本編補足、第3夜と第4夜の間の話です。
「と、言う訳で人手が要るのだ」
「何が『と、言う訳』なのよ?」
いきなり話を切り出した夜に美神さんがクレームをつけた。
話は数時間前に遡る。
この前の『匣』の仕事から数日経った頃。
美智恵さんが忙しいらしく美神さんが報酬を渡しに俺の家にやって来た。
なんでワザワザと思うだろうが俺の給料は基本的に手渡しだ。
必要経費がどうとか言っていたが……聞かない方がいいだろう。
そんな時、夜が少し回復したらしくタイミングを計ったように俺の前に姿を見せた。
もちろん、美神さんがこの機会を逃すはずは無く、そのまま夜の紹介という事になった。
ちなみに俺は首から下は簀巻き状態だ。
逃げないようにとの事らしいが……誰かタスケテ〜〜〜。
売られていく子牛の気分でお隣のルシオラの家へ連行運ばれる俺。簀巻きだからね。
折角だからと言う事で知り合いに連絡してルシオラの家に集合となったらしい。
俺の家ではない理由は、派手に暴れても大丈夫な広さと強度の部屋があるから。
処刑確定ですか!?
俺の内心の叫びはどこか遠くに響いていった。
GS横島十夜
番外7 夜の匣 〜お宝発見!? 前編〜
ルシオラの家は広い。
一部屋一部屋が広いうえに、どう考えても外から見た間取りよりも広い。
前に聞いたら、『空間が〜』とか言っていたが良く判らなかったので気にしない事にしている。
急遽連絡が周り、集まったメンバーは、美神さん、ひのめちゃん、おキヌちゃん。
美智恵さんは相変わらず忙しいらしく出張中で留守だそうだ。
それから俺、優華、夜、タマモ、シロと続き、ルシオラ、ベスパ、パピリオが来て、
何故か六道冥子さんが美神さん家へ遊びに来ていた流れで参加していた。
ちなみに俺は少しでも助けを呼ぼうと連絡を頼んだのだが――
雪之丞は連絡着かず(連絡方法不明、たぶんどこかで修行中だ)、
ピートは唐巣神父の手伝いで無理。
タイガーも小笠原エミさんの所でバイト中らしい。
それ以外に助けに呼べそうな奴と言ったら西条居ないよなぁ。
で、夜の自己紹介な訳だが、余計な事は……言うだろうなぁ……多分。
広い客間に皆が集まったのを見渡して夜が姿勢を正す。
「私の名は夜。我が愛しき主、横島十夜に名付けられし者。以後よしなに」
いつもながら丁寧な挨拶だ。礼儀正しいとも言える。可愛らしい容姿と相まって……。
これで余計な事さえ言わなければなぁ……て、チョットマテ!?
「……って、オマエ!?」
「『愛しき主』か? 前は『愛すべき主』だったが、更に私の主殿への想いが高まって『愛しき主』にランクUPだ」
「やったぁ……って、そうじゃねぇって!!」
俺の叫びに夜は小首を可愛らしく傾げる。そして何かを思い出したようにポンッと手を打ち鳴らす。
「約束通り私を好きにする事か?
せっかちだな主殿は……しかし私も主殿の僕。覚悟は完了済みだ、いつでもいいぞ。」
「のぉーーーー!!」
俺の絶叫に夜は頬を染め、片手を頬に添え照れたように微笑む。
「そんなに喜んで貰えるとは嬉しいが照れるぞ、主殿」
「しくしくしくしく」
目の幅で涙する俺。もちろん俺にかかる周りからの圧力は凄まじいモノがあったよ……。
あぁ、そうだよ……判っていたさ、こうなる事はね。
でもちょっと位、予想が外れてもいいと思いませんか(泣)
とりあえずココからの描写は詳しくするとバイオレンス&ダーク&スプラッタ指定が入るので、ダイジェスト版でどうぞ。
「み、美神さん待ってください。話を……」
ぼぐぅ
「マ、マテ……優華、ルシオラ、話を……」
ぎゅにぃ、ぱしぱしん
「お、おキヌちゃんにシロ、タマモ、話を聞いて……」
ぱしん、ぼぐっ、ぼかっ
「ひのめちゃん、パピリオ………………ツープラトンは嫌ぁー!!」
どごどがどごどがどんっ
「ベ……ベスパは信じて……て、その霊波砲は何?」
ちゅどどどどどどーん
「め、冥子さんは……式神ですか?」
―――式神による12連コンボ発動中、暫くお待ちください―――
殴られて、抓られて、往復で引っ叩かれて、シングルで引っ叩かれて、膝蹴り、アッパー、
友情のツープラトンアタックから連続霊波砲を喰らい吹き飛び、
着地際に式神による12連コンボ……
ちなみに12連コンボの途中でキャンセル入れて、最初のボディアッパーに繋ぐと無限コンボが完成します。
「て、コンボ解説してる場合かぁーっ!! って……あれ!?」
気がつくと俺は、知らない天井を見ていた……まだ簀巻きのままだし。
生きている証拠のように体のあちこちが痛む。
耳を澄ますと向うの部屋から皆の話し声が聞えた。
状況から考えると、とりあえず自己紹介は終わったらしい。
俺の誤解は……解けたと考えていいかな。
出来れば最初から穏便に……てゆうか、何故、夜の自己紹介でこんな目に会わにゃいかんのだ?
