「とにかく、あのおばさんから逃げなくちゃ」
と言う美神のセリフに、
「「おばさん!?」」
小竜姫とメドーサが反応する。
「誰がおばさんだ(ですか)ッ!!」
外見や知り合いであることを考えると同い年ぐらいの二人。
彼女達の当然の反応に横島の顔が引きつる。
「み、美神さん、余計なこと言わんでくださいよっ!!」
「あいつのせいで私は散財してんのよっ!! あんなのまだ足りないわっ!
もう一言二言、言ってやりたいっ!!」
横島の必死の懇願も美神には届かない。
それどころか更なる暴言を吐きそうで横島は本気で危機を覚える。
はっきり言って、迫ってくる大口の化物よりも危険だと。
そんな横島の危機感が伝わったのか、小竜姫は一つ咳払いするとメドーサに対して構えなおした。
「おまえの相手は私です! それ以上はさせません!!」
「あんなこといわれて平気なのか!?」
「蒸し返さないでください! ……平気じゃないですけど」
上空に奇妙な連帯感というか仲間意識のような空気が流れた。
「美神さん、前っ!!」
「え!!」
その空気に気を取られた美神に横島の声が注意を促す。
慌てて前を向いた美神の視界に広がったのは大口の化物の姿。
「だあーーっ!?」
慌ててハンドルを切るが既に遅く、大口の化物はフロントガラスを突き破りボートに激突する。
そして後部の童子たちに襲いかかろうとそのまま蛇身をくねらせる。
「危ないでちゅ!!」
とっさに童子の足を掴み、横に振るパピリオ。
振られた童子の後頭部がしこたまボートの縁に思い切り激突した。
その代わり大口の化物は避けられたので良しとする。
激突の瞬間、奇妙な音が童子の口から漏れて、何度か痙攣したように見えたけれども。
『よ、よかった……ひ、姫さま、ぶ、無事なんだな……』
「あ、ありがと……」
童女を大口の化物から庇ったイームがゆっくりと体を起こす。
「おい、おまえ……」
そのイームの姿に横島が驚いたような表情でイームを見た。
『え?』
横島の声に、イームの背中――大口の化物に傷つけられた背中に視線が集まる。
『!! 傷口から体が石に……!! あ……ああ……』
『イ……イーム!!』
傷口から石化が始まったイームは呆然と自分の姿を見つめる。
ヤームがあわててイームを支えるが、石化を止める事は出来ない。
『ア、ア、アニキ、お、俺……』
『だっ、大丈夫だ!! 心配すんなっ!! こんなの天界に行きゃすぐ治る……!!』
うろたえるイームをヤームは励ます。
それは明らかに気休めに聞こえる言葉だったが、イームは流石はアニキだとにっこり笑った。
そしてイームは動かなくなった。
ヤームの絶叫が聞こえた。
「だ、大丈夫……父さまに頼めば……たぶん……」
「わ、私がよそ見したせいじゃないわよ……!!」
「俺の前方不注意でもないっスよ……!!」
「私は関係ないわよ……ね? パピリオ?」
「わ、わたちは童子をかばいまちたよ……!」
『こ……この人たちって……』
イームの様子に、慌てたような皆のセリフ。
そんな皆の様子におキヌが呆然と呟いた。
GS横島十夜
第四夜 その7 〜プリンス&プリンセス オブ ドラゴン〜
居た堪れない空気が流れる……が、いつまでもボンヤリともしていられなかった。
大口の化物はまだ迫ってきていた。
迫り来る大口の化物を躱しつつボートは進んでいるのだから。
「だいたい早くコイツが目を覚ましていればこんな事にはならなかった筈でちゅ……だよ」
周りが再び迎撃を開始する中、パピリオはまだ意識を失ったままの童子をじろりと睨んだ。
着地する直前に感じた霊圧から、童子が戦力になることはわかっていた。
なのに未だに目を覚まさない。
そのせいで、パピリオとしては何となく居心地悪さを感じていた。
目を瞑り、横たわる童子。眠っていると、まだ幼さが残る整った顔立ち。
その横顔にパピリオは……寝ているようでムカついた。
周りがこんなに大変なのに、のんきに昼寝(注:今、夜です)をしているなんて……。
「いいかげん、とっとと起きろ!!」
どむっ!
