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労働法とは
労働法といっても、「労働法」という名前がついた一つの法律があるわけではありません。労働問題に関するたくさんの法律をひとまとめにして労働法と呼んでいます。その中には、労働基準法や労働組合法をはじめ、男女雇用機会均等法、最低賃金法といった様々な法律が含まれています。
労働法の役割
会社に就職しようとする場合、働く人(労働者)と会社(雇う人、使用者、事業主)との間で、「働きます」「雇います」という約束=労働契約が結ばれます。どういう条件で働くかといった契約内容も労働者と使用者の合意で決めるのが基本です。だからといって、この契約を全く自由に結んでよいとしてしまったらどうなるでしょうか。
労働者はどこかに雇ってもらって給料をもらわなければ、生計を立てていくことができません。したがって、雇ってもらうためには、給料や働く時間に不満があっても、会社の提示した条件どおりに契約を結ばなければいけないかもしれません。また、もっと高い給料で働きたいと言って、会社と交渉しようとしても、「ほかにも働きたい人はいるから、嫌なら働かなくていい」と会社に言われてしまえば、結局会社の一方的な条件に従わなければいけなくなることもあるでしょう。
このように、全くの自由にしてしまうと、実際には立場の弱い労働者にとって、低賃金や長時間など劣悪な労働条件のついた、不利な契約内容となってしまうかもしれません。そうしたことにならないよう、労働者を保護するために労働法は定められています。労働法について知識をつけておくことが、みなさん自身の権利を守ることにつながります。なお、労働法の保護を受ける「労働者」には、雇われて働いている人はみんな含まれますので、正社員だけでなく、パートやアルバイトでも「労働者」として労働法の適用を受けます。
労働組合とは
労働組合とは、「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持・改善や経済的地位の向上を目的として組織する団体」、すなわち、労働者が自分たちの手で自分たちの権利も守るために作る団体です。
休みも十分にとれずに低賃金で働いている状況をなんとかしたくても、労働者ひとりで会社相手に改善を要求・実現していくことは、簡単なことではありません。要求しても、「君の代わりはいくらでもいるから、嫌なら辞めてくれていいよ」と会社に言われてしまったらそれで終わり、ということにもなりかねないからです。
そこで、労働者が集団となることで、労働者が使用者(会社)と対等な立場で交渉できるよう、日本国憲法では、@労働者が労働組合を結成する権利(団結権)、A労働者が使用者(会社)と団体交渉する権利(団体交渉権)、B労働者が要求実現のために団体で行動する権利(団体行動権(争議権))の労働三権を保障しています(日本国憲法第28条)。そして、この権利を具体的に保障するため、労働組合法が定められており、使用者は正当な理由がないのに、団体交渉を行うことを拒否してはいけないとされています。
また、労働組合法は、会社が、労働組合に入らないことを雇用の条件としたり、労働者の正当な組合活動を理由に解雇や不利益な取扱い(給料の引き下げ、嫌がらせなど)をすることなどを不当労働行為として禁止しています。このような不当労働行為を受けたときは、労働組合側は、中央労働委員会・都道府県労働委員会に救済を求めることができます。
働き始める前に
労働契約を結ぶとき
仕事をするときは、仕事の内容や給料、勤務日などの労働条件をチェックして、自分に合った条件の会社で働こうとします。しかし、条件の合う会社に就職できても、実際に働き始めたら、会社の人が最初に言っていたことと全く条件が違っていた、なんてことになってしまったら、困りす。そこで、労働法ではそんなことがないように、労働契約を結ぶときには、使用者が労働者に労働条件をきちんと明示することを義務として定めています。
さらに、特に重要な次の5項目については、口約束だけではなく、きちんと書面を交付しなければいけません
@ 契約はいつまでか(労働契約の期間に関すること)
A どこでどんな仕事をするのか(仕事をする場所、仕事の内容)
B 仕事の時間や休みはどうなっているのか(仕事の始めと終わりの時刻、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、就業時転換(交替制)勤務のローテーション等)
C 賃金はどのように支払われるのか(賃金の決定、計算と支払の方法、締切りと支払の時期)
