本編の番外的な位置……と言うより補足ですね。

時間的には第三夜、妙神山下山後になります。




GS横島

 番外4 シロタマの質問  〜蒼眼 前編〜




  

ある晴れた休日の昼下がり。

横島は縁側でぼんやりとしていた。

美神の仕事がキャンセルになり急遽、暇になった所為なのだが。

そんな横島のもとにシロタマの獣っ娘コンビがやってきた。


「ヨコシマ、ひとつ聞いてもいい?」 「先生っ、質問があるでござる」

「なんだ? 俺に判ることなら答えるけど」


やってきたシロタマコンビに急に尋ねられて、横島が少し驚いたような顔で答える。


「優華殿達から聞いたのでござるが、先生の眼はとても良く視えるとのこと」

「普通でも、かなり霊視能力が高いって聞いたわ」

「ああ、その事か。普通に視える状態でも霊視能力は高いらしいよ。前に美智恵さんが言ってたから」


以前『どの位見えるのか』という事で美神の母、美智恵が霊的視力検査をした事がある。

その事をシロタマに伝えると二人とも不思議そうな顔になった。


「って、どうした? そんな顔して。なにか変か?」


横島の声にシロが手を上げて質問する。


「じゃあ先生は、某漫画の『白眼』みたいな事が出来るのでござるか?」


横島の左隣に座りながら質問するシロに横島は真面目な顔で答える。


「出来る……といっても、今のままじゃ無理だ。閉じてる――つまり、封じてる『眼』を開かなきゃ出来ないけどな」


「浄眼……とかいうんでしょ。ルシオラから聞いたけど眼の色が蒼く変るんだって?」


横島の右隣に座りながらタマモが横島の黒い瞳を見て尋ねる。


「タマモ、そこまで聞いたのか。まぁ、知ってるんなら話は早いか」


別に隠す気は無かったしな。そう呟くと横島は自分の持つ力の説明を始める。


「普通の――てゆうか、今の状態で視えるのは、普通の霊能力者の皆さんと大して変らない。

で、浄眼――とか呼ばれる状態なんだが、第一眼を開くと外見的には眼の色が蒼く変る。

能力的な変化は霊的視力の強化。霊的識別能力の強化に、透視能力って所かな」


指折り数えながら説明する横島にシロが尻尾を振りながら質問する。


「霊的識別能力の強化とは何でござるか?」

「えーと、霊的視力が『霊をはっきり視る』能力とするなら、霊的識別能力は霊的、術的を含む、

『力の識別』能力……かな。簡単な幻術なんかは見破れるぞ。まぁ天然霊視ゴーグルみたいなもんかな」

「透視能力って……もしかして?」


横島の説明に気付いたようにタマモが確認するように尋ねる。

隣に座っているので、話し掛ければ身長差で自然と上目遣いでの質問になるタマモ。


「まぁ、タマモの想像どおり、透かして視る能力の事だ。ある程度の霊的防御力がないと透けて視える」

「第一眼……て事は未だあるの?」

「おっ、タマモ鋭いな。一応、俺は三段階って考えてる。力の段階なんて曖昧なもんだし、

俺の中での区切りって意味だけどな。普段使うのは精々一段階どまりだけど」


タマモを誉めたことが気になったのか、シロが横島の袖を引っ張りながら尋ねた。


「浄眼とは透視も出来るのでござるか?」

「さぁ? 俺のは変ってるらしく、そう呼ばれてるだけで……呼び方なら他にもあるけど」


横島は自分の視る能力の正確な呼び方を知らない。蒼く変わるから浄眼と呼んでいるだけだ。

他には、蒼く変わるから蒼眼そうがんと呼ばれたりもする。


「第二段階はどうなるの?」

「第一段階の能力の強化に、遠隔視……つまり千里眼の能力が増える」


顔に疑問符を貼り付けてシロが小首を傾げる。


「千里眼ってなんでござる?」


幼さと可愛らしさの中間ぐらいの仕草に横島は笑って答える。


「第一眼――第一段階の事なんだが――が開いた状態では、俺が視ることが出来る距離は

肉眼で視える距離に等しいんだ。つまり、道具を使って目視出来るのが限界距離かな」

「双眼鏡とか望遠鏡とか?」


少し考えてタマモが尋ねる。その言葉に頷く横島。


「そう言う事。モニター越しだとダメ。その制限が第二眼が開くと無くなる。