そのイラつきのまま、チョッピリ加減されたパピリオの拳が童子の鳩尾に突き刺さった。
その瞬間、カッと開かれる童子の瞳。
「やった! 起きた!!」
喜びの声をあげるパピリオの前で。
正面に現れた童子の瞳はそのまま目蓋の裏へ移動した。
「ああっ!? なんで白目向いちゃうの!?」
口から水を滴らせながらぐったりした童子をパピリオは揺さぶるが、反応は無かった。
心なし童子の口から魂が出かけているような気がするのは……気のせいという事で。
『あっ!? 殿下!? ど、どうしたんで??』
ぐったりした様子の童子に気付いてヤームが目を見開いた。
その声に皆の視線が童子、および揺すっているパピリオに集まる。
「あ、あいつ等がやったんでちゅ!! わ、わたちはかばったんでちゅが隙をつかれて……」
おもわず昔の言葉遣いで、明らかに怪しい言い訳するパピリオ。
自分の言葉遣いにも気付いていない様子は、現場を目撃してしまった横島としてはフォローしようがない。
が、もちろん気付かない者も居るわけで。
『イームだけでなく、殿下にまで……』
ひとり怒りに身を震わせるヤーム。
もう一人の目撃者、童女は何か言いたげだったが、泣く寸前の子供のようなパピリオの視線に沈黙した。
「あっバカ……!!」
『チックショオオオーーッ!!』
横島が気付き止め様としたときには、既にヤームはメドーサに攻撃を仕掛けていた。
だが、不意の一撃もメドーサには通じない。
ひらりと躱すメドーサに更にヤームは突撃する。
『よくもイームと殿下をっ!!』
頭の角から光線を放ちつつ、メドーサに迫るヤーム。
しかし、小竜姫と互角に渡り合うメドーサには当たらない。
「チッ、余計な真似を……」
メドーサは僅かに眉をしかめて、小さく呟くとヤームに腕を向けた。
「やめ……」
とっさに気付いた小竜姫が制止の声をあげる。
が、既にメドーサの腕からヤームに向けて致命の一撃は放たれていた。
躱す間もない速度で迫り来る一撃が、呆然としたまま宙に浮くヤームに命中した。
爆音と共に煙が立ち込め――傷ついたのは小竜姫だった。
『しょ……!! 小竜姫さま……!!』
驚いたヤームの声に、小竜姫はヤームの無事を知り、ゆっくりと体勢を整える。
しかし、その表情には苦痛の色があった。
「ふっ……やはり甘いね小竜姫。そんな奴のために勝負を捨てるとは……!!」
「う……!!」
再び打ちかかってきたメドーサの攻撃を受けきれず、体勢を崩す小竜姫。
「とどめだ……!!」
小竜姫が体勢を立て直す前に、メドーサが止めの一撃に腕を向ける。
その必殺の一撃は体勢を崩したままの小竜姫には躱せない。
そして閃光が辺りを照らした。
「こっちよ!! 急いで!!」
白く染まる視界のなか美神の声が響く。
美神が精霊石を使い、メドーサの動きを止めたのだ。
その僅かな隙にヤームが小竜姫と共にボートに乗り込む。
「小竜姫ーーっ!!」
だが、その程度ではメドーサには大きなダメージは与えられない。
爆風を抜け、再び迫るメドーサ。
「最後の精霊石……!!」
そうはさせるかと、美神はメドーサに精霊石を投げつける。
立て続けに受ける精霊石による攻撃にメドーサの足が止まった。
「小竜姫……!!」
「ひ、姫さま申し訳ありません……」
童女の声に小竜姫は苦痛の滲む声で答える。
「横島クン、エンジン全開!!」
「ラジャー!!」
美神の合図に横島はボートを全速力で走らせ始めた。
それでも窮地はかわらない。
「逃がすかあっ」
上空からメドーサの声が響く。
だが、こちらは小竜姫という最大戦力を欠いている。
次に襲われたら、他のメンバーでは勝ち目は無い。
『お……俺のせいじゃないよな……!?』
「「「「「おまえが悪い!!」」」」」
おろおろしながら尋ねてきたヤームに、皆は声を揃えて即答した。
もちろん、ヤームを涙目にしても状況は変わらない。
「……仕方ありません……!! み、美神さん……!!」
よろけながら小竜姫は立ち上がると、小竜姫は美神に声をかけた。
「なるほど……!! 小竜姫のヘアバンドと篭手!!