D 辞めるときのきまり(退職に関すること(解雇の事由を含む))
これら以外の労働契約の内容についても、労働者と使用者はできる限り書面で確認する必要があると定められています。労働契約を結ぶことによって、会社は「労働契約で定めた給料を払う」という義務を負いますが、一方で働く人も、「会社の指示に従って誠実に働く」という義務を負うことになります。
労働契約の禁止事項
今の会社をやめて新しい会社に転職したくなったときに、途中で辞めるとペナルティとして罰金を取られるという条件があっては、辞めることができなくなります。そこで、労働法では、労働者が不当に会社に拘束されることのないように、労働契約を結ぶときに、会社が契約に盛り込んではならない条件も定められています。
@ 労働者が労働契約に違反した場合に違約金を支払わせることやその額を、あらかじめ決めておくこと。たとえば、使用者が労働者に対し、「1年未満で会社を退職したときは、ペナルティとして罰金10万円」「会社の備品を壊したら1万円」などとあらかじめ決めておいたとしても、それに従う必要はありません。もっとも、これはあらかじめ賠償額について定めておくことを禁止するものですので、労働者が故意や不注意で、現実に会社に損害を与えてしまった場合に損害賠償請求を免れるという訳ではありません。
A 労働することを条件として労働者にお金を前貸しし、毎月の給料から一方的に天引きする形で返済させること。労働者が会社からの借金のために、やめたくてもやめられなくなるのを防止するためのものです。
B 労働者に強制的に会社にお金を積み立てさせること(労働基準法第18条)。積立の理由は関係なく、社員旅行費など労働者の福祉のためでも、強制的に積み立てさせることは禁止されています。ただし、社内預金制度があるところなど、労働者の意思に基づいて、会社に賃金の一部を委託することは一定の要件のもと許されています。
就業規則を知っていますか
労働者が会社で働くときの労働条件は、その職場で働く人たちみんなに共通のものが多いですが、そのような共通のルールは「就業規則」に定められることになっています。就業規則は、労働者の賃金や労働時間などの労働条件に関すること、職場内の規律等について、労働者の意見を聴いた上で使用者が作成するルールブックです。大勢の集まりである会社においては、ルールを定めそれを守ることで、みんなが安心して働き、無用なトラブルを防ぐことができるので、就業規則の役割は重要です。就業規則は、掲示したり配布したりして、労働者がいつでも内容がわかるようにしておかなければいけないとされていますので、自分の職場で何か気になることがあるときは、就業規則で確認しましょう。
就業規則のきまり・・・常時10人以上の労働者を雇用している会社は必ず就業規則を作成し、労働基準監督署長に届け出なければいけません。 就業規則に必ず記載しなければいけない事項は、次の通りです。
・ 始業および終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、交替勤務制の場合の就業時転換(交替制)に関する事項
・ 賃金に関する事項
・ 退職に関する事項
☆ 就業規則の作成・変更をする際には必ず労働者側の意見を聴かなければいけません。また、 就業規則の内容は法令や労働協約に反してはなりません
安心して働くための各種保険と年金制度
求人情報を見ているときに、「各種保険完備」と書かれている会社を見たことがあると思いますが、これはどういう意味でしょうか。「各種保険完備」とは、会社が雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金保険に加入しており、その会社で働く従業員にはそれらの制度が適用されますよ、ということを示しています。これらは、病気や怪我をしたとき、出産をしたとき、失業したとき、高齢になったときなど、働けなくなってしまうような様々な場面で必要な給付を受けられるようにして、労働者の生活を守ることを目的とした国が運営する制度です。就業する際には、自分が働こうとしている企業がどういった制度に加入しているのかチェックしておくことがとても大切です。
基本的な社会保険制度
・ 雇用保険
雇用保険は、労働者が失業した場合に、生活の安定と就職の促進のための失業等給付を行う保険制度です。勤め先の事業所規模にかかわらず、@1週間の所定労働時間が20時間以上でA31日以上の雇用見込がある人は適用対象となります。雇用保険制度への加入は事業主の責務であり、自分が雇用保険制度への加入の必要があるかどうか、ハローワークに問い合わせることも可能です。保険料は労働者と事業主の双方が負担します。失業してしまった場合等の給付についてはこちらをご覧下さい。