視ようとすれば、霊的な防御でもない限り視る事が出来る。

おまけに視界は360°死角なしだ」

「まさしく『白眼』でござるな……凄いでござるっ」


興奮気味のシロに横島は苦笑を浮かべる。


「そうでも無いよ。俺は昔から力の制御が苦手だったし、今でもあまり上手くない。

視る必要の無いモノまで視えちまうんだ。まぁ無意識に視たくないモノは見え難いんだが。

第一眼に至っては、無意識のうちに勝手に開く時があるしな」


それで良く美神さんに、どつかれるんだ、と小さく呟く横島。

そんな横島の様子にシロタマは益々不思議そうな顔で横島を見つめる。


「「じゃあ、ヨコシマ(先生)は、何故その力を覗きに使わないの(でござるか)?」」


ぐわたっがたがた


派手に縁側からズリ落ちて暫く固まった横島だが、数秒後に再起動。


「まてまてまて!? 何故にそういう質問が出るんだ? 西条あたりにでも吹き込まれたか?」


勢い良く立ち上がりシロタマに尋ねる横島。


「違うでござるよ。拙者達が自分で考えて判らなかった事でござるよ」

「そうよ。西条からは何も聞いてないわ。」

「そっか……そう言えば、少し前まで行方不明だったな……退院したんだっけ?」


余計な事を吹き込みそうな男No1の西条の近況を思い出し、横島は一瞬遠い目になる。


「じゃあ何で? どうして? WHY?」

「先生が、女体に興味を持たれていることは承知しているでござるよ」


居住まいを正し、真面目な顔でいうシロ。


「承知しているとは……?」


急に真面目な顔になったシロに嫌な予感を憶えながら尋ねる横島。


「先生が、女体の観賞を行なっている事は知っているでござる」


「ぐはっ……て、見付かってたのか!?」


横島は自分の所業が明るみに出て動揺し思わず確認してしまう……が。


「大丈夫よ、ヨコシマ。健康な男子高校生なら当然の反応だから」


ぽんぽんと、横島の肩を叩いてタマモに慰められてしまう。


「ぐわっ、それで慰められると余計……」


なんとコメントして良いか解らず頭を抱える横島にタマモが笑って告げる。


「それに妙神山の修行場から帰ってきてヨコシマが自分に正直&素直になったって優華達が喜んでいたから」

「バレバレですか……てゆうか何故に喜ぶんだ? まさかそんな趣味が!?」


優華達の妙な反応に考え込む横島だが――


「そんなことはどうでもいいの。ヨコシマがスケベなのは解っているから」

「うぅ……そんな理解のされ方は……喜ぶべきなんだろうか?」


タマモの言葉に、横島は思わず天を見上げて呟く。


「先生が男らしいのは結構な事だと里の皆も申しておりましたし」

「シロ、人狼の里まで伝わってるのか……」


『性犯罪者』の烙印を押された罪人のように(※:覗きは犯罪です)項垂うなだれる横島にシロタマが尋ねる。


「「ですから(だから)、何故、ヨコシマ(先生)は覗きに能力を使わないの(でござるか)?」」


二人の質問に力なく微笑んで、横島は顔を上げて二人の顔を見る。


「それは……一人のおとこに会った御陰さ」

おとこでござるか?」

「それとどう関係があるの?」

「彼に出会った御陰で俺は能力ちからの使うべき時を知ったんだ」


昔を思い出すようにゆっくりと言葉を選びながら、横島は懐かしそうな顔で答える。


「そう、あれは俺が10歳の頃、まだ大阪に住んでた頃の話だ……」


語り始めた横島の瞳は無意識の内に蒼く変わっていた。






番外編は短く……が基本だったのに長くなったので分けました(笑)

今回は横島の所持能力、霊視能力についての説明です。

ついでに、西条の帰還を知らせる話でも有ります。

……てゆうか、いつか西条にもいい目を見せなきゃ……出来るのか俺?

いえ、西条は能力自体は優秀なんですが……何故だろう? 横島を少しかっこ良くすると西条が堕ちて行くのは?(爆)

では、後編に続きます。




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