番外編 一

出会い
 とある天気の良い休日。午後から家族と連れ立って散歩に出かける。交通量の多い幹線道路を避けて、梨畑と雑木林の間の小さな道を他愛もない話をしながら歩く。30分も歩くと造成地の脇を通って集落へ出る。子供たちがそろそろ「疲れた」だの「ノドが渇いた」などと言っている。コンビニでも探して、ジュースかアイスでも買って黙らせるか。そう言えば「ここから坂を下った所に最近コンビニができたっけ。」と思い、道を左に折れる。道はすぐ先で二股に分かれているが、2本の道の間に神社がある。鳥居脇には市役所が設置したのだろう看板が立っている。「何々、鳥見神社の神楽。こんなところでも神楽なんかあるんだ。」と妻と話す。電車に乗れば日本橋まで1時間足らずの通勤圏である白井市。駅から少し離れれば自然が残り静かな場所である。これがよくある日常の風景の1コマ、何の変哲もない鳥見神社との出会いだった。

疑 惑
 「今日はどこまで歩いたかな。」夕方1時間以上歩いて家に帰る。風呂に入ってから今日の道程の確認だ。道路地図を見ても縮尺が大きすぎて道が載っていない。「そういえば、ここに引っ越してきた時に、大きな1枚地図を買ったっけ。」引き出しから1/23000の地図を引っ張り出して見る。「駅がここだから、家はここだな。幹線道路を避けて行ったから、この細い道を上に行ったと。途中に神社があって、そこを下ってコンビニで一休みしたな。」地図にはハッキリと神社マークと鳥見神社と載っている。地図にある目線をふと上にずらすとそこにも鳥見神社がある。「ねぇねぇ、今日行った神社って、ここらへんにいっぱいあるみたい。」と家族に伝える。家族がどれどれと地図に見入る。ここにもあるよ。こっちにもある。全部で10個以上見つかった。地図は東は本埜村から西は沼南町(現柏市)までの地図だ。しかも「鳥見」って初めて聞いた名前だ。浅間神社や八幡神社、稲荷神社のようにメジャーな神社ではない。なんでこんなに沢山あるんだろう。なぜ?なぜなんだろう・・・。

調 査
 一度気にかかると調べずにはいられないのが性分。まずネットで照会してみる。十数件のヒットだ。その内のほとんどが役所関係のもので、文化財の紹介が中心だった。北総の神社の紹介ページもある。クリックすると柏から印西地区の神社の紹介をしている。神社がこんなに多様なものと初めて知った。そして鳥見神社が20社近く在る事も。次は図書館だ、郷土コーナーと神道のコーナーを探す。「鳥見、鳥見っと・・・・。」だが残念な事に、私の素直な疑問にストレート真っ向勝負してくれるものは無かった。「こうなりゃ自分で調べてくれるわ」っと心に決め、取りあえず「神社スケッチブック」と言う初心者向けの本を1冊だけ借りた・・・。これが鳥見神社とのお付き合いの始まりだった。