・ 労災保険
労災保険は、労働者の業務が原因の怪我、病気、死亡(業務災害)、また通勤の途中の事故などの場合(通勤災害)に、国が会社に代わって給付を行う公的な制度です。
労働基準法では、労働者が仕事で病気やけがをしたときには、使用者が療養費を負担し、その病気やけがのため労働者が働けないときは、休業補償を支払うことを義務づけています。しかし、会社に余裕がなかったり、大きな事故が起きたりした場合には、十分な補償ができないかもしれません。そこで、労働災害が起きたときに労働者が確実な補償を得られるように労災保険制度が設けられています。
基本的に労働者を一人でも雇用する会社は加入が義務づけられており、保険料は全額会社が負担します。パートやアルバイトも含むすべての労働者が対象となり、給付が受けられます。会社が加入手続きをしていない場合でも、事故後適用が可能であり補償を受けられます。
・ 健康保険
健康保険は労働者やその家族が、病気や怪我をしたときや出産をしたとき、亡くなったときなどに、必要な医療給付や手当金の支給をすることで生活を安定させることを目的とした社会保険制度です。病院にかかる時に持って行く保険証は、健康保険に加入することでもらえるものです。これにより、本人が病院の窓口で払う額(窓口負担)が治療費の3割となります。
健康保険は@国、地方公共団体又は法人の事業所あるいはA一定の業種で常時5人以上を雇用する個人事業所では強制適用となっており、適用事業所で働く労働者は加入者となります(パート、アルバイトでも、1日または1週間の労働時間及び1か月の所定労働日数が、通常の労働者の4分の3以上あれば加入させる必要があります)。また、保険料は、事業主と労働者が折半で負担します。
・ 厚生年金保険
厚生年金保険は、労働者が高齢となって働けなくなったり、何らかの病気や怪我によって身体に障害が残ってしまったり、大黒柱を亡くしてその遺族が困窮してしまうといった事態に際し、保険給付を行い、労働者とその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とした制度です。
厚生年金保険適用事業所は、健康保険と同様@国、地方公共団体又は法人の事業所あるいはA一定の業種(※)であり常時5人以上を雇用する個人事業所では強制適用となっており、適用事業所で働く労働者は加入者となります(パート、アルバイトでも、1日または1週間の労働時間及び1か月の所定労働日数が、通常の労働者の4分の3以上あれば加入させる必要があります)。また、保険料は、事業主と労働者が折半で負担します。
働くときのルール
労働条件が違っていたら
実際に働き始めたら、給料、労働時間、仕事の内容など、あらかじめ示された労働契約の内容と実際の労働条件が違っていた場合にはどうすればよいのでしょうか。そのようなトラブルがないように、労働基準法では労働条件の明示が義務づけられていますが、実際に労働条件が違っていた場合には、労働者は約束通りにするように要求できますし、そのことを理由にすぐに契約を解除することが認められています。この場合は有期労働契約の契約期間途中であっても、退職することができます。
不利益変更があったときの注意点
たとえば、「引き下げられた給料をただ黙って受け取っている」と、同意があったとみなされてしまうおそれがあるので注意しなくてはなりません。 「いつもより額が?なかった」など、気になることがあった場合は、会社に問い合わせましょう。
賃金についてのきまり
仕事を選ぶときには、給料の額は重要なポイントとなります。
賃金は、労働者の生活の柱となるものですから、景気や求人の状況によって賃金が低くなりすぎて、働いても生活の維持が困難となるということは、防止しなければいけません。そこで、「最低賃金法」によって、使用者が支払わなければならない賃金の最低限度額が定められています。最低賃金は、都道府県ごとに決まっています。この最低賃金は、労働者の大事な権利ですから、たとえ労働者が同意したとしても、それより低い賃金での契約は認められません。もし、頼まれて時給500円で働くことに同意してしまったとしても、その約束は法律によって無効となり、最低賃金額と同額の約束をしたものとみなされます。したがって、最低賃金との差額×働いた時間分を後から請求することができます。
支払われ方についてのきまり
