まるでそれが愛の言葉と同等のようにお前は私の足を奪う。
それが等価だとでも思ってるのか。
逃げ出す手段を失った私は縋り付いて芝居めいた許しを請うが
悲痛と悪態を繰り返す口さえ封じてお前は何を願うのか。
結局の所逃げ道を塞ぐ事実はお互いの性格の不一致を如実に表わし
そしてそれはもちろん全て分かっている奴がすることで。
利口なお前はしかして時に不幸だ。
見たくもない私の侮蔑の眼差しに思わず頬を張り、
年のわりに達者な唇を力任せに奪うも柔らかな舌に阻まれ
滑らかなエナメル質の歯に己の舌を噛み切られそうになってやっと離された。
「馬鹿らしい。こんな事はもう止めろよ」


それにお前らしくもない。
私の精一杯のアドバイスも無邪気な好奇心と
一途な憎悪に焼かれている男には役立たずらしい。
どんなに綺麗な言葉で言い換えても盛りついてるのだけは隠しようがない。
私を貶める理由を見つけて血気盛んなのだ。それが証拠にもう。


───下衆野郎