ませんが、

ここでは直接霊力を鍛える事が出来るのです。その法円を踏みなさい」

「初めて見る法円ね……踏むと、どうなるわけ……? ………っ!?」


ビュウゥム


小竜姫様に促され法円と呼ばれた魔法陣の中に美神さんが進むと……美神さんの中から何かが!?


「な……なに、これは!?」


驚く美神さんの目の前に現れたのは……美神さんに良く似た背丈が倍以上はある巨人だった。

黒の身体にピッタリとした服が適度に身体を覆い、胸元は強調するように開いている。

手に両端が尖った槍を持っている。


「あなたの『影法師』……シャドウです。霊格、霊力、その他、あなたの力を取り出して形にしたものです。

『影法師』はその名の通りあなたの分身です。彼女が強くなる事が即ち、あなたの霊能力のパワーアップと言う事です。

これから、あなたには3つの敵と戦ってもらいます。一つ勝つ毎に一つパワーを授けます」

「つまり全部勝てば、3つのパワーが手に入るって事ね」


理解したとばかりに美神さんが言う。


「そう言う事です……ただし、一度でも負けたら命は無いものと覚悟してください」

『「え……」』


小竜姫様の厳しい言葉に俺とおキヌちゃんは動揺する……が。


「つまり、これは真剣勝負なのね? 上等! そーと決まれば、早いとこ始めましょう!」


美神さんは、逆にやる気満々だ。美神さんらしいといえばソレまでだけれど。


剛練武ゴーレム!」


小竜姫様の呼びかけに現れたのは……一つ目の岩石巨人。

その巨体は岩の塊としか言いようが無い姿だった。

頭の位置に一つ目が覗いている。


「始め!」

「ウオオォォ

「行けーっ!!」


小竜姫様の開始の合図と共に唸り声を上げながら突っ込んでくる剛練武。

その胸元に、美神さんの『影法師』がカウンター気味に手に持ったロッドで突く!

……が、剛練武の硬い岩肌の弾かれてしまう。


「硬い……!!」

「剛練武の甲羅は、そう簡単には貫けませんよ。力も強いので注意してくださいな」


美神さんの呟きに小竜姫様が、にこやかに解説する。


『あんな事言ってますけど、勝てますよねっ!? 美神さんが勝ちますよねっ!?』


ガクガクガク


おキヌちゃんに首を掴まれ揺らされながら、俺には見ていることしか出来ない。

幾度目かの攻防で剛練武の腕が美神さんの『影法師』の腕を捕らえる。


「! まともに組むと危ない!! 離れて!!」


美神さんの声に『影法師』が剛練武の手から脱出。そのまま距離を――


「ウオォッ」


ゴンッ


距離を取ろうとした『影法師』に剛練武の拳が当たる。


「!!」

「み、美神さん!?」


『影法師』のダメージに美神さんの体が揺れる。


『美神さん!!』

「気を失っちゃだめだーっ!!」


おキヌちゃんと俺は叫ぶ。


『よ、横島さん……何とか……!』

「何とかって言われても……」


焦る俺達……目の前に居るのに。


『何とか……ならないんですか!?』

「俺が出来るのは『視る』事ぐらいしか……」


どうしたら良いのか判らず混乱寸前のおキヌちゃんと俺。


『美神さんを見て……何とか……』

「そうか……よしっ、美神さんを救う為に俺がこので!!」
















ばきっ


「こんな時に堂々と覗き宣言するんじゃないっ!!」


「……俺は、ただ少しでも力になろうと……」


「黙って! 気が散る!」


殴られた頬を抑えながら下がる俺……ホントに力になろうとしただけなのにぃ。


「なかなかのチームワークですね。今ので彼女、完全に立直ったわ」

『え?』


小竜姫様の言葉におキヌちゃんが疑問の声をあげる。


「要するに、捕まる前に甲羅の無い部分……アノ『眼』を突けば良いのよ!」


美神さんの声に『影法師』が剛練武に突進する。


ドシュ


そして次の瞬間、剛練武の一つ目にロッドが突き刺さった。

刺す瞬間、美神さんが俺の名を呼んだ気がしたが……気のせいだろう、うん。


「やった……!」


喜ぶ俺達の前で、剛練武は煙のようになって崩れた。

その煙は美神さんの『影法師』の身体に纏わりつき鎧になる。


「まず、ひとつ……!」

「なかなか、やりますねえ♪」


額の汗を拭う美神さんに小竜姫様が感心したように言う。


『鎧がつきましたね』

「防御力がアップしたって事かしら?」

「そのとおりです。霊の攻撃に対して、あなたは今までとは比較にならない耐久力を手に入れたことになります」

「ホントだ。下着が透けて見えない」

「どさくさに紛れて何を見てんのよー!!」


ばきっ


「ああぁ、俺はただ純粋な好奇心で…………」


つい確認してしまった俺は美神さんの拳により沈黙した。
















今回の『竜へ至る道篇』は繰り返す歴史の一部です。

原作と同じ様な部分は……こういうコンセプトなので勘弁してくださいな。

変えたかったけれど、変えられなかったのです。

私の力不足ともいいますが……

原作と変らない部分はわざと残している部分も有りますのでご容赦ください。

…………いいわけ終了(−−)b


夜:「ふぅ……すっきりした」

……い……きなり……釘……バット……乱舞……で……すか……

夜:「一応聞いておいてやるが、掲示板掲載時と何処が変わったのだ?」

……ちょっぴり……?

夜:「で、その採点を私が行ってやったわけだ」

……いきなり私が塗れなんですが……?

夜:「なに、今までの分を利息付で精算しただけだ」

そんな貯金は嫌ぁぁぁぁ

ごすっ

…………………

夜:「作者の奴が動かなくなったので、今日は、ここまでだ」

………ぁ

夜:「ん? 感想をよろしく? 誰か助けて? まだ余裕があるようだな」

………………

夜:「ま、とりあえず、この続きは次回の後書きでするとしよう」

……そんな続きは要らないです……ガクっ




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