賃金が全額確実に労働者に渡るように、支払われ方にも決まりがあり、次の4つの原則が定められています。
@通貨払いの原則
A直接払いの原則
B全額払いの原則
C毎月1回以上定期払の原則
その他のきまり
その他、労働者の生活の保障のために賃金については、以下のようなきまりもあります。
☆ 減給の定めの制限
☆ 休業手当
☆ 給与明細書
労働時間と休憩・休日についてのきまり
労働時間のきまり
どんな仕事でも、長時間続けて働くことは心身ともに大きな負担となります。最近では、過労によるストレスなども大きな問題となっています。労働者が働きすぎにならないように、労働時間や休憩・休日についても、ちゃんときまりがあるのです。
就業規則で始業や終業の時刻が決まっています。働くあなたは、始業の時刻に遅刻しないようにし、勤務時間中は無断で職場を離れることなく、上司に従って誠実に業務を遂行しなければなりません。
働く時間の長さは法律で制限されています。労働基準法では、1日の労働時間を8時間以内、1週間の労働時間を40時間以内と定めています。
法定労働時間を超えて労働者を働かせる場合には、あらかじめ従業員の過半数代表者等と「時間外労働・休日労働に関する協定」を締結し、労働基準監督署に届け出なければいけません。この協定は労働基準法第36条に規定されていることから、「36協定(サブロク協定)」と呼ばれています。36協定により延長できる労働時間については、厚生労働大臣が定める時間外労働の限度に関する基準において上限時間が示されており、協定内容はこの基準に適合するようにしなければなりません(原則週15時間、月45時間)。
使用者が労働者に時間外労働をさせた場合には割増賃金を払わなければなりません。
@ 法定労働時間を超えて働かせた時(時間外労働)は25%以上増し
A 法定休日に働かせた時(休日労働)は35%以上増し
B 午後10時から午前5時までの深夜に働かせた時(深夜労働)は25%以上増し
☆ 例えば、法定労働時間外の労働かつ深夜労働であった場合(@+B)は、支給される賃金は50%以上増えます。
※ 1ヶ月60時間を超える時間外労働については50%以上の割増賃金を支払わなければなりません。ただし、中小企業については当分の間適用が猶予されます。さらにこの割増賃金は雇用形態に関わらず、すべての労働者に適用されます。よって、アルバイト(パートタイム労働者)にも支払わなければなりません。
休憩・休日のきまり
使用者は1日の労働時間が6時間を超える場合には?なくとも45分、8時間を超える場合には?なくとも60分の休憩を勤務時間の途中で与えなければいけません。休憩時間は労働者が自由に利用できるものでなければならないので、休憩中でも電話や来客の対応をするように指示されていれば、それは休憩時間ではなく労働時間とみなされます。
また、労働契約において労働義務を免除されている日のことを休日といいます。使用者は労働者に毎週少なくとも1回、あるいは4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。
変形労働時間制
変形労働時間制とは、一定の要件の下、一定の期間を平均して1週間の労働時間が40時間を超えない範囲で、1日当たりの労働時間が8時間を超えたり、1週間当たりの労働時間が40時間を超えて労働させることができる制度です。 変形労働時間制には、1か月単位、1年単位の変形労働時間制、1週間以内の非定型的変形労働時間制、労働者が自分で始業時刻、終業時刻を決定できるフレックスタイム制があります。
変形労働時間制は、労働時間を弾力化することで業務の効率をよくする反面、労働者にとっては、生活が不規則となったり、通常の労働時間制ならもらえるはずの時間外手当がもらえなくなったりすることにつながるなどの問題点もあります。
そこで、変形労働時間制の導入には、就業規則や労使協定で定めておく必要があるなどの要件を満たす必要があります。また、妊産婦や育児・介護を行う人たちには適用制限がありますし、変形制といっても全く自由に長時間連続で働かせることができるわけではなく、法令上、上限や時間外労働、休みに関する規定が定められており、それに反することはできません。
年次有給休暇
年次有給休暇とは、所定の休日以外に仕事を休んでも賃金を払ってもらうことができる休暇のことです。労働者は、半年間継続して雇われていて、全労働日の8割以上を出勤していれば、10日間の年次有給休暇を取ることができます。さらに勤続年数が増えていくと、8割以上の出勤の条件を満たしている限り、1年ごとに取れる休暇日数は増えていきます。(20日が上限。)