人間が装備すると彼女と同じ力が宿るわけかあっ!! いーもんもらっちゃった……!!」
すでに自分の物とばかりなことを言いながら美神が空に舞い上がる。
美神の額と腕には小竜姫のヘアバンドと篭手が着けられていた。
「それはあげたんじゃなくて貸すだけですからね……!! あとで返してくださいよっ!!」
痛みをこらえつつ、それでもコレだけは言っておかねばと小竜姫は美神に告げる。
が、横島とひのめ、パピリオは視線を前に向けたまま一言。
「……返さないと思うな、俺」
「お姉ちゃんなら……ね」
「美神でちゅ……美神だからね」
そのセリフに反論できる者もなく。
出来る事は美神の嬉しそうな後姿を見上げるのみ。
「でもほら、とにかく勝ってもらうのが先決ですよっ!」
おキヌが、フォローとばかりに励ました。
新年、あけましておめでとうございます。
夜:「今年もよろしく頼む」
いやぁーやっと更新できました。これもひとえに見に来てくれる方のおかげです。
夜:「ココまで更新が遅れてもカウンターは動いておったしな」
いや、それは言わないお約束で。
夜:「貴様がもう少し頑張れれば良かったのだが……そうも言えんか」
まぁ、年末から先程(1月3日夕刻)まで、寝込んでましたし
夜:「体調管理は社会人の基本だぞ? まぁ更新しただけ、マシと言えるがな」
はっはっはっはははは……はぁ
夜:「で、本来数ヶ月前には更新予定だったこの話だが、続きは?」
いや、マジでココまで仕事が忙しくなるとは思わなかったので予定も立てられませんよ。
夜:「……死ぬか?」
うわ、顔は微笑みながら目が全然笑ってないのは怖すぎです……
夜:「ネタはあるのだろう?」
はい。プロットは大分前に出来てますので、書く時間さえあれば。
夜:「以前よりPCの前に居る時間は増えたのにな」
ははははは、仕事中に書ける環境ではないですし……それに……
夜:「アレか?」
ええ、あまり続くようだと、プロバイダーレベルで訴えることも考えてるんですが……
夜:「知ってはいたが性質が悪いな……」
アレのおかげで執筆意欲が失せた事も何度か……
夜:「ソレは貴様の気合不足だ」
いや、自衛策も考えてますよ。いちおう、串追っかけで何人かは目星を付けてますし。
夜:「で?」
いや、裁判沙汰が一番、楽しいかなっと。
夜:「……ストレス?」
……すみません。ちょっと物騒でしたね。基本は穏便に行くのが一番ですよね?
夜:「知り合いの弁護士がいる貴様に、その冗談は洒落に聞こえんぞ」
一応掲示板で警告しているので、後は実行するだけですけどね。
夜:「………………」
もしくはココを一旦閉鎖するか……ですが。
夜:「……貴様の悪い癖は、面倒でも楽しいと思えば実行するところだな」
無抵抗でいるままでは、いられない性格なので。
夜:「穏便にな」
あれ? 今日は珍しくおとなしめ?
夜:「いや、いろいろと貴様には言いたい事があったのだが」
?
夜:「今の貴様は刺激しないほうが良しと思うてな」
あれ? そんなに私、アレでしたか?
夜:「うむ!」
そんなに大きく頷いて、強調しなくても。
夜:「まぁ、とにかく時間を見つけて早く次の更新をする事だな」
……そうっすね。
夜:「そして私と主殿との愛の日々を綴るのだ」
いや、そんな予定は――
ぼぎゃ
(血塗れの物体):……………
夜:「初お約束、終了」