「それが主殿の良い所だ」
「何か違う、激しく違う、絶対違うーっ……て、夜か?」
夜の声に首を向けると、傍らに夜が座っていた。
「そろそろ目を覚ました頃だと思ってな、様子を見に来たのだ」
そう言って夜が俺の頭を自分の膝に乗せる。
なんとなく気恥ずかしくなり起きようかと思ったが……動けない。
簀巻きのまま攻撃されると急所を外すのが精一杯で、結構ダメージを受けたみたいだ。
「あれ? そういえば優華とルシオラは?」
「うむ、今回、優華達は誤解とは言え加害者だからな」
いつもなら2人のどちらかが看護してくれていたのだが今回は夜が看護してくれたらしい。
皆も俺が夜みたいな子供に悪戯するとでも思ってるのか?
俺はロリじゃ無い筈……だから大丈夫なのになぁ。
誤解とはいえ夜の為に怒って攻撃したんだから悪いとも言えないし……と言うより元凶無傷?
「オマエは無事な訳だな。まぁ皆、お前の為に怒ってた訳だし……」
「うむ! 当然だ。が、主殿は私の為に彼女達が怒っていたと思うのか?」
そうだろう? と首を傾げる俺に、夜は何故か呆れたような諦めたような溜め息をつく。
「確かにコレは苦労するな。私も、彼女らも……まぁ、今回は計画通りとも言えるから良しとするか」
満足そうに頷く夜の声を聞き、そっかぁ計画通りかぁなんて内心で呟いて……。
「ちょっと待て。計画って……?」
「ふふふ、今回の主殿の看護は私が独占したという事だ」
「計画的? 確信犯?」
くすっ
「皆が待っておるぞ」
「追加は嫌ぁー」
錯乱気味の俺に構わず夜は俺を引き摺っていった。
そして冒頭のセリフに戻る訳だ。
「ちょうど皆、暇そうなのでな」
話を聞くと、妖蜘蛛の所為で荒らされた『匣』と呼ばれていた場所――
今は『夜の匣』と名付けられた呪敵物品倉庫の整理をしたいとの事。
保管物自体の損傷、被害は軽微だったが、管理システムが損傷しており在庫確認がはかどらないらしい。
それで棚卸をしたいとの事だが、それに人手が要るので手伝って欲しいとの事だった。
「で、どうだ?」
「俺は別にいいけど」
「私も……」
「私もいいよ。特に用事も無いし」
俺と優華、ルシオラはOKだ。ベスパとパピリオは用が有るらしいので今回はパスか。
「拙者は先生のお手伝いをするでござる」
「アンタやっぱり馬鹿犬ね。手伝う相手は横島じゃなく夜よ」
「馬鹿犬ではござらん!!。女狐こそ勘違いしておる。拙者、先生が夜殿を手伝うのを手伝うのでござるよ」
「私はいいよ。夜ちゃんのお手伝いでしょ? お兄ちゃんと一緒だし……」
向うで口喧嘩している犬「狼!」……と狐も参加、それにひのめちゃんもOKっと。
しかしひのめちゃん、相変わらず人見知りしないよな。いつの間にか夜とも仲良しになったみたいだし。
「わたしは〜いいですよ〜」
冥子ちゃんはいつものペースだ。まぁ美神さん達もいるし暴走は……無いといいなぁ。
「わたしは……」
既に断ろうと決めて口を開きかけた美神さんに夜の声が重なる。
「もちろん、ただとは言わぬ。在庫整理の都合上、蔵出ししても良いものなら……」
「で、いつなの?」
美神さんの、いつものノリに俺達は生温かい笑みを浮かべた。
誕生日の朝に部屋が揺れた人間は少ないだろうね(挨拶)
バレンタインネタをどうしようか考え中の夜魔秀一です。
番外編です。長いので切りました。
番外だけど入れたいエピソードが有ったので……出来るだけ早く次回UPしたいなぁ。
夜:「と後書きにあるが、今も以前とあまり変わらん状況だな」
そのとおりです(泣)。既にバレンタインネタは○年越しですよ
夜:「書いてはいると?」
プロットだけは……脳内に(汗)
夜:「で、出さない理由は?」
え……と、本編とリンクさせたいので、時期が合わなかったことが原因ですね
夜:「他には?」
いや、純粋に間に合わなかっただけ……はっ!?
ごりゅ
ゆ……誘導尋問ですか……
夜:「次回は早く上げる事だな」
で、出来る限り頑張ります……