【年次有給休暇の付与日数(一般の労働者)】
| 勤続年数 | 6ケ月 | 1年6ケ月 | 2年6ケ月 | 3年6ケ月 | 4年6ケ月 | 5年6ケ月 | 6年6ケ月 |
| 付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
また原則として有給休暇は、休養のためでもレジャーのためでも利用目的を問われることなく、取得することができます。しかし、会社の正常な運営を妨げるようなことになるときに限っては、会社が別の時期に休暇を取るように休暇日を変更させることができます。
アルバイト(パートタイム労働者)でも、@6ヶ月間の継続勤務A全労働日の8割以上の出勤B週5日以上の勤務という3つの要件を満たせば、有給休暇は正社員と同じだけ付与されます。週の所定労働時間が4日以下で、週の所定労働時間が30時間未満の場合でも、その所定労働日数に応じた日数の有給休暇が付与されることになります。
【年次有給休暇の付与日数(週所定労働時間が30時間未満の労働者)】
| 週の 所定 労働 日数 |
1年間の所定 労働日数 |
勤 続 年 数 | ||||||
6ケ月 |
1年 6ケ月 |
2年 6ケ月 |
3年 6ケ月 |
4年 6ケ月 |
5年 6ケ月 |
6年 6ケ月 |
||
| 4日 | 169〜216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
| 3日 | 121〜168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
| 2日 | 73〜120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
| 1日 | 48〜72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
安全で快適な職場環境のために
働き始めると一日の大半を職場で過ごすことになりますから、職場では心身ともに気持ち良く過ごしたいです。そこで、職場における労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境を形成することを目的として、労働基準法の特別法である労働安全衛生法が定められています。労働安全衛生法は、事業者に、仕事が原因となって労働者が事故に遭ったり、病気になったりしないように措置する義務(安全衛生管理体制、安全衛生活動など)を定めるとともに、労働者に対しては、労働災害を防止するために必要な事項を守り、事業者が行う措置に協力するように定めています。
仕事で病気やけがをした場合
仕事(通勤途中を含む)で病気やけがをしてしまった場合には、労災保険が適用されます。労災保険は、健康保険よりも、補償内容が被害を受けた労働者に手厚くなっています。例えば、労災保険の指定病院にかかれば、治療費は原則として無料になりますし(指定されていない病院の場合、立替分が後で支払われます)、仕事を休まなければいけなくなったときには休業補償(休業4日目から、平均賃金に相当する額の8割支給)が受けられます。また、業務災害で療養休業中とその後30日間は、労働者を解雇することはできません。
仕事中だけでなく、通勤途中の電車で事故に遭った場合など、通勤中のけがも対象です。また、うつ病などの精神的な不調も、長時間労働や職場でのひどい嫌がらせ・いじめなど仕事が原因の場合には労災として申請ができます。
したがって、仕事での病気やけがは、健康保険ではなく、労災保険による補償が得られるよう必要な請求をすることが大事です(労働者が仕事を休業しなければならないほどの労災を被った場合には、労働者による労災請求とは別に、会社が労災事故を労働基準監督署長に届ける必要があり、届けない場合、「労災かくし」として法律違反となります)。労災請求をする際に会社が協力してくれない場合は、労働基準監督署に相談しましょう。
働くひとが守るべきルール
これまで述べてきたルールを会社がきちんと守ることはもちろんですが、一方で、働く側も一定のルールを守らなくてはなりません。遅刻をしないようにすること、勤務時間中に無断で職場を離れないこと、勤務時間内は上司に従って誠実に職務を遂行しなければならないのはもちろんのこと、その他にも、例えば、会社の備品を無断で持ち出さないこと、会社の秘密を外部に漏らさないことといったルールがあります。正当な理由がないのにこうしたルールを守らず、会社の秩序を乱すような行為をした場合には、就業規則の定めにより、減給(給料を減額する処分)、懲戒解雇(一方的に会社を辞めさせる処分)等の罰を受けることがあります。これを懲戒処分といいます。
仕事を辞めるとき、辞めさせられるとき
会社を辞める ・・ 退職
労働者からの申し出によって労働契約を終了することを退職といいます。会社を退職することは労働者の自由ですが、予告もせず、いきなり会社に行かなくなるというようなことはルール違反です。退職の意思を上司に伝え、書面で届け出る、仕事の引き継ぎをするなど社会的ルールを守って辞めることが大切です。一般的に就業規則等に「退職する場合は退職予定日の1ヶ月前までに申し出ること」というように定めている会社も多いので、就業規則で退職手続きがどうなっているか調べることも必要です。
また退職の申し出にあたっては、契約期間の定めがある労働契約を結んでいた場合と、そうでない場合とで法律上異なったルールが定められています。正社員などのように、あらかじめ契約期間が定められていないときは、労働者は少なくとも2週間前までに退職届を提出するなど退職の申し出をすれば、法律上はいつでも辞めることができます(会社の就業規則に退職手続きが定められている場合はそれに従って退職の申し出をする必要があります)。
アルバイトでよくあるように、3か月間などあらかじめ契約期間の定めがあるとき(有期労働契約)は、契約期間の満了前に退職することは契約違反ですから、やむを得ない事情がない限り、契約期間の途中で退職することはできません。
会社を辞めさせられる ・・ 解雇
使用者からの申し出による一方的な労働契約の終了を解雇といいますが、突然「君はこの会社に合わないからもう来なくていいよ」と言われてしまったら、労働者の生活はひどく不安定なものになってしまいますよね。解雇は、使用者がいつでも自由に行えるというものではなく、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、労働者をやめさせることはできません(労働契約法第16条)。すなわち、解雇するには、社会の常識に照らして納得できる理由が必要なのです。
例えば、解雇の理由として、勤務態度に問題がある、業務命令や職務規律に違反するなど労働者側に落ち度がある場合が考えられますが、1回の失敗ですぐに解雇が認められるということはなく、労働者の落ち度の程度や行為の内容、それによって会社が被った損害の重大性、労働者が悪意や故意でやったのか、やむを得ない事情があるか等、さまざまな事情が考慮されて、解雇が正当かどうか、最終的には裁判所において判断されます。
また、労働契約法だけでなく他の法律においても、一部の場合については解雇が明示的に禁止されています。 さらに、労働者が解雇の理由について証明書を請求した場合には、会社はすぐに労働者に証明書を交付しなければなりません。
期間の定めがある場合
期間の定めのある労働契約(有期労働契約)については、あらかじめ使用者と労働者が合意して契約期間を定めたのですから、使用者はやむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間の途中で労働者を解雇することはできないこととされています。そして、期間の定めのない労働契約の場合よりも、解雇の有効性は厳しく判断されます。また、有期労働契約においては、契約期間が過ぎれば原則として自動的に労働契約が終了することとなりますが、3回以上契約が更新されている場合や1年を超えて継続勤務している人については、契約を更新しない場合、使用者は30日前までに予告しなければならないとされています。
整理解雇
使用者が、不況や経営不振などの理由により、解雇せざるを得ない場合に人員削減のために行う解雇を整理解雇といいます。これは使用者側の事情による解雇ですから、次の事項に照らして整理解雇が有効か否か厳しく判断されます。
退職勧奨について
解雇と間違いやすいものに退職勧奨があります。退職勧奨とは、使用者が労働者に対し「辞めてほしい」「辞めてくれないか」などと言って、退職を勧めることをいいます。これは、労働者の意思とは関係なく使用者が一方的に契約の解除を通告する解雇予告とは異なります。退職勧奨に応じるかは労働者の自由であり、その場ですぐ答える必要もありませんし、辞める意思がない場合は、応じないことを明確に伝えることが大切です。
会社が倒産したら
会社が倒産して給料を払えなくなったときのために、賃金の支払の確保等に関する法律により、政府が会社の未払いの賃金の立替払をする制度が設けられています。払ってもらえなかった賃金のうちいくらかが立替払される制度があります。
失業給付
失業してしまった際には、雇用保険に加入していた場合、失業給付が受けられます。失業給付を受けるには、会社を辞めた日以前の2年間に、11日以上働いた月が12ヶ月以上あることが条件です。ただし、辞めた理由が倒産や会社の都合による解雇、有期労働契約が更新されなかったため等の場合、辞めた日以前の1年間に、11日以上働いた月が6ヶ月以上あれば、失業給付が受けられます。
また、失業した理由により、給付の開始時期や給付期間が異なります。給付が始まるのは、ハローワークに求職申込みをして離職票(従業員が会社を辞める際、会社に発行が義務づけられています)が受理された日以後、失業の状態にあった日が通算して7日間経過した後ですが、自己都合の退職や自分の責任による重大な理由により解雇された場合には、さらに3ヶ月経たないと支給されません。
したがって、退職の際に、本当は会社都合の解雇や退職勧奨に応じた退職なのに、自己都合退職などとしてしまうと、失業給付の際に不利になってしまいますので、会社から離職票を受け取ったら、離職理由欄を確認し、理由が違っていた場合には申立てましょう。また、退職や解雇の理由についての証明書を会社からもらうこともできますので、もらって確認しておくとよいでしょう。
その他
派遣労働
派遣とは、労働者が人材派遣会社(派遣元)との間で雇用契約を結んだ上で、派遣元が労働者派遣契約を結んでいる会社(派遣先)に労働者を派遣し、労働者は派遣先の指揮命令を受けて働くというものです。労働者派遣では、労働者に賃金を支払う会社と指揮命令をする会社が異なるという複雑な労働形態となっていることから、労働者派遣法において派遣労働者のための細かいルールを定めています。
派遣では、法律上の雇い主はあくまで人材派遣会社になります。よって事故やトラブルが起きた際は、まず人材派遣会社が責任をもって対処しなければなりません。しかし、実際に指揮命令をしている派遣先は全く責任を負わないというのは妥当ではなく、労働者派遣法において派遣元と派遣先が責任を分担するべき事項が定められています。
契約社員(有期労働契約)
契約社員といわれる人たちなどにみられるように、正社員と違って、雇用契約にあらかじめ雇用期間が定められている場合があります。このような期間の定めのある労働契約は、労働者と使用者の合意により契約期間を定めたものであり、契約期間の満了によって労働契約は自動的に終了することとなります。1回当たりの契約期間は一定の場合を除いて最長3年です。こうした期間の定めのある労働者は、正社員と比較し待遇が良くないことも多いので、「業績が悪いから」といって契約社員への転換をせまられた場合などは慎重に検討することが大切です。
パートタイム労働者
パートタイム労働者とは、パートタイム労働法で定義されている「短時間労働者」のことをいい、1週間の所定労働時間が、同一の事業所に雇用されている通常の労働者と比べて短い労働者のことを指しています。法律上はパートタイマーやアルバイトという区別はなく、条件を満たせば呼び名は違ってもすべてパートタイム労働者となります。
また、パートタイム労働者も労働者であることに変わりはないので、各種労働法が適用されます。したがって、要件を満たしていれば、年次有給休暇も取得できますし、雇用保険や健康保険、厚生年金保険にも加入することができます。
労働者を雇い入れる際、使用者は、労働条件を明示すること、特に重要な条件については文書を交付することが義務づけられていますが、パートタイム労働法ではすでに述べた5点に加え、昇給・退職手当・賞与の有無についても文書の交付による明示を義務付けています。
業務委託(請負)契約
正社員や、上の1〜3で記述してきた派遣社員、契約社員、パートタイム労働者などは、「労働者」として、労働法の保護を受けることができます。
他方、「業務委託」や「請負」といった形態で働く場合には、注文主から受けた仕事の完成に対して報酬が支払われるというものなので、注文主の指揮命令を受けない「事業主」として扱われ、基本的には「労働者」としての保護を受けることはできません。したがって、「業務委託」や「請負」といった形態で働く際には注意が必要です。
ただし、「業務委託」や「請負」といった契約をしていても、その働き方の実態から「労働者」であると判断されれば、労働法規の保護を受けることができます。しかし、「労働者」であるかどうかということは、実はとても難しい